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Human Augmentation II

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[1] おさらいってことで:人間拡張とは?基礎知識やビジネスモデルの事例を紹介 (optage.co.jp)

  1. 人間拡張とは? 人間拡張とは?人間拡張とは、AIやIoTといったテクノロジーによって、人間の身体能力・知覚などを拡張させる技術のことです。近年よく見聞きするようになった言葉かもしれませんが、人間拡張と同様の概念といわれる「知能増幅」は1950年代には誕生しています。そして、人間拡張の“Human Augmentation(ヒューマン オーグメンテーション)”という言葉が生まれたのは2010年代後半のこと。当初はITやロボット工学の発展による拡張が中心でしたが、少しずつ人間拡張の意味合いが広がり、テクノロジーを使った人間のアップデートを指すようになりました。人間拡張の誕生・発展によって、人間が持つ能力の向上・維持だけでなく、生活の満足度を高めることなどに好影響を及ぼすと期待されています。

  2. 人間拡張の4領域と代表例 人間拡張といっても、意味合いが広く具体例もさまざまにあるため、詳しく理解できている方は多くないでしょう。そこで、人間拡張をとらえるうえで参考となるのが、東京大学大学院情報学環の「ヒューマンオーグメンテーション学(ソニー寄付講座)活動記録I」です。この資料によると、人間拡張には大きく4つの方向性があるとされています。 ● 身体能力の拡張(PHYSICAL) ● 存在の拡張(PRESENCE) ● 知覚の拡張(PERCEPTION) ● 認知能力の拡張(COGNITION) 上記の4領域はそれぞれが独立したものではなく、研究・開発されている技術によっては複合的に組み合わさるケースもあります。あくまでも人間拡張の概念として、各領域について詳しく見てみましょう。

  3. ■身体能力の拡張 「身体能力の拡張」は、主に運動能力の強化が該当する領域です。パワーアシストスーツなどが代表例で、装置を着けることで農業や運送業の身体的な負担を軽減してくれます。また、義手や義足といった人工の四肢にテクノロジーを搭載する研究も進められています。従来の義手の場合、つかむなどの機能性は補完できませんでした。しかし、近年は脳からの電気信号をキャッチする機能やAIを搭載し、さまざまな動きが可能になりつつあるようです。このように、テクノロジーを使って身体能力を増強・補綴(ほてつ)するものが「身体能力の拡張」なのです。

  4. パワーアシストスーツもいいんだが、俺が興味が有るのは失われた人体機能の補完だ。

  5. ■存在の拡張 「存在の拡張」とは、物理的な存在の限界を超え、遠隔地で作業することを可能にする技術のこと。主にロボットや他の人の身体と感覚を共有し、遠隔で操作するものを指しています。たとえば、離れた病院にいる医師がロボットを遠隔操作して手術をおこなう「遠隔医療ロボット」は存在の拡張の代表例でしょう。また、現実世界での拡張だけでなく、仮想空間であるメタバースに作られた分身体「デジタルアバター」も存在拡張の一例です。存在の拡張領域では、視覚・聴覚・触覚の再現が主に進められています。嗅覚や味覚は研究が進められている一方で、まだ実用化には至らないのが現状です。

  6. 遠隔操作では視覚・聴覚・触覚でも十分だろう。嗅覚や味覚などの化学センサは必要なものだけ有ればいいだろう。

  7. ■知覚の拡張 「知覚の拡張」は、人間の五感を拡張させる技術を指す領域です。主に感覚器官の能力を高めたり補完したりすることが前提となっています。具体例として挙げられるのは、スマートグラスや補聴器といった視覚・聴覚を対象とした技術。このほか、感覚置換の研究も進められており、目が見えない方のために視覚情報を皮膚感覚などに置き換える技術も知覚の拡張に含まれます。また、存在の拡張と重なる部分もありますが、VRやARといった現実と仮想の空間を融合する技術が活用されやすいのが知覚拡張の特徴です。

  8. VRやARもいいんだが、俺が興味が有るのは失われた人体機能の補完だ。

  9. どっかに書いてるんだが、元々、Vacuum Polarization, and Polariton (2018)関連の国プロを始める前にサブテーマを探していて(メインテーマは電子物性・電子デバイスが中心となるから、もう少し応用的観点からサブテーマを設定しようとしていた。)、最初に興味を持ったのがブラウン大学の人工網膜の実験だった -- ただ、患者が一時的に光を認識するようになったが、そのうち感じられなくなったという結論を聞き、怖くなった。だから、Human Augmentation | LinkedInでもArtificial eyeについて記載した。

  10. ■認知能力の拡張 AIやVR、ARといったテクノロジーと人間を融合させ、知能や認知能力を向上させるのが「認知の拡張」の領域です。特に研究が進められているのは、人間が理解・習得するプロセスを拡張するもの。たとえば、熟練者が見ているものを共有して学習や訓練に活用するなど、第三者の感覚を疑似体験できる技術が代表的です。スポーツや芸術のほか、教育や介護といった分野にも活用できます。ほかにも、記憶障がいの方の記憶を補完する記憶チップの開発なども進められており、人間の内面的な能力を向上させる分野といえるでしょう。

  11. プロアスリートの視点が共有できると面白いと思う。

  12. 人間拡張の将来性は? 人間拡張の将来性は?アメリカのMarketsandMarkets社が発表したレポートによると、人間拡張の市場規模は2026年までに3,412億ドル(約44兆円)に到達すると見込まれています。世界中で注目されている人間拡張ですが、研究・開発が進められている一方で、日本国内で扱っている事業者は多くありません。現状、参入障壁は高くないものの、実際にどのように関わることができるのでしょうか。人間拡張と相性のよい業界や、ビジネスモデルの事例を見てみましょう。

  13. ■人間拡張と相性のよい業界 人間拡張の研究が進められている昨今、どういった業界で活用されているのでしょうか。現在、実用化が進められている業界をはじめ、将来的にテクノロジーの活用が期待されている業界をご紹介します。

  14. 医療・介護 人間の命に関わる医療・介護の業界では、すでに人間拡張の技術が取り入れられています。たとえば、身体能力の拡張で紹介したパワーアシストスーツは、介護者が装着することで介護の際に腰にかかる負担を軽減してくれます。また、要介護者が装着すれば、身体にかかる負担を軽減しながらリハビリをおこなうことが可能です。医療の分野では、ARなどを使った手術のシミュレーションのほか、遠隔地からの手術、熟練医師の視界の共有により医師の習熟なども可能になるでしょう。将来的には、テクノロジーを搭載したコンタクトレンズで視力の補助や目の状態確認をおこなったり、人工神経をつないで損傷箇所の機能制御や補助をしたりと、さまざまな機能を持った医療機器が生み出されるかもしれません。

