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スマートスピーカーで「音だけ」で格闘ゲームを表現できるか? - 音声UX攻略記 -

どうも、VoiceApp Lab のコバヤシです。「音声UX攻略記」と銘打ちましたが、音だけの世界はなかなか奥深く、学ぶことだらけです。学びながら攻略をめざす、長い旅の記録です。どんどん。

先日、Google Home & Alaxa 向けにこんなアプリをリリースしました。

「ボイスカンフー」という「音声のみ」で遊ぶ格闘ゲームです。すでに2000人以上の方が遊んでくれたようで嬉しいです。今回はこのアプリのUXを考えたときの変遷を辿ってみたいと思います。


声だけで遊ぶ格闘ゲームを作ってみたい

スマートスピーカーで、格闘ゲームができないか考えた。ストリートファイターや鉄拳のようなゲーム。うちもそうなのだが、子供にスマホを持たせるとゲームにハマって目が悪くなるので、禁止にしている家庭は結構あると思う。そんな家庭で、子供と一緒にできる「音声による格闘ゲーム」などあったら楽しいんじゃないか、そう思った。

でも、だれでもわかる問題点があった。

問題:そもそもインターフェースが声だけじゃん

そう、問題は「声だけのUI」をどう料理するかだ。

単純に思いついたのは、スピーカーから相手の息遣いが伝わってきて、「パンチ」「キック」などと言えば「バキバキッ」とリアルタイムで攻撃を繰り出す。そして相手が攻撃してきそうなサウンドが聞こえたらすかさず「守る」といえばガードできるような、リアルタイム対戦システムだった。

でもそれはスマートスピーカーでは難しい。Google HomeやAlexaなどのスマートスピーカーの音声認識システムは「一問一答」、つまり「Aを選びますか?」と聞いたら「はい」または「いいえ」または「Bにして」と答えるまで待つ。その間は無音。しかも6秒以内に答えないと「もう一度お願いします」と確認するようなガチガチのダイアログシステムだ。

なので、相手の息遣いやパンチ音を聴きながら、臨機応変にインプットを返すということができない。そもそも格闘ゲームを音だけでやろうとうのが無理なのかもしれない。とりあえず発想を転換するしかない。まず検証すべきは、

・リアルタイムで応答できなければ格闘ゲームは表現できないのか?

という点だ。それを確認するためには、「リアルタイムで応答しないバージョン」を考えてみる必要がある。

ターン制のバトルシステムはどうか

リアルタイムでないとすれば思いつくのが、「ターン制」のバトルシステムだ。

自分自身ゲームに造詣が深い方ではないのだが、ソシャゲやスマホゲームで定番になっている「トレーディングカードゲーム」というジャンルがある。お互いターンごとにカードを出し合い、出したカードの特徴によって攻撃や防御が決まるというもの。これは参考になりそうだ。

で、この形式のスマホゲームをいろいろやってみたりした。どれも趣向を凝らして楽しい!のだけど、ひとつ問題があった。どのゲームもカードの種類が多く、そこのコレクション性がありキモなのだが、これをそのままスマートスピーカーに持ってはこれそうになかった。そもそも音声だけで幾多のカードの種類を覚えさせることは難しい。

音声のみUIという特性上、キーになるのは「ユーザーの記憶力」だ。スマホゲームであれば、画面を見ながら「あれでもない、これでもない」とカードを物色できるが、音声UIの場合、その選択肢はユーザーの「頭の中に」にしかない。いいかえれば、「ユーザーの頭の中で記憶でき、コトバとして引き出せる選択肢」が必須となる。

経験上、音声インタフェースの場合、それは4つまで。5つ以上になるとユーザーが整理しきれなくなる。

となると、カードゲームのシステムそのままでは厳しい。でも「ターン性」というエッセンスは悪くはなさそうだ。いったん別の角度からみてみる。

格闘ゲームのキモとは?

