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国交省が主導した「不動産ジャパン」が大失敗をした理由

鳴り物入りで「不動産統合サイト」とぶち上げ、「日本全国の4大不動産団体共同の物件検索サイト!」を立ち上げたはいいけれど、あらゆる面で鳴かず飛ばずの不動産物件検索サイト、「不動産ジャパン」の件であります。

「不動産ジャパン」は一体どこで何を間違えたのか。原因を整理してまとめてみると、ちょうど日本が「IT後進国」化していった構造の縮図が見えてきます。

設立の趣旨

まずは不動産ジャパン開設の経緯を見てみましょう。

 消費者への不動産物件情報公開を進めるため、情報を一元的に公開するいわゆる「不動産統合サイト」の整備について、(国交省の)不動産業課として提案しています。また、レインズシステムに関する提案もあわせて行っています。
 まず、「不動産統合サイト」についてですが、この提案の趣旨は、消費者が不動産物件情報をインターネット上で検索する場合に、各種団体等が個々に保有物件情報を公開している現状では、様々なサイトを閲覧しなければならない不便さがあります。このような不便さを解消することを目的とし、不動産業者が取り扱って市場に出ている不動産物件の情報を網羅的に閲覧できるサイト、即ち「不動産統合サイト」を業界関係者が一丸となって構築することを提唱するものです(図1参照)。
 そのモデルとなるのは、米国でNAR(National Association of Realtors:全米リアルター協会)が主体となって提供しているリアルター・ドットコムrealtor.com)です。

不動産物件情報サイトの整備及びレインズシステムに関する提案について
国土交通省不動産投資市場整備室

https://www.lij.jp/html/jli/jli_2002/2002spring_p025.pdf

この時点での問題提起の趣旨はよろしゅうございましょう。

平成15年(2003年)10月、めでたく、日本の4大不動産業界団体である、全国宅地建物取引業協会連合会(97,791社)、全日本不動産協会(36,780社)、不動産流通経営協会(1,923社)、全国住宅産業協会(171社)の各物件検索サイトから物件情報をあつめる「不動産ジャパン」が開設されました。(カッコ内数字は不動産ジャパンのページより)

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当時、業界メディアもこの話題について非常に多く取りあげていて、業界の人達も「統合サイト」には期待していた面もあったでしょう。しかし、今では「その存在すら忘れていた」、という人も多いと思います。

ではその不動産ジャパンの現状について少し触れておきましょう。

現状(惨状)

設立からかれこれ18年ほど経ち、不動産ジャパンは国交省が期待したようなリアルター・ドットコム(realtor.com)のようなサイトになれたでしょうか。

ジョークを言ってはいけません。比較するのもおこがましいわ。(あとで比較しますけれどw)

現在、日本国内で民間が運営する物件検索サイトのアットホームスーモホームズなどと比べて、不動産ジャパンはどれだけ知名度があるでしょうか。アクセス数や反響数は?数値は公表されていないので正確には言いようがありませんが、賭けてもいいですが、不動産ジャパンの数値は公表できないほど酷いと思います。ひょっとしたら、100対0ぐらいで違うのではないでしょうか。

当時、具体的にどのような事を想定していたのか、つづけてQ&Aの部分を引用してみましょう。

Q4.不動産物件情報の公開は民間情報産業が行うので、業界団体で実施する必要はないのではないですか?
A4.情報は不動産業の生命線です。インターネット上での物件情報サイトを運営する主体はそこにアクセスする顧客情報など重要な情報を一手に把捉することができます。全米リアルター協会は、情報を情報産業に全て握られることに危機感を覚え、自ら物件情報を提供するリアルター・ドットコムを構築しました
 業界団体の運営するリアルター・ドットコムと情報産業関係者の提供する様々なサイトがお互いに競争しあって、切磋琢磨することにより、サイトの内容の向上が進められています
 不動産業界として情報の取扱いについてどのように取り組むかは業界関係者の方々が自ら判断すべきものと考えられますが、米国の例は参考になると思います。
Q5.不動産物件情報の公開は、各団体、地域団体で、バラバラでも問題ないのではないですか、なぜ統合する必要があるのですか?
A5.不動産業界団体が一体となり、不動産業者が取り扱う物件(=市場に流通している物件)のほとんどが、一元的に見ることができるサイトが構築されれば、それは消費者にとって非常に利便性が高いということで消費者利便に資するということが第一点です。
 事業者側からみると、インターネット上での物件情報サイトを設置した場合の最大の問題は消費者にどうやってサイトの存在を知ってもらい、便利に見てもらうかです。
 各団体、地域団体でバラバラだとサイトの存在そのもの、アドレスを知ってもらうことが非常に難しく、消費者に閲覧してもらうためには、別に広告を打たなければなりません
 既に、先行的に物件情報サイトを運営している業界団体の方々はこの点で非常にご苦労されていると思います。業界全体での統合サイトは、わかりやすく、消費者が真っ先に閲覧するサイトとなれる可能性が高いということから事業者の皆さんにとってもメリットがあるのです。(全米リアルター協会が運営するリアルター・ドットコムは米国の不動産物件サイトとして最も多く閲覧されています。)
 また、物件情報を公開するサイトの運営コストの面でも業界としてまとまることは、当然、受託する情報産業事業者に対する交渉力が増すのが一般的で、サイト運営コストの縮減も期待できます