  15. 製造・農業 介護現場と同様に、製造や農業などの身体的な負担がかかる業界でも、アシストスーツが活用できます。一人では持ち運びが難しいものでも、アシストスーツを装着することで運べるようになれば、人件費の削減にもつながるでしょう。特に近年は人口減少が進んでいるため、生産性の向上が期待できるのは大きなメリットといえます。また、製造の分野ではグローブ型の装置を着けることで、モノづくりを遠隔地からおこなうことが可能です。さらに建設業などでもARやVRを活用でき、細かなシミュレーションをおこなうことで、安全かつ確実に工事を進められるでしょう。

  16. エンタメ 近年はメタバースのように仮想空間を楽しめるようになりました。これも存在の拡張に分類できる技術で、ゲームをはじめ映画やドラマの世界に入り込む感覚が楽しめるでしょう。このほかにも、舞台やライブを見ている人の視界を共有すれば、その場にいるかのような臨場感を得ることも不可能ではありません。

  17. 教育 教育の分野でも人間拡張の技術活用が期待されています。たとえば、ARを使って生物の3D映像を出し、身体の仕組みや生態についてわかりやすく解説することが可能になります。ほかにも、危険がともなう実験を仮想空間でおこなえるようになれば、失敗を恐れず実験に取り組めます。また、校外学習や社会科見学などにVRが活用できるほか、防災や避難などもリアルな体験に近い訓練をおこなえるようになるでしょう。

  18. 宇宙 大気がほとんどなく、高エネルギーの放射線を受けやすい宇宙空間のような命の危険がともなう場所においても、人間拡張の技術を役立てられます。ロボットを遠隔から操作し、人間の代わりに作業をしてもらうことで安全に作業を進めることが可能です。宇宙のほかにも、鉱山や高所、被災地、事故現場などにも活用できるため、従来よりもリスクを減らせるのは大きな魅力でしょう。

  19. ■人間拡張のビジネスモデル事例 さまざまな業界で技術の導入が期待できる人間拡張ですが、実際にビジネスに取り入れる場合は何ができるのでしょうか。すでに展開されているビジネスモデルを以下にまとめました。 ● ウェアラブルデバイスの直販や、収集した情報の販売 ● 言語生成ツールの無料・有料サービスの提供 ● 視覚補助デバイスのライセンス供与 ● 脳に電気的な刺激を与えて学習能力などを向上させるデバイスをサブスクモデルで提供 ● 人間が装着する外骨格ロボットなどの提供 など

  20. このように、人間拡張は幅広い業界に活かせる技術であるため、技術の開発・販売による収益が見込めます。また、業務の効率化や人材の育成などにも役立てられるため、社内で人間拡張の技術を活用することで生産性の向上も期待できるでしょう。


おさらいついでに:ビジネスから暮らしまで、「デジタルツイン」が世界を変える時代が来た! (optage.co.jp)

  1. 近年の製造業DXの大きな推進力となっている技術に「サイバー・フィジカル・システム(CPS)」がある。現実空間(フィジカル)と仮想空間(サイバー)を融合させるテクノロジーの総称だが、デジタルツインはそのCPSと同義で使われることが多い。工場や製品など現実空間にある事物を「双子(ツイン)」として仮想空間に再現して事前にシミュレーションや分析を行い、それを現実世界にフィードバックさせる仕組み全体を指している。当初は製造業で広まり始めたデジタルツインだが、近年では世界中の先進企業がデジタルツインの導入によって革新を起こしており、活用分野の裾野は急速に広がっている。グローバルインフォメーションの調査によれば、世界のデジタルツインの市場規模は、2022年から2030年の間、年平均成長率39.1%で推移し、2030年には約1,558億米ドル(約20兆円)の規模に成長すると予測されている。まさに、産業界におけるデジタル化の中核技術と位置づけられているのだ。

  2. デジタルツインに似たバズワードに「メタバース」があるが、両者は似て非なるものだ。メタバースは、インターネット上の仮想空間にアバター(分身)で参加しコミュニケーションやアクションを行うもので、そうした仮想空間を提供するサービスの総称として使われることが多い。一方のデジタルツインは、設計データやセンシングデータなど現実世界のデータをもとにして再現されたミラーワールドである。メタバースがゲームや交流のために創造された「仮想空間」であるのに対し、デジタルツインは現実の製品や工場に分析成果をフィードバックするために生成された「鏡像世界」と規定することができる。

  3. デジタルツインと従来からあるシミュレーションシステムはどこが違うのか、という点もよく指摘されることだ。コンピュータによるシミュレーション技術は従来から存在するが、デジタルツインは従来型を、精度の面で圧倒的に上回る。通常のシミュレーションは、想定される種々のシナリオをもとに数値的・物理的モデルを設計し実験を行うが、それらはあくまで「模擬実験」であって現実世界を正確に仮定したものではない。そのため誤差がつきもので、実験結果を実際に現場で試してみて修正・改善を加えていくプロセスが必須となる。一方、デジタルツインは、設計データやセンシングデータをもとに双子を生成することで、限りなく現実に近いシミュレーション結果を得ることができる。実際に、工作機械などの分野ではすでに、デジタルツインによるシミュレーション結果と実際の製造品の誤差が数%という、極めて精度の高いシステムが開発されている。

  4. 従来型のシミュレーションが、どこまで手を加えても仮説による「そっくりさん」に留まるのに対し、デジタルツインの場合は現実のDNAをもとにした「双子」の片一方を創出させることができる。これが、現実空間と仮想空間を融合させる技術「CPS」の最大の特長である。

  5. 中略

  6. 日本でもデジタルツインを導入する企業は増えているが、代表的な事例を挙げてみよう。

  7. <プラントエンジニアリング> ◎プラント内部で起こっていることをデジタル空間上で可視化 化学メーカー大手のA社では、デジタルツインで仮想の化学プラントを構築し、運転状況を検証する技術開発を始めた。一般に化学プラントでは、プラント内部でどのような反応が起こっているのかをリアルタイムで見ることはできない。これまでは、現場の熟練技能者の判断に頼るしかなかったが、人によってばらつきがあり、判断基準も明確ではない。それがデジタルツインなら、プラント内部で何が起きているかを仮想空間で再現し、ガス濃度などを可視化することができる。可視化によって異常の予知や判断基準が明確になり、人的要素による曖昧さがなくなる。技術が確立できれば、リアルタイムでプラントを監視し、生産最適化のための運転変更が可能になる。将来的にはAI技術を組み合わせ、プラント運転を自動制御できるシステム構築を目指している。まさに、化学メーカー業界にイノベーションをもたらす可能性を秘めた技術と言える。

