秘密のキューブ
作:ウダタクオ 2006年09月27日
秘密のキューブ
デパートの中の、そのまた中まで行くと世界は一変する。
華やかなテナントが並ぶそれとは違い、壁にはヒビがはいり配管は剥き出しのままでいる。
異空間に自分がいるようで現実なのか幻なのか錯覚してしまう。
階段を降りていくとそこはトンネルになっており、目の前を大量の荷物がトロッコに乗って運ばれていく。
安蛍光灯の薄暗い世界。
からからから、からからから。
音がした。
ローラーを転がした様な音が近付いてくる。音が大きくなると共に反響音は輪郭を失い、どこからその音が鳴っているのか分からなくなる、そして遠近感をも失う。
すーっ
私の目の前を白いエプロンをした女が通っていった。
水色のコスチューム、その娘は滑車の付いた荷台を押し進んでいた。
メイド!?私は戸惑った。
なぜ、こんな所にメイドが?
薄暗い地下室、トロッコ、そして荷台を押していくメイド、ここはどこ?
私は何かミステリーとかサスペンスが始まりそうな気がしてドキドキした。
仕事内容といえば、トロッコに乗って運ばれてくる荷物を私がエレベーターに積み込む、その荷物は地上に出る、捌かれる。たまにメイドが荷台を押していく、それの繰り返しだった。
私はどこかにこのメイド達のご主人様たる者が必ずいるはずだ!と思い、不要に知らないドアを勝手に開けて回った。私はその件でかなり怒られた。
昼休みの時間がきた、私は地上に出たかった。
もと来た道を戻れと言われても、もはやここはダンジョンで、私は迷子になっていた。秘密の花園の屋敷を私は思い出し身震いした。
泣き声とも何とも言えない様な音がどこかから響いている。私はそっちの方を向かないように歩いた。振り向くと石にされるような気がしたからだ。
実際、まわりには石像のオブジェが幾つもあった。
とにかく逃げなくては!!私の思考回路はそう判断した。一刻も早くここから抜け出さなくてはそのまま出られなくなり屍になるかオブジェにされてしまう!!
私は光を探した、陽の光の射し込む場所はどこだ!?
知らず知らずのうちにキューブ(映画)の中に神経が堕ちてしまっている。
私は薄暗いダンジョンの中を彷徨い走った、とその時1番初めにメイドを見た場所に戻って来ていた事に気が付いた。
しかし、どこか違う、何かがおかしい、私は異変を感じていた。似ているけど違う!?ここはあそこではない。全く同じに見えるが違う、そう見えるだけだ、何かにそう思わされているだけだ。いや、私は惑わされている。
で、出れない・・・私はこのダンジョンからは出れない。
両膝をついて私は前のめりに崩れていった。
からからからから、からからから、音がする。懐かしい音だ、心地の良いリズムだ、私の方へ音は近づいてくる、助かった!きっとあのメイド達のうちの誰かだ。
すっかり意気消沈してしまっていた私は顔をあげて音のする方を見た。道を教えてもらおう!
荷台の荷物に隠れてメイドの顔はまだ見えない。あと数メートルだ、あと数メートルこちらに来たら声をかけよう、道を教えてもらうんだ。
数秒が経過ち、メイドの顔が見えた時、私の記憶はとんだ。
その日、私が最後に見たのはメイド服を着たミイラだった。
この話は誰にもするな。
最後まで読んで頂きありがとうございます!本編はここまでです。
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以下、あとがきになっております。
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