*後述しますが、「全米リアルター協会が運営する」、というのは間違いです。

元々バラバラに乱立していた業界団体サイト、未だに「ハトマークサイト(全宅連)」は現存していますし、「ハトマークネット」の代わりに「ハトさん、ハトマーク東京不動産(東京都宅建協会の協同組合)」の検索サイトまであらたに登場してしまっています。バラバラにやっていたって「サイト運営のコスト縮減」も達成されませんし、「別に広告を打たなければな(らない)」点も、新サイトの「ハトマーク東京不動産(ハトさん)」の広告は大量に見かけるように、何も変わっておらず、未達成です。

コスト削減も出来なかったばかりか、逆に増えて、碌に知られてもいない無駄なサイトがまた一つ増えただけの現状(惨状)であります。

もはや不動産ジャパンは過去の遺物。なぜそうなったのか。

実は、不動産ジャパンはその開設当初より致命的な欠陥を幾つも抱えていたと言えます。

原因(第一の失敗)

第一の失敗は、不動産ジャパンで掲載する物件情報を「単に各業界団体サイトから吸い上げてくるだけ」としてしまったことです。

これに起因する第一の問題は、バラバラに存在している業界団体のサイトを一つのサイトに統合するのではなく、単に情報を転載して集めただけのサイトを新たに作ることにしたことが、統合の趣旨を無為なものとしています。各サイトがバラバラに存在したままなので、それぞれが集客をしようとし、結果としてビリ同士、お互いに足を引っ張り合ってる状態の解消にならず、より悪化させただけの結果になりました。

第二の、より大きな問題は、転載元となる情報源の各業界団体サイトが、そもそも物件情報を集める能力を持っていないため必然的に掲載できる情報の量と質が劣ったものになってしまう、という事です。業界団体のサイトとはいえ、物件情報は自動的に集まるわけではありません。業界団体のサイトの問題点は具体例を挙げるとキリがないので、ここでは割愛しますが、宅建業者ですらほとんど使っていません。任意ですから。

つまり、元の業界団体の物件検索サイト自体が、お客さんからの反響もないので業者も力を入れない>物件情報が集まらない>お客さんも見ない、という悪循環に嵌っているのです。業者だって無意味なことに時間を割くようなことをしている余裕はありません

私が現役で利用していた頃は、別の民間サイトに登録した物件情報がおまけで業界団体系のサイトにも転載される仕組みで少し流れてる程度の感じでありました。また、登録したのが(賃貸だと)30日間掲載されたままで良い、という緩いルールだったので、物件情報も新鮮とは程遠い状況です。繁忙期の最中に、物件数少ないうえに、1ヵ月間掲載されたままの物件情報なんて無用の長物となります。

さらには、各業界団体からの情報を転載しているので、掲載されるまでにタイムラグが発生します。実際、不動産ジャパンのサイト上では、「(情報の更新は各団体サイトで行ってください)登録・修正した場合、反映まで1日程度のタイムラグがあります」との記載があります。実際には1~3日という所でしょう。繁忙期に人気のある新築物件などを民間の検索サイトで公開すれば1日で申し込みが入って決まる事も多い昨今、不動産ジャパンの1日~のタイムラグは致命的です。というか「おとり広告」になっちゃうでしょう。