  8. <国土・都市計画> ◎双子のデジタル都市を生成して都市計画を最適化 都市計画にデジタルツインを活用している事例として世界的に有名なのは、シンガポールである。世界第2位の人口密度を持つシンガポールでは、垂直方向の建物やインフラの整備が盛んで、従来の2次元地図では情報が網羅できないジレンマに陥っていた。そこで国土全体を3Dマップ化する事業が立ち上がり、進化を続けるうちに現在の国土全体のデジタルツイン化が完成した。こうした先進事例に触発されて、都市計画にデジタルツインを活用する国や都市が増えており、日本でも東京都が先鞭を着けている。都は防災や交通、エネルギーなど様々な分野の政策立案などにデジタルツインを役立てていく方針で、現在は2次元画面から水道管などの地下埋設物の高精度な3Dモデルを作成して、管理を効率化する実証に取り組んでいる。政府も国土計画や防災の分野で、デジタルツインの活用を進めている。内閣府では、「防災デジタルツイン」で、都市空間をデジタル上に再現し、シミュレーターによって被災状況の推定・可視化、対策の有効性検討等に役立て、被害を最小化する取り組みを行っている。国交省では、デジタルツインの実現に向けて、データ連携を拡充する取り組み「国土交通データプラットフォーム」の構築を進めている。国交省が多く保有するデータと民間等のデータを連携し、国土のデジタルツイン化を構想。すでに、全国56都市の「3D都市モデル(PLATEAU)」と「国土地盤情報(全国のボーリング結果等の地盤データ約25万件)」のデータ連携が進んでいる。官民が協力して多種多様なデータを連携・統合することができれば、さまざまな分野で有益なシミュレーションができる日本列島の双子がサイバー空間に誕生するはずだ。

  9. 不動産大手のB社では、販売中のマンションのモデルルームをデジタルツインで再現し、オンライン上で確認できるサービスを開始した。3D空間を自由に歩き回って見学ができるのはもちろん、昼夜の室内変化、家具の表示・非表示など、現実空間では体験できないサイバー空間ならではのプレゼンテーションを実現している。こうした活用アイデアと導入事例が充実していけば、非接触型営業が推奨されるニューノーマル時代に最適な営業ツールとして、デジタルツインは活躍の場を広げていくはずだ。

  10. 医療分野でも、デジタルツインは活躍している。精密機器メーカーのC社は早くから医療DXに取り組んでおり、内視鏡を用いた手術を仮想空間でシミュレーションするデジタルツインサービスを2018年から提供している。患者が医療機関で撮影したコンピュータ断層撮影装置(CT)や磁気共鳴画像装置(MRI)の画像を読み込み、仮想空間に3次元で描画。医師が、精密に再現した術具を使って脊椎内視鏡手術のシミュレーションや、肝臓などの軟組織臓器に対する切除・変形シミュレーションが行えるというものだ。患者ごとに最適化した手術が事前に予行演習できるのは、医師にも患者にとっても大きなメリットである。とりわけ、熟練するまでに時間がかかる内視鏡手術が、仮想空間でリスクなしに反復練習できるのは新人外科医にとっては大きなメリットだ。医療現場にも患者にも恩恵をもたらすデジタル技術といえる。

  11. また空調の最適化にも、デジタルツインは活用されている。大手空調メーカーのD社は大阪大学との連携で、IoTセンサで収集したデータでキャンパスのデジタルツインを仮想空間に生成し、人の流れを読んだ空調管理を街全体に供給するスマートシティ事業の開発に乗り出した。大学構内をひとつの街と仮定して、キャンパス内に人感センサやサーモセンサなどのIoTセンサを400台余り設置し、人の流れや環境データを常時取得。個人情報を保護した上でデジタルツインを仮想空間に再現し、キャンパスをリアルタイムに可視化している。デジタルツインを舞台に、AIで人の流れを予測して空調を管理する都市全体の最適エネルギーマネジメントや個別空調管理、室内空間の快適性などを検証する。実証実験とはいえ、仮想空間でのシミュレーションなので、実機や電力のコストは不要でリアルタイムの現実環境を反映した精緻な実験が繰り返しできる。デジタルツインならではの、導入メリットである。

おさらいついでに2:ヒトの身体もスマート化!?デジタル・デバイスがもたらす未来とは (optage.co.jp)

  1. この5年ほどで急速に注目を集めるようになった「ウェアラブル」 ここ数年、デジタル・デバイスの世界で重要なキーワードのひとつとなっているものに「ウェアラブル」があります。「ウェアラブル」とは「wear=着る」と「able=できる」から成り、「衣服のように身に着けられる」という意味を表します。もっと極端な言い方をすると、パソコンなどデジタル・デバイスをモノとして持ち歩く(=ポータブル)のではなく、持っていることさえ意識させないデバイスのことだといえるでしょう。この言葉を一躍"有名"にしたのは、2013年のグーグル・グラスの発売(開発者向け)からではないかと思います。グーグル・グラスはヘッドマウントディスプレイ(頭部に装着するゴーグル型のディスプレイ)の一種で、眼鏡をウェアラブル端末としたもの。レンズ部をディスプレイとして使い、情報を表示する他、装着者の目線映像の撮影やアプリの実行などができるようにしたものです。入力は音声によって行うため、ハンズフリーで操作できる点も特長となっています。このグーグル・グラスでもわかる通り、ウェアラブル・デバイスの魅力は、身体にデバイスをまとうことで、両手をふさがれることなく、つまりストレスなく使いこなせる点にあります。その後、ソニーやアップルから腕時計型の、いわゆる「スマート・ウォッチ」、さらには指輪型などが登場することで、大きな市場を形成するに至りました。

