柿の種

「うぁーーーーん!」
「あ〜、どうしたのかずおちゃん」
「お兄ちゃんが柿の種たべた〜!!」
「柿の種ぇ?もう、そのくらいで泣かないの」
「うぁーーーーーん!!」
「もう〜、どうしてそんなに泣くの柿の種くらいで!」
「柿の種、庭に植えたかったのにーーー!!」

なんとこの男の子、お菓子の柿の種を庭に植えたかったと
泣いていた。それを聞いて観念したお母さん。

「わかったわかった。また買ってきてあげるから。ね。泣かないの」

次の日、男の子はお母さんが再び買ってきてくれた
柿の種をひとつつまむと、庭の桜の木の隣に植えて、
水をジャーッとかける。それを見ていたお母さん、
男の子が柿の種を植えたところに、
本物の柿の種をこっそり植えた。
男の子は次の日も次の日も柿の種に熱心に水をあげ、
肥料と称しておしっこもかけ、やがて1月ほどで、芽が出た。

「お母さん!芽が出たよ!やっぱり柿の種だね!」
「わぁ〜よかったわねー。大切に育てなさいね」
「うん!」

男の子はその後何年かは、それはもう心を込めて育てた。
木の方もすくすくと大きくはなったが、
男の子の方が大きくなると、やがて木を育てるのをサボりだす。
まぁ大きくなれば木の世話なんかより友達と遊ぶ方が楽しいから仕方ない。

それからはお母さんが庭の手入れをしながら、木を育てて10年後。

男の子はすっかり大きくなってこんど大学受験という年に。

そしていよいよ明日はセンター試験という日。

「かずお。お弁当持ってないでしょ!」
「あぁ、忘れてた」
「気負いしすぎないで、普段通りがんばんなさいよ」
「うん」
「あ、あとこれ」
「なに?」
「柿。家になってたやつ」
「なんで?」
「あんたが植えた木なのよ。あれ」
「そうなの?そんなことあったっけ」
「覚えてないの?まぁいいわ。きっと運を呼んでくれる。お昼にでも食べて」
「運?どうしてこんな柿が運を運んでくれるんだよ」

「あなたが柿の種を植えたとき、『落花生』はなかったからよ」

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