結果として、不動産ジャパンで掲載される物件情報も、新鮮とは程遠く、物件数も少ない、ということになってしまうのです。当然、誰も使いません。

この問題についてはしばらく前に書いた「『ハトさん』、多すぎ問題」でも取り上げました。追記:「全宅連の『不動産情報提供のあり方研究会』の報告書を読んだらこれまたダメダメだった件」もご参照ください。

なぜ不動産ジャパンでは、物件情報を直接宅建業者から登録してもらうようにせず、各団体のサイトから集めるだけにしたのか、その理由は分かりません。安易に「既存のサイトから集めれば楽じゃん(自分らは何もしなくて良いし)」と単純に考えてしまったのかも知れません。それとも各団体に協力する意思がそもそも無かったからなのかもしれません。誰か当時の経緯をご存知でしたら教えてください。

もし、他の業界団体の物件検索サイトを全部廃止し、不動産ジャパンでだけ物件情報を登録出来るようにしていたら、また少しは違うものになっていた可能性は「少しだけ」あったでしょう。または、業界団体のサイトからではなく、レインズのデータを転載するようにしていれば、同様に「少しだけ」違っていたかも知れません。(これはこれでまた別の深~い話しなのですが、また別の機会に>書きました:「レインズの情報を一般公開できない理由とは」、「巷の、「レインズの『オープン化』論」の論点を整理してみる

「少しだけ」違っていたかもしれない、としているのは、不動産ジャパンには他にも失敗の要因があって、結局はどのみち上手く行かないからです。

原因(第二の失敗)

第二の失敗は、不動産ジャパンの運営主体を(財)不動産流通近代化センター(現「不動産流通推進センター」)にしてしまった事です。

Q8.なぜ、統合サイトの運営主体に(財)不動産流通近代化センターを予定しているのですか?
A8.不動産業界全体の情報化促進業務は(財)不動産流通近代化センターの本来業務です。不動産流通に携わる関係者である、全宅連、全目、FRK、日住協の4団体と密接に関連している組織としては同センターのみです。また、全国4レインズを束ねる立場としてからも統合サイトの運営主体は(財)不動産流通近代化センターがあたることが適当と考えられます。

聞こえは良いですが、ようは国交省の天下り団体です。

だいたいこういう業界関連の国絡みの組織のトップは名前貸しみたいな兼任のお飾りで、役員達も同様にみな非常勤。実質権力は常任の副とか常務理事が握っているわけですが、大抵それが天下りの元官僚。不動産流通推進センターもまさにそれであります。

そんなんで碌なサイトを運営できるわけがないです。

政治家や官僚は、どういうシステムをつくったらいいかイメージができない。イメージできないのでどうするかといえば、システム開発を請け負う企業、いわば「ITゼネコン」を呼んで、すべてをぶん投げてしまうのだ。これは泥棒に鍵を渡す行為に等しい。

大前研一 「日本のシステム開発が失敗ばかりする根本原因」

こうなるのがオチです。

何にも分からない天下りの元官僚たちがITゼネコンに丸投げしてしまう問題点については、「DXは脱『ITゼネコン』から始めよう」でエピソードを交えてまとめましたので、まだでしたら、是非お目を通し下さい。

せっかくの高尚な目的を「業界と官僚とITゼネコンの癒着と利権」という問題にまで矮小化してしまったのは、運営主体を不動産流通推進センターとしたことが原因です。

国交大臣が流通機構を指定して、同じく不動産流通推進センターが仕切るレインズの惨状においてもまったく同様の現象です。

そもそも、レインズにおいてもそうですが、お国(国交省)が出て来てこうしろああしろと過保護に民間の業界団体をペイトロナイズ(patronize)することが、逆に日本の不動産業界の自主性を損ね主体性を奪っている可能性が高いです。

不動産ジャパンやレインズについて運営や改善についても、業界側が不動産流通推進センター(の天下り元官僚たち)を通して、お国の国交省にお伺いを立てないと身動きすら出来ないような体制にしてしまい、日本の不動産業界における物件流通のIT・デジタル化が数十年にも渡って停滞し続けることになったのは、まさにここに原因があるといっても過言ではないでしょう。業界から自ら考えて動く能力をも奪っています

こんな状況で「不動産ジャパンと様々なサイトがお互いに競争しあって、切磋琢磨」なんて、夢物語です。誰にも相手にすらされていません。不動産流通推進センターの天下り元官僚たちが、努力して民間と競争して切磋琢磨していると思いますか?実態は、逆に足を引っ張っているだけではありませんか?