  2. スマホの普及からはじまる、ウェアラブル・デバイスの基盤整備 ウェアラブル・デバイス(以前はウェアラブル・コンピューティングなどと呼ばれていました)の研究自体は、すでに1980年代から進められていましたが、1990年代にマサチューセッツ工科大のスティーブ・マン氏がコンピューターを入れられるリュックサックと、カメラを装着したヘルメットを開発し研究発表したことから注目を集めるようになりました。以来、約40年にわたり研究開発が進められてきたのですが、先にも書いた通り、本格的に世間への浸透、普及が進んだのは、ここ5年ほどのことです。技術や機器の普及には、「それで何をするのか」という目的が重要となりますが、ウェアラブル・デバイスにおいてはスマートフォンの普及が、そのベースになっていると考えられます。スマホは、言うまでもなく携帯電話の進化形です。携帯電話は「どこでも電話を受けられる(かけられる)」という突出した便益となる機能を持っていた上に、1990年代から急速に料金が低下したことから、一挙に普及しました。スマホは、そのような機能性に加え、ネット対応パソコンの一部の機能を取り込んだものです。多くの人がスマホを使うことで、それまで知らなかった新たな“便益”に気づきました。その便益をより快適なレベルで可能にしたのが、ウェアラブル・デバイスだったのです。スマート・グラスやスマート・ウォッチは、そもそもスマホがあったからこそ、誰もがベネフィットを理解できたのだといえます。アップルウォッチがそうであったように、導入期のウェアラブル・デバイスは例えばiPhoneやAndroid携帯と連動して、さらに高度に使いこなすためのツールであったといえます。その役割は現在でも大きく変わることはありません。しかし近年、スマホやモバイルパソコンがなくともネットワークに接続できる、SIM内蔵型も登場しており、文字通り「ウェアラブル・デバイス」、つまり身に着けた機器単独で働くタイプも登場しています。このような進化の方向性を考えると、これらのデバイスはより直接、身体やヒトの感覚に訴えかける機器になることが考えられます。例えば眼鏡のレンズやスクリーン状のものを眼で見るのではなく、網膜に直接情報を与える「網膜投影ディスプレイ」。このデバイスの利点は、網膜に直接、映像を投影するため近視や遠視、乱視といった視覚障害に関係なく、クリアな映像を得られる点が挙げられます。またピント位置の影響を受けないため、風景を見ながらメールを読んだり、ARのように現実の光景に仮想の映像を重ねるといった場合でも、両方とも明瞭な映像で楽しめるようになります。また、スマート・ウォッチの世界でおなじみとなった機能に、ヘルスケアがあります。歩数計、活動量計や消費カロリー計、心拍数や睡眠時間の計測を通し、装着している人の活動量、健康状態をモニターすることで健康管理を行いますが、これと同様の機能を行うシャツも開発されています。シャツの場合、スマート・ウォッチ以上に装着している感覚がなく、ほとんど身に着けていることを意識せず使えることが大きな魅力となります。眼鏡型、時計型が先行するウェアラブル・デバイスですが、今ではこのように多様なデバイスが開発されています。将来的にはGPSやカメラ、センサーなどを内蔵したウィッグ(かつら)、歩行姿勢をモニターできるインソール、湿布薬のように皮膚に張り付け体調を管理できるセンサーなど、計画されているものも含めれば、枚挙にいとまがありません。では、デジタル・デバイスを「身に着ける」ことを極端まで進めていくと、いったいどうなるのでしょうか? 答えはひとつ。あなたの「身」そのものが、デジタル・デバイスになることです。

  3. 身体に埋め込まれることで、身体そのものがデジタル・デバイスに 「インプランタブル・デバイス」という言葉を、ご存じでしょうか。歯の治療で「インプラント」という方法がありますね。人工の歯を顎骨などに埋め込む療法のことです。その「implant=埋め込む」という単語に、可能を意味する「able」を付けた言葉が、「インプランタブル」です。すなわち「インプランタブル・デバイス」とは、身体に埋め込まれるデジタル・デバイスのことをいいます。身体に埋め込むというと、スウェーデンのことを思い浮かべる方もいるかもしれません。スウェーデンでは手の親指と人差し指の間に、いわゆるマイクロチップを埋め込み、鍵やクレジットカード、交通チケットなどが利用可能であることが話題となりました。同国では現在ほとんどの支払いを、このマイクロチップを使ったクレジット決済で行っており、お店の端末に手をかざすだけで支払い手続きが行える点が好まれ、多くの人が利用しています。このような状況が進めば、買い物や飲食がキャッシュレスで楽しめるだけでなく、公的な書類の発行や認証(住民票や登記簿として)、病院での受診(健康保険として)、自動車や船舶などの運転(運転免許証として)も、完全な“手ぶら”で行えるようになります。また、マイクロチップがその人の身体の状態を、ビッグデータとして逐一報告することで、現在の新型コロナのような感染症の対策も取りやすくなるかもしれません。

  4. 人の身体とデバイスの境界があいまいになり、新しい歴史がはじまる 埋め込み型マイクロチップ以外に、インプランタブル・デバイスとして挙げられるものに、スマートコンタクトレンズがあります。コンタクトレンズをディスプレイとして各種情報を投影するのはもちろん、目に映る現実の光景に仮想の映像情報を重ね、AR(拡張現実)を体験させるなど、幅広い活用が考えられています。また、医療分野では錠剤状のものも開発されています。例えばカメラやセンサーなどを搭載した超小型のデバイスを、錠剤のように飲み込むことで、内臓の様子などをチェックし、健康状態を調べるデバイスなどがすでに存在しています。受診者にとっては胃カメラや大腸カメラに比べ、負担減になることが期待されます。このように人の身体が超小型化されたデジタル・デバイスを取り込むことで、今まで不可能だったこと、実現するためにはとてつもない労力を要していたものが、わずかな手間で可能となります。それは、今まで私たちが体験してきたものとは、全く異なった様相になると考えられます。まるでSF小説のような世界ですね。私たちの身体そのものがデバイスとなる世界…ちょっと怖いと思う方も多いかもしれません。あるいは、ヒトが機械(デジタル・デバイス)に乗っ取られる気がするかもしれませんね。しかし重要なのは、デバイスが私たちの暮らしを、どんなに便利にさせるかということです。令和時代に生きる私たちは、それをリアルタイムに見届けられることを、素直に喜ぶべきなのかもしれません。

  5. 2008年頃だったと思うが、胃カメラの代わりに錠剤型カメラを飲み込んでお尻から回収するって話が有って、「再利用できます」と謳ってあったものだから「再利用すんのかよ・・・」と・・・。ちょっと盛り上がりました(笑)。まだかなり大きかった・・・。

[2] 人間拡張を考える上でも必須の技術になっていくと思いますが、インターネット。今のところ一番近いのはスマホですかね・・・:スマホでできることは写真やLINEだけじゃない!【最新】 | びるぶろ (buildingblock.jp)

