色んなところで繰り返し言っているんですが『BADDUCKS』は私の処女作です。

2018年秋から自主連載をし、2020年夏に完結しています。私が「漫画家やるか」と思って様々な編集の人と会っていた頃（2020年末〜2021年）には既に完結していたものです。出張編集部で同人誌の1巻をボロクソに言われていたことを永遠に引きずっており、「こんなもの（BADDUCKSのことです）が商業の世界で金になるわけがない」と思って放置していた物語です。そういう経緯があったので早々に新作の構想や読切の掲載先探しを進めていました。

そんな中、同人誌界隈の人や友達から「BADDUCKSは商業でもいけますよ」と謎の（普通に確信はあったと思いますが）背中押しをされ、ちょうどその頃（2021年初夏）お会いしたwebアクション編集部の堀江さんに「これ…単行本にできたりしますかね…へへ…」とかなり卑屈な感じで申し出てみたら、色々と何やら見積もってくれて、「出せますよ」と言ってくれました。出せるんだ。マジか。

というわけで2022年に双葉社さんからBADDUCKSの単行本が出ることが決まりました。既に完結済みであるということで比較的スケジュールの立てやすい企画だったかとは思いますが、私はさんざんに迷惑をかけたのでその一部を記しておきます。

●2021年の打ち合わせでは「台割」「ノド」「幕間」などの初出単語が頻出して「はい、はい」とわからないのでとりあえず頷いていて（本当にすみませんでした）、最近やっと理解し始めたところです。ページ番号と左右がよくわからないままやっていたので本当に苦労をかけました。webに自主連載していた当時は基本的に縦スクロールで読むことを想定していて、見開きもなかったので本当に何も考えていませんでした。

●また印刷面でも、私の使っていたデータが本当にボロクソ（これはなんの言い訳の余地もなく本当にボロクソでした）だったので、その辺を印刷所さんとの間に入って刷り出しを何度も試していただいて、やっとこさまともなデータにしていただけました。トーンを使い初めの頃のモアレが本当にひどくて、早い段階で直せたのもありがたかったです。

●単行本を全何巻にするかというお話になったんですが、同人版で悔いの残っているカバーイラストを描き下ろしたかったので、その余力がそこまでないところと、あとカバーイラストのネタがないなということで4冊に決定しました。ここでまた同人時代のボロクソを蒸し返すんですが、同人版の1巻では「まだ面白いところ（7話〜）まで入ってない」という気持ちだったので、1巻のボリュームを出したかったのも決め手の一つです。同人版の1巻はトーン無しだったので（それも出張編集部で指摘を受けました）、全て貼りました。

●印刷所さんとの間に入って色々とこまめに調整してくださった堀江さんには頭が上がりません。当時のズブの素人の私に提出してくれたBADDUCKS単行本化の企画書を最近掃除した時に発掘して、本当に有難いことをしてもらったんだなと思いました。そして印刷所の皆様にも感謝です。同人誌を印刷してくれた印刷会社の皆様にも感謝です。（※同人時代はデータを軽くする方法を知らなかったのでデータがとんでもなく重く、同人誌を一冊入稿するためにファイルを最大23つ程に分けて送っていました）

●「体力が…」とか「初心者すぎて作業にどれくらいかかるのか見当がつきません」とか「他社さんで企画進めているところでちょっと忙しいです」とか諸々の制約の多い、しかも全然売れてない新人のわがままをたくさん聞いてくださって、そのお陰で無理なく単行本化作業を進めることができて本当にありがたかったです。

（お陰様で…と言ってはアレなんですが、ある程度データや印刷に詳しくなることができて良い経験になりました。ズブの素人相手に根気強く教えてくださってありがとうございました。）

●カバーデザインに関しても、「なんかあんまり面白いと思って期待させて読んでガッカリしたら読者がかわいそう」「あんまりカッコ良すぎると内容が負けてしまう」「手仕事感があった方がいい」「タバコのパッケージみたいにしたい」「SFじゃなくて人間関係がメインなのでSFっぽくしないでください」など色々わがままを言い倒したにも関わらず、本当に理想の、素晴らしい装丁に仕上げてくださったBALCOLONY.の染谷さんと稲田さんのお二方も、本当にありがとうございます。

●出版社には編集部以外にも部署がある（当たり前）のですが、営業部の皆さんも同人誌を読んで適切な戦略を立ててくださり、そしてそれを受けた全国の書店の皆さんのご協力もあり、こうして皆さんのお手元に届く形になりました。

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様々な皆様のお力添えと応援のお陰でこの度全国の書店でBADDUCKSが販売されていて、いや、素晴らしいことです。「読者の人がわざわざ遠くまで出向いたり、作者がバズったり、ファンが熱心に購買をしたりせずともきちんと物語が終わる作品に、本屋で気軽に出会って楽しんでほしい」という気持ちがずっとあったので、それが実現したのが本当に嬉しいです。

とにかく多大なる尽力と偶然の元に成り立っている奇跡の単行本（全4巻）なので、そのことをここに記しておきました。

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↓BADDUCKS執筆後に描き溜めた短編を全て揃えた作品集『あと一歩、そばに来て』です。こちらも是非！

Special Thanks to Everyone!

武田登竜門