新しくできるデジタル庁、どうなんですかねぇ。この辺もメスを入れてもらいたいものですが、まぁ無理だろうなぁ。あくまでも建前上は「民間のやること」だし、国交省の天下り先という利権構造もあるし、政治が絡んでます。

リアルター・ドットコムとの比較

では、不動産ジャパンを作るにあたって国交省が「モデル」としていた、米国のリアルター・ドットコム(realtor.com)とはどのようなサイトでしょうか。

それを説明するには、まず米国の「MLS(Multiple Listing Service)」というもの説明しなければなりません。

(追記:MLSについて別途あらためて「米国のMLSについての翻訳・解説まとめ」で詳しく書きました)

リアルター・ドットコム(realtor.com)のページから、翻訳、引用してご紹介しましょう。

What is the MLS?
MLSとは何か?

MLSは現代の発明のように見えるかもしれませんが、その背景となるおおまかなコンセプトと「マルチプル・リスティング」という用語自体は、1907年に発案されたものです。その当時、不動産のエージェント(日本であえていうと宅建士)達は定期的にオフィスや会場に集まり、不動産の売り物件情報をお互いに交換しあっていました。エージェントのネットワークが物件の買い手を見つけるのに役立つという期待からです。「マルチプル・リスティング」という用語はその古き慣習に由来しています。1908年、NARの前身である「全米リアルエステイトエクスチェンジ協会」(National Association of Real Estate Exchanges )が、それを広く全てのエージェントに広げることを推奨したことにより、段階を踏みつつ急速な発展をとげ、現在のモダンで様々な条件検索の出来るオンライン情報システムとなりました。

Yes, the MLS seems like an invention of the modern age. But, in fact, the term “multiple listing”—and the overarching concept behind it—was first coined in 1907. Back then it described the old-timey practice in which real estate agents would gather regularly at offices or conferences to trade info about homes they were trying to sell, hoping this network could help connect them with buyers. In 1908, the National Association of Real Estate Exchanges (the organization that later became the National Association of Realtors®) endorsed the use of this system by all agents. It quickly caught on from there, evolving, stage by stage, into the modern system in use today—online and fully searchable by price, neighborhood, and home features.

MLSは、一見ひとつの大きな全国版データベースのように見えることがあるかも知れませんが、実は、約580の地域版のデータベースの集まりです。各々のMLSは地域ごとに独立していて、それぞれの物件情報をもち、エージェントは利用するための会費を払います。そのため、より広範囲のお客さんにリーチするために、複数のMLSに加盟するエージェントも居るのです。

While the MLS may look like one large national database, it’s actually a suite of approximately 580 regional databases. And they’re quite territorial: Each regional MLS has its own listings, and agents pay dues to access and post homes on each one. This is why agents who want a broader reach for their clients may become a member of more than one MLS.

このMLSにある総合的な不動産物件情報のデータベースから、広告に必要な基本物件情報として抽出したバージョンを取得して同じように掲載するサイトは他にも多数ありますが、このrealtor.com®は、ずば抜けて最も多く(MLSで売りに出ている米国の物件の99%)の物件数を掲載しています。(さらに自慢させて頂くと、当サイトの売り物件情報は少なくとも15分毎に更新されますので、一秒を争う現代の不動産マーケットに対応しているものと言えるでしょう。以上、自慢は終わり!)

While numerous websites aggregate home listings through highly condensed versions of MLS listings, realtor.com® is by far the most comprehensive, with 99% of all MLS-listed “for sale” properties in the U.S. (And to further toot our own horn: Our listings are also the most accurate and up to date. Over 90% of “For Sale” listings are refreshed at least every 15 minutes, which can come in handy in a fast-paced housing market, where every second can count. OK, we’re done!)