  1. パソコンの代わりが出来る そもそもスマホ本来の役目とは?という話です。スマートフォンなので電話の一種に思われてますが実は違います。高機能電話ではなく「小型PCに電話機能が付いたもの」と考えるのが適切です。高機能電話として売り出した方が売れやすいからそういうネーミングになっているだけです。スマホは標準装備でフルプラウザ(パソコンと同じ画面)対応になっているため快適なインターネット接続ができます。

  2. パソコンでもスマホでも何でもツールを介してのアクセスでもいいですが、インターネットには膨大なデータが存在します。基本的な知識は予め身に着けておいた方が安全ですが。

  3. Zoomによるリモート会議 コロナの影響もあって会社に行かないリモートワークが増えていますが、その代表的なツールであるZOOM。Zoomはアプリがあるのでスマホでできます。「Zoom Cloud Meetings」(Zoomアプリ)Zoomアプリの手順(自分で会議を開く場合)サインアップ(アカウントの作成)、もしくはサインイン「新規ミーティング」をタップ カメラ映像を使用したくない場合は、「ビデオ オン」をOFF Zoomアプリの手順(用意してくれた会議に参加する場合) 画面上部にあるメニューアイコンから「参加」をタップ 遷移した画面で「ミーティングID」を入力 そのままミーティング画面に遷移します。

  4. マンガにも有りましたかね、リモート会議。

  5. ヘルスケアチェック アプリを活用することで健康管理さえも実現します。最初から「ヘルスケア」というアプリが搭載されていますが1日で歩いた距離と歩数がわかりますので、運動不足具合が数字でスコアリングされてわかりやすいです。

  6. これではつまらんが、バイタル+αが確認できるといいかも。

  7. 株価のチェック その名の通り「株価」というアプリが最初から搭載されているのでタップするだけで株価をチェック出来ます。

  8. インターネットへのアクセスの従属事項。ただ列記するだけでなく「構造」を考慮しながらまとめることが自然にできるようになるといいかもね、うちやま。

  9. 紛失したiPhoneを探し出せる 「探す」というアプリが搭載されています。Phone、iPad、iPod touch、Mac で「探す」を設定しておくとiphoneが紛失したときでも探すことが出来ます。また、同アプリでは友達や家族が今どこにいるかもわかるので、自分の居場所や相手の居場所を共有したいときに重宝します。

  10. まあ、いいや。

  11. 決済ができる 最初から「Wallet」というというアプリが搭載されていますが、クレジットカード・プリペイドカード・Suica・搭乗券・映画のチケット・ポイントカードなどを一か所にまとめて管理してくれます。

  12. スウェーデンだったか手の中にチップ埋め込んで決済できるようにしたの。

  13. 方位がわかる 「コンパス」という方位磁石のアプリが搭載されていますが、その名の通り方位がわかります。山で移動するなどのシーンで活躍してくれます。僕は恵方巻を食べる時に使ってます。笑

  14. 次とまとめてもいい。ただ列記するだけでなく「構造」を考慮しながらまとめることが自然にできるようになるといいかもね、うちやま。

  15. カーナビ替わりになる 大半のスマホにはGPSが搭載されており、衛生からの位置情報をスマホ上で表示してくれるのえでカーナビ替わりになります。加えて、スマホの場合、Wi-Fi接続する際にも位置情報を割り出しているので、GPSが届かない地下などでもある程度は正確な現在地を表示が可能です。タクシーの運転手さんで使っている人も増えたよね。

  16. 体内にナビが有ってもいいな。

  17. 音楽が作れる 「Garage Band」というギターのアイコンをしたアプリがありますが、音楽が作れます。ギターサウンドやドラムだけでなく琴みたいな音楽やEMD、HIPHOP、をはじめピアノを弾くこともできます。ある程度音のリズムが決まっているので素人でもすぐにソレっぽい音楽が作れます。これだけで1日潰せるぐらい面白いです。笑

  18. まあいいや。

  19. 音声入力 「Hey Siri」が有名ですが、こちらが話したことを勝手に検索してくれる音声入力は便利。個人的にはメモ帳と活用し合うことで便利だと感じてます。「Hey Siri!メモ帳だして」でメモ帳を出すメモ帳出てくるので音声検索ボタンをタップスーパーの買い物で必要なものを喋って登録(卵、トイレットペーパー、とかね)しょーもない感じですが(笑)身近な使い道としては一番重宝してます。ちなみにメモ帳で音声検索使う際、「改行」って喋ると改行されるのが好きです。

  20. インターネットへのアクセスの従属事項。ただ列記するだけでなく「構造」を考慮しながらまとめることが自然にできるようになるといいかもね、うちやま。

  21. 録音 録音機能(「ボイスメモ」というアプリ)があるため、会議やセミナーのメモとして録音するときに重宝します。

  22. 電卓がある 地味に便利。計算したいときに電卓用意して~、という一連の行動が無くなりました。

  23. 体内電卓欲しい。

  24. 天気がわかる 「天気」というアプリが搭載されています。天気アプリのおかげで天気予報を見なくなりました。今日、今いる場所の今からの天気が1時間おきにチェック出来ます。

  25. インターネットへのアクセスの従属事項。ただ列記するだけでなく「構造」を考慮しながらまとめることが自然にできるようになるといいかもね、うちやま。

  26. ブログ更新 ワードプレスなどブログ運営している方はスマホからでも更新作業が出来ます。PCの方が使いやすいですが、投稿作業や簡単な記事作成ならスマホで十分です。

  27. インターネットへのアクセスの従属事項。ただ列記するだけでなく「構造」を考慮しながらまとめることが自然にできるようになるといいかもね、うちやま。

  28. 電子書籍が読めるし電子書籍にPDFファイルを落とし込んで移動中に確認もできる 電子書籍(マンガ・小説・ビジネス書など)はもちろん、自分で作ったPDF資料をスマホに同期して持ち運び閲覧することも可能です。

  29. インターネットへのアクセスの従属事項。ただ列記するだけでなく「構造」を考慮しながらまとめることが自然にできるようになるといいかもね、うちやま。

  30. LINEのバックアップ 機種変したときにLINEのデータを引き継ぐためのバックアップが出来ます。PCをつかわずスマホだけでできるので、新しく機種変したときでも便利です。 LINEのバックアップをiPhoneですぐに行う手順 iPhoneユーザーがLINEのバックアップを行う時の手順を解説。 機種変・買い替えや修理に出す前の万が一対策としてLINEのバックアップをすぐに行いたい方向けのお話です。 新しいiPhoneに機種変したらLINEのトーク履歴が全部消えた、...