逆に格闘ゲームのキモはなにかと考えてみる。久々にいくつかのゲームをやったり、Youtubeでゲーム動画を何本も見てて気づいた。それは、

・格闘ゲームは、攻撃、防御、投げ技の「三すくみ関係」であるということ

格闘ゲーム攻略サイトや研究サイトを見ると、どうやら基本のようだった。

パンチやキックを受けても、うまく守ればダメージを受けない。でも守っているばかりだと、近づいてきて、投げ技や飛び技を食らう。でも投げ技には無防備になってしまうという弱点がある。つまり投げ技の途中でパンチをされると、モロにダメージをうけてしまうわけだ。

ゲームタイトルによってはさらに複雑になってくるわけだが、格闘ゲームの「面白味」を出しているキモは、上記の三すくみ関係だと見てよかった。

三すくみ関係の代表といえば「ジャンケン」である。「声だけで格闘ゲームを実現しよう」と考えると難しいが、「声だけでジャンケンゲームを実現しよう」なら全然無理がない。お、いけそうじゃないか。

格闘ゲームをジャンケンゲームに落とし込む

格闘ゲームをジャンケンゲームにしてみる。さらにカードゲームのターン性を取り入れてみる。選べるカード(選択肢)は3つ。

・攻撃 / 守る / 投げる

ゲームはターン性。相手が攻撃をしてきたら「守る」で守ることができる。守るを選ぶと「投げる」でダメージを受ける。さらに「投げる」を選んでいるときは「攻撃」に弱い。うん、システムとしてはシンプルで悪くない。

だが、格闘ゲームという意味では、ちょっとテンション的に弱い気がした。とくに、攻撃したいときに「攻撃」というワードが気分とマッチしていない。そこで攻撃を「パンチ」と「キック」に分けてみる。

・パンチ or キック(攻撃) / 守る / 投げる

これなら、「パンチ、キック!」と叫ぶことができるため、メンタル的にも攻撃した感があって気持ち良い。

ただの「後出しジャンケンゲーム」にしないために

基本の仕組みはできた。これならシンプルで、音声だけでもユーザーが迷わずに遊べそうだ。ただ、問題点がひとつ。よく考えてみるとこれ、ただの「後だしジャンケンゲーム」である。

ルールをジャンケンに寄せたのは良いが、トレードオフで、ゲームとしての面白味がなくなっては意味がない。

そこからは、とりあえず実装しつついろいろ試してみることにした。試行錯誤した結果、次のようなルールを加えることにした。

・基本後出しだが、時々相手が裏切った行動をする
 →それは相手の行動からある程度予見できる。「相手は集中している」というメッセージなどでほのめかす。

・一回ごとの勝負ではなく、連続技の勝負にする
 →敵「キック、パンチ、守る」 プレイヤー「守る、守る、投げる」のように。これはかなり焦る。

・上級レベルになると、敵の手が分からない時がある
 →「パンチ以外のどれか」「守る以外のどれか」とかで撹乱する。

・「かいしんの一撃」システムの導入
 →ギャンブル性、気持ち良さを適度な割合で付加する。効果音も派手にする。

これでなんとか「格闘ゲーム」の体を成せるようになった気がする。

そして完成したゲームがこちら

ボイスカンフーといいます。Google Home および Alexa で遊べますので、ぜひ一度遊んでみてやってください。2/22現在で、すでに2000人以上の方が遊んでくれたようです。感謝。

この記事では、主にゲームシステムについてのみフォーカスにしたが、ほかにボイスカンフーには次の要素をいれた。

・レベルアップシステムによるRPG要素
・擬似対戦型システム
・ユーザー名の自動命名システム
・早口ナビゲーションの導入
・ラストに絡めたストーリー展開

うちの子(11歳の小学五年生女子)にやらせたら、めっちゃハマってくれた。何が嬉しかったって、ゲームの最中に「パンチ!」と叫びながらパンチのポーズをするわけですよ。んでキックはキックのポーズをしたりして。で、勝負に勝つと「やったー!」って雄叫びするんです。たかが音声なのに。

音声のみなので、集中するために「目をつむる」ようになる。目をつむって「パンチ、キック、投げる」って叫ぶ。そんな格闘ゲームって世の中にない。

スマートスピーカーの持つ、「音声だけ」という特性は「インターフェイスの省略形」と思っていたが、勘違いだったことに気づいた。

・目に見える要素がないからこそ、イメージが湧いてくる。そのイメージに没入することだって可能である。

それが実感できたのが、今回の収穫であった。


音声UX攻略の旅はまだまだ続く

全部を紹介できなかったのですが、いくつか最後にあげたような要素(レベルアップシステム/擬似対戦システム/ユーザー名の自動命名システム etc.)なども、音声ゲームとしてチャレンジしてみたいポイントでした。

このあたり、興味ある人はいるんでしょうかね??興味あるぞ!って方はフォローしてください〜。フォロー多かったら、その辺も書いてみようかなと思います。

んではまた。どんどん。



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