What is the MLS? - realtor.com

翻訳引用は以上です。要点は以下の通りです。

1.不動産のエージェント達が自主的に始めた情報ネットワークを起源としている。
2.MLSのデータベースのネットワークは「草の根」のように地域ごとに出来たものが、会員たちの協力によって発展し連携してきた。
3.realtor.com(NARの一般向け物件検索サイト)は、そのMLSのデータを利用している。
4.99%網羅する大量の物件情報を掲載し、なおかつ新鮮であるという質も担保している。

日本の不動産ジャパンとは、ひとつひとつ比較するまでもありませんね。根本的に別ものとなっています。

不動産業者としても、一度MLSに物件情報を登録するだけで様々なサイトに掲載されるので、非常に楽であります。MLSにさえ登録すればよい米国と違って、日本ではレインズに登録した後、個別にアットホームやらスーモやらホームズやら各業界団体のサイトやら、別個に登録しなければなりません。それも手入力、みたいな。

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(参照:「日本の不動産屋は『イカレている』か『マゾ』のどちらかである」)

実は、リアルター・ドットコム(realtor.com)には、もう一つ決定的な違いがあります。リアルター・ドットコム内の「realtor.com Tech Blog(テックブログ)」というページを見てみましょう。

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このブログ、完全にIT技術者(プログラマ・エンジニア)向けの内容となっています。(私もこういう話題、大好きです)

「テックブログ」なんて、まるで、IT企業のようですね。というか、そのものです。(彼らにとっては、「DX、デジタルトランスフォーメーション??25年前からやってますが何か」、みたいな感じでしょうね)

このリアルター・ドットコム(realtor.com)を運営しているのは、Moveという会社です。元はRealSelectという会社だったのですが、1990年代の終わりにNARが少しだけ出資して提携(パートナーシップ)を結んで、そのRealSelectが後にMoveを買収してNASDAQへ上場し、後にMoveに社名変更、2014年にNews CorpがMoveを買収・・・という経緯(ややっこしい)。で、NARはRealtor.com というアドレス(URL)をライセンス許諾している、という・・・。(ややっこしい)

で、Moveには当然のことながら技術者達がいて、彼らが日々サイトを構築したり、APIや、携帯のアプリを開発し、利用している技術についても積極的に情報発信(と開示)を行っている、という事です。

このようにすることで、システムの改修もニーズに合わせてタイムリーに出来るうえ、開発体制や技術選定とその目的といった意思決定プロセスが透明化されるので、一般や会員も、「最新で安定した良い技術を選んで使っているのだな」と安心できます。アカウンタビリティというやつです。

日本の状況とはなんという違いでしょう。涙しか出てきません。

因みに、リアルター・ドットコム(realtor.com)のテックブログの記事やコラムをつらつらと読んでいたら、なんとリアルター・ドットコムは「Ruby on Rails」で動いていた、ということに触れているコラムがありました。ステキです。

リアルター・ドットコム(realtor.com)っていえば、全米リアルター協会(不動産業界の団体)が全面バックアップ(つまり提携している)のずっと全米No1だった不動産物件検索サイトで、老舗中の老舗にも関わらず、テクノロジーの面でもトップを争いながら突っ走る、今風に言えば「不動産テック」の代表格のサイトです。

Rubyって言えば、日本のまつもとゆきひろ氏が作ったプログラミング言語ですよ。でもね、ポイントはそこじゃなくて(そこも嬉しいけど)ですね。Ruby on Railsは、そのRuby言語を使ってサイトを構築しやすくする「フレームワーク」ってやつなんですが、これ、Twitterが使ったりしてブレイクして、その昔は技術に対する感度の高いテック系のスタートアップ企業が良く使うイメージのあるフレームワークでした。(プログラマなら知らない人はいないGitHubもRuby on Railsだったかな)

それを採用して、自らバリバリやっていたとは・・・素晴らしいことです。

日本の不動産業界団体系のサイト構築では、国交省の天下り元官僚がふんぞり返っているだけの団体が、NTTデータとかのITゼネコンにシステムを外注つまりは丸投げして(どうせITゼネコンのレガシーなシステムでしょうが)ベンダーロックインされたまま、レインズといった化石のような、く・そサイトをず~と放置しているのとは、本当に本当にえらい違いです。

ま、コラムの内容は、25年経って、サイトの規模も大きくなり、Ruby on Railsを卒業する時がやってきた、という話しです。それはそれで仕方のないことです。Twitterもそうでしたしね。で、サイトをProgressive Web Apps (PWA)で作り直したのと、携帯のアプリもFlutterを採用するとか。

(あ~日本とは比較しない比較しない・・悲しくなるだけだから・・・レインズは今年になってやっとIE限定が直ったぐらいのレベル、みたいな)

追記:「不動産指定流通機構:あらためてレインズの問題を考える」を書きました。

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