  31. インターネットへのアクセスの従属事項。ただ列記するだけでなく「構造」を考慮しながらまとめることが自然にできるようになるといいかもね、うちやま。

  32. スマホでコールセンターの在宅ワーク テレワークの影響でコールセンター業務も自宅での対応がスタンダードになってきました。お手持ちのスマホがあればコールセンターが成り立つので、昨今自宅に居ながら高収入が期待できる(時給1200円以上~)仕事として利用者が増えています。

  33. 質問に答えるためのデータベースはクラウド利用だな。電話としての機能だった。


俺が人間拡張として一番興味を持っているのは①失われた人体機能の補完だが、その次が②知の拡張だ -- 今はツールを介してでもいいが。

[6] 2020年の記事だが:オール岡山の技術が光を取り戻す!─いよいよ最終段階に来た人工網膜とは | OPTRONICS ONLINE オプトロニクスオンライン (optronics-media.com)

  1. 網膜色素変性症は,失明の主たる原因でありながら有効な治療法がない。この難病に対し,日本から二つの試みが始まろうとしている。一つは理研が進めるiPS細胞を用いた再生医療,そしてもう一つが岡山大学の人工網膜だ。これまで開発されてきたものとは全く異なるというこの人工網膜について,今回,同大教授の松尾俊彦氏と内田哲也氏に話を伺った。この技術は闇の世界から多くの人を開放するのか。その成果が大いに期待される。

  2. ─人工網膜について教えてください

  3. (松尾)人の目に入った光は眼球の奥にある網膜の視細胞で細胞膜の電位差に変換され,そこから神経細胞をリレーして脳へ伝わっていきます。その視細胞が死んでしまう疾患のうち,我々は治療法の無い「網膜色素変性」という病気について,人工網膜による治験を計画しています。人工網膜とは視細胞の代わりをする人工物です。概念的には光を吸収して電流を出すか,電位を出すかのどちらかです。通常の体の中に埋め込む,例えばペースメーカーや脳を刺激してパーキンソン病やてんかん発作を抑えるような装置は全て電流を出しています。電流を流すので当然,電極やバッテリーなどの外部起電力も必要です。この電極をたくさん並べれば,白黒階調に対応した電流の強さで画像を構築できるというのが今までの方法です。アメリカで2013年に承認された人工網膜は,直径1mmの電極60個を網膜に当てるもので解像度がすごく悪い。しかも電流は広がりますから解像度はさらに悪くなります。60の電極がショートせずそれぞれ電流をきっちり出すのも難しく,故障もします。こうした問題を解決しようと思い,光電変換色素という感光色素を人工網膜に使えないかと研究を始めたのが2000年頃です。原理としては,何か薄い面に光電変換色素を離れないように化学結合して網膜に接触させます。モノが見えるというのは光の濃淡なので,明るかったら強い電位,暗い場合は弱い電位が出ることで画像が再構築されるという方式です。まず,内田先生の研究室でポリエチレンの表面に光電変換色素を化学結合させた試作品を調べました。光を点けたり消したりしたところ,表面に100mVぐらいの大きさの電位変化が起こり,記録することができました。「こんなもので見えるの?」とよく言われますが,実物はただの色がついたフィルムです。使用している「NK5962」という(株)林原が製造した光電変換色素分子は赤っぽいので,白い半透明のポリエチレンも少し赤くなっています。ちなみにこの色素は光増感太陽電池向けのもので,スクリーニングの結果一番効果がありそうだったので採用しました。人工網膜「OUReP®(オーレップ)」の仕組みはこれだけです。光が当たり,光電変換色素分子がその光を吸収して電位差を出力します。表面にびっしりある光電変換色素分子の一つ一つは神経細胞に接していて,個々の分子の中で起こる電位の変化はすごく小さくても総量が大きいので,それぞれの神経細胞を十分に刺激するだけの電位差が得られます。先ほどアメリカ方式は解像度が粗いと説明しましたが,患者さんは白黒でモノの動きが見えました。脳には昔見た記憶が残っていますから,患者さんによってはその記憶と照合することによって,例えば人の顔が見えることもあり得るのです。こうしてアメリカの「ArgusⅡ®」という人工網膜は実際に機能することが証明され,今まで何十人と埋め込まれましたが,一つ1500万円以上もする代物です。私たちは日本の医療の国民皆保険の中で安く提供できないかということも考えて,この研究を進めています。

  4. 柔らかいということが人体組織損傷を防ぐうえで非常に重要な要素。弾性定数が同じくらいである必要が有るのです。

  5. ─この人工網膜はどう作るのでしょうか?

  6. (内田)我々の人工網膜に用いるポリエチレンは専門的に言うと高密度ポリエチレンという,レジ袋に使われているものと同じ成分です。レジ袋はシャリシャリと音がしますが,あの音はポリエチレンの分子が折り畳まれて形成した結晶の板が擦れて出る音で,その結晶からなる構造が強度を生み出しています。レジ袋と同じようなものと言いましたが,本当にそのままのものを体内に入れたら,色々な添加剤が入っているので大変なことになります。そこで体内に入れても害のない純度の高いポリエチレンを探し出しました。これをさらに精製してきれいにし,その後,プレス機でポリエチレンの薄膜フィルムにします。このフィルムを作ってくれるところを探したのですが,我々の要求品質に合ったものを作ってくれる所が見つからなかったので,自分たちで作ることにしました。ポリエチレンは化学的にすごく安定で,基本的に瞬間接着剤でも接着できません。これは表面に官能基という反応する場所がないためです。そこで我々は,「NK-5962」という光電変換色素をフィルム表面に結合させるために,表面を発煙硝酸という酸で処理しています。そうすると,分子鎖が折り畳まれている所が切れて官能基(カルボキシル基)が入ります。そこにジアミンという反応性の高い分子を結合させ,その後に光電変換色素を共有結合というすごく強い化学結合でつなげています。そのため,人工網膜のピンク色はいくら洗っても簡単には取れません。松尾先生の手術で使う人工網膜は直径が5mm~10mmぐらいなので,最後にその大きさに打ち抜いて人工網膜にします。これをケルビンプローブという装置で調べると,明るさの違いによって表面の電位が上がったり下がったりすることが分かります。この電位が微妙に強弱することが大切で,しきい値があって,電位が発生するかしないかだけであると像は真っ白か真っ黒かでしか見えなくなってしまいます。また,僕らが見えている可視光以外の赤外線や紫外線でモノが見えても困るので,その領域では電位が出てないことも確かめています。

  7. ─人工網膜はどのように目に入れるのですか?

  8. (松尾)アメリカの人工網膜より手術が簡単で,硝子体手術という網膜剝離などで一般的に行なわれている手術で入れることができます。網膜の裏に水を入れて人工的に網膜剝離を作り,網膜の裏側に人工網膜を入れます。この人工網膜は自由な大きさに切ることができるので,内田先生には直径が4mm~8mmぐらいのものを用意してもらい,作成できた網膜剥離の大きさに応じて,できるだけ大きな人工網膜を入れようと考えています。人工網膜の面積が大きい方が視野が広くなるからです。

  9. ─健常者と同じように見えるにはどれくらいの大きさが必要ですか?

  10. (松尾)計算すると直径5mmの人工網膜の視野角は30度ぐらいになります。普通私たちは70度ぐらいは見えていますが,網膜色素変性の患者さんはたいてい10度ぐらいしか視野がないので大きな改善になると思います。さらに現在では注射器のような人工網膜注入器(インジェクター)によって,最大7mm~10mmの人工網膜を丸めて入れられることが確認できています。・・・この方式なら通常の眼科手術の修練を積んだ医者であれば実施できます。色素がポリエチレンの表裏両面に付いているので,どっち向きに入っても構いません。手術がやりやすいというのはすごく大切な要因で,例えばドイツの人工網膜は特定の人(医師)しか手術できないため研究が中断しています。これは臨床医からしたらすごくありがたい点なので,人工網膜とインジェクターをセットで承認を得て,販売したいと考えています。

  11. ─人工網膜で色も見えるようになるのですか?

  12. (松尾)人の場合,網膜の中心にある黄斑に色を識別する視細胞のConeという錐体があって,そこから伸びる神経線維が脳につながって色が分かります。残りの視野のほとんどは明るさを識別する視細胞のRodという桿体があり,明暗,つまり白黒しか分かりません。これは脳の認識の問題なので,本当にどう見えるかは治験をして患者さんにお聞きしないと分かりません。さらに,この人工網膜は動物を使った評価を通じていろんなことが分かっています。最初に網膜色素変性と同じような遺伝性の網膜変性をきたすラットに人工網膜を埋め込んで行動試験をしました。ラットを囲う白黒の縞模様をゆっくり回したとき,もし眼が見えていれば,ラットは縞模様を追って首を動かします。その結果,人工網膜を埋め込んだラットは,ただのポリエチレンフィルムを埋め込んだラットと比べて,首を動かす頻度が明らかに増えたことが分かりました。ここで興味深いのが,50lxという明るさの実験でも有意差が認められたことです。こんなに暗くても見えていることに驚きました。安全性を検証するためにPMDAの要請でサルでも試験をしました。5mm×3mmぐらいの短冊状の人工網膜を入れて6か月にわたって経過を見ましたが,手術の影響による網膜剥離は全く起こりませんでした。また,片方を失明したサルに人工網膜を入れて1か月後,光を眼にあてた時に脳に伝わる視覚誘発電位を測ると,それまで無かった電位の波の高さ(振幅)が現れ,6か月後もその状態が続きました。その後人工網膜を摘出し,摘出手術の安全性も確認できましたが,摘出した人工網膜を内田先生に評価してもらった結果,人工網膜表面の色素分子が減っていることがわかりました。つまり,6か月間は安全性に関しては問題なかったのですが,劣化の問題があるかもしれないことがわかりました。(内田)この問題に対しては,劣化しにくい人工網膜の開発も検討しています。かなり成果は出ているので,次のステップとして詰めていこうと考えています。

  13. 有機ELと違って電流を流すわけではないので長寿命化の可能性は有るでしょう。

  14. ─競合する研究の動きはどうでしょうか?

  15. (松尾)我々のような色素を使った人工網膜の研究は,世界を見ても他にありませんが,イタリアから出ている基礎研究の論文は,私たちの方法と似ているようです。アメリカの電極を用いた研究はベンチャーがやっていたので,資金が回収できた時点で手術はいったんやめている状況ですが,同じように電極や光ダイオードを使った他の研究はフランスなどでも動いています。日本でもアメリカと同じような電極方式で大阪大学が作ろうとしています。網膜の再生医療も進んでいて,理化学研究所の万代道子先生が主体となり,iPS細胞で作った視細胞組織を植える臨床研究を今年されると聞いています。基本的には競合する研究ですが,iPS由来の視細胞と植えた側の網膜神経細胞が繋がる数に限界があるそうです。実は私たちの人工網膜には,光電変換色素自体が神経細胞が死ぬのを抑制するという特長もあるので,一種の再生医療と合わせたようなことができるんじゃないかと考えています。つまり人工物と再生医療を合わせ,長期間維持できるような方法ができると考えています。

  16. ─今後の計画を教えてください。

  17. (松尾)私たちはこの人工網膜が有効であるという確証を得ていますが,PMDAに求められて,現在は網膜変性のマウスから取り出した痛んだ網膜を使って人工網膜の光に対する活動電位を記録しているところです。変性した網膜の評価に難しい部分もありますが,共同研究で協力してくれる先生方も増えています。コロナ禍の影響もありますが,今年中には乗り越えられると考えていて,治験に入るための許可をもらえたら医師主導治験をはじめます。医師主導治験は,それまで企業しかできなかった治験を医者が責任者となって行なえる制度で,2003年に認められたものです。責任者は私で治験機器提供者は内田先生です。治験機器は岡山大インキュベータで製造したものを岡山大学病院に出荷する予定です。来年の3月くらいまでに少なくともひとりの患者さんで治験を実施できれば,まず予定通りの進捗になります。治験は6人の方に参加をいただくことが決まっています。治験実施計画書も岡山大学病院の実施体制もできていますので,実際に始まれば,数か月のうちに6人の方の手術が終わります。それで問題なく患者さんが見えるようになれば,あとは医療機器としての審査の申請になります。今は先駆け審査指定制度といって,日本国内で開発されて,かつ世界にはまだ見当たらないような製品に関しては,本来は1年の審査を6か月に短縮するという制度があります。治験に参加した患者さんが少なくても,販売した後に安全性や有効性を調査するという流れがありますので,それに乗れば早く販売できるようになると思います。価格は企業が決めることですが,日本の保険診療で比較的よく使われているペースメーカーが50万~100万円です。それぐらいであれば製造企業も持続可能でしょうし,手術と人工網膜+インジェクターの料金が保険の中で賄われるためにも,この金額を超えなければいいのではと思っています。(月刊OPTRONICS 2020年7月号)

[7] 昨年の記事だが:拡張する脳:失明者が感動「光が見えた」 開発進む人工網膜の可能性 /6 | 毎日新聞 (mainichi.jp)

  1. 脳と機械を連動させる技術「BMI(ブレーン・マシン・インターフェース)」を使い、全盲の人が光を感じられるようになる――。視覚や聴覚がなくても、生き残った神経細胞に機器をつなげて見えたり聞こえたりする「感覚型BMI」と呼ばれる技術が、現実のものになろうとしている。【松本光樹】

  2. 淡い期待で臨床研究参加 「何事にも代えがたい感動だった」。神戸市西区のしんきゅう師、榊原道真(さかきばらみちまさ)さん(69)は2014年6月、大阪大付属病院で「人工網膜」と呼ばれる装置を目や頭に埋め込む手術を受けた。手術から数日後、病室でカメラ付きの眼鏡をかけると、暗闇にぼおっとした白いものが浮かんでいるように見えた。「何年かぶりの光だった。すごくうれしかった」と振り返る。 40年以上前の20代の時に網膜色素変性症(もうまくしきそへんせいしょう)を発症した。網膜内で視覚情報を受け取る「視細胞」に異常が起き、暗い所で物が見えにくくなったり、視野が狭くなったりする遺伝性の目の難病だ。4000~8000人に1人が発症すると考えられており、進行すると失明につながる。治療法はいまだにない。 榊原さんは徐々に視力が下がり、1997年には視覚障害1級に認定された。2010年ごろ、完全に光を失った。 その頃の主治医だった不二門(ふじかど)尚(たかし)・大阪大特任教授(医用工学)に開発中の人工網膜の臨床研究に参加するよう協力を依頼された。「ちょっとでも見えたら」。淡い期待を抱いて快諾した。 人工網膜は、カメラ付きの眼鏡とそれに連動する装置からなる。装置の一つは、カメラが撮った画像情報を受け取って送信する電子機器で、側頭部に埋め込む。もう一つは、画像情報を神経細胞に電気信号として伝える電極チップ(5ミリ四方、厚さ約1ミリ)で、網膜の近くに置く。 カメラのスイッチを入れると、画像情報が眼鏡のフレームから電子機器を介してチップに届く。チップは視細胞の役割を果たし、視神経を通して脳に視覚情報を伝える。脳内では、黒い背景に縦7個、横7個の計49個の白い点によって撮影した物の形が表示される。 榊原さんはカメラ付きの眼鏡をかけて、自宅や病院で訓練を積んだ。すると路上の白線がぼんやりと見え、線に沿って歩けるようになった。臨床研究の参加者の中には、動いている物は見えるものの止まっている物が見えなかった人がいた。止まった物も見えて洗濯物をたたむことができた人もいた。 不二門さんは「理論的にはうまくいっても、現状は視力0・1程度。見え方には個人差があり健常者とも違うので、リハビリの方法も慎重に開発する必要がある」と指摘。過度な期待にはくぎを刺すが「失明している方々にとっては大きなこと。数年後の治験に向けて研究を進めていきたい」と話した。

[8] 今年度の記事:世界初 iPS網膜移植 “拒絶反応起こらず 視力低下抑えられる” | NHK | 医療・健康

  1. 9年前、世界で初めてiPS細胞から作った網膜の組織の移植を受けた患者の最新の経過を、移植を実施した神戸市の研究グループが発表しました。拒絶反応やがん化などは起こらず、患者の視力の低下も抑えられていたということです。神戸市の理化学研究所などのグループは、2014年に「加齢黄斑変性」という重い目の病気の患者にiPS細胞から作った網膜の細胞「網膜色素上皮細胞」をシート状にして移植する世界初の臨床研究を実施しました。移植手術を担当した神戸アイセンター病院の栗本康夫院長が6日、東京で開かれた学会でこの患者の最新の経過を報告しました。それによりますと、手術から7年半にわたり移植を受けた患者の目を調べた結果、細胞シートは網膜に定着し、拒絶反応やがん化などは起きなかったということです。また、薬による治療を繰り返しても低下し続けていた視力が、移植後は下がらずに維持されていることなどから、「長期間の安全性と一定の効果が確認された」としています。グループでは多くの人に治療を行うため、京都大学の研究所が持つiPS細胞のストックから網膜の組織の細胞を作り、より手術が簡単な「ひも状」にして移植する臨床研究を進めています。栗本院長は「世界初の移植で安全性を懸念する声もあったが、計画どおりの結果を示せてとてもうれしい。この治療がどの施設でも誰でも行えるよう開発を続けたい」と話しています。

  2. どの技術が優れているか、ではなく、相補的に使えるよう開発されると良い。


by T. H.



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[1] Materials/Electronics

  1. Fermi Level (2018).

  2. Vacuum Polarization, and Polariton (2018).

  3. Current Status on ReRAM & FTJ (2023).

  4. Fermi Level 2 (2023).

  5. Vacuum Polarization, Polaron, and Polariton 2 (2023).

[2] Electrochemistry/Transportation/Stationary Energy Storage

  1. Electrochemical Impedance Analysis for Li-ion Batteries (2018).

  2. Electrochemical Impedance Analysis for Fuel Cell (2020).

  3. Progresses on Sulfide-Based All Solid-State Li-ion Batteries (2023).

  4. 国内電池関連学会動向 (2023).

  5. Electrochemical Impedance Analysis for Li-ion Batteries 2 (2023).

  6. Electrochemical Impedance Analysis for Fuel Cell 2 (2023).

[3] Power Generation/Consumption

  1. Electric-Power Generation, Power Consumption, and Thermal Control (2020).

  2. H2 & NH3 Combustion Technologies (2020).

[4] Life

  1. Home Appliances I (2021).

  2. Home Appliances II (2021).

  3. Home Appliances III (2023).

[5] Life Ver. 2

  1. Human Augmentation (2021).

  2. Vehicle Electrification & Renewable Energy Shift I-LXXXI (2022).

[6] 経済/民主主義

  1. 経済/民主主義 I-LIX (2023).

  2. 記事抜粋1-113 (2023).


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  1. Toru HARA | Confidential | Doctor of Engineering | Research profile (researchgate.net)

  2. Toru Hara, Doctor of Engineering - Google Scholar

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