ジョン・レノン

作:ウダタクオ 2006年09月10日


ジョン・レノン

 こんなに暑いと海に游ぎに来ているんじゃないかと錯覚してくる。8月も終わり誕生日も通り過ぎた。それなのに、空は青々と白い雲を浮かばせては太陽が威張っている。

 私の目の前をマウンテンバイクに乗った女がケツを突き出して立ち漕ぎで通り過ぎていった。健康なガキを産めそうなケツだなと私は思った。

 今日は看板持ちのバイトだ。新築分譲マンションさ。


 パイプ椅子に座りプラカードを持っていると普段は見れない景色を楽しめる。

 全ての人々は動いている。そう、動いているんだ。まずその事に気付く。そして私はここから動けない事に気付く。

 それがどれぐらい素晴らしい事なのか分かるかい?

 誰にも迷惑をかけずに誰からも怪しまれずにその場所にずっといられ、観察できるって事だ。おまけに金までもらえる。

 同じ場所に長時間座ると人々の1日の流れが把握出来る。

 例えば日曜日のスーパーは昼前が1番混む。そして、その駐輪場で毎週土曜日に高校生カップルが待ち合わせをしている、とか。普段はみれない光景がゆっくりと流れていく。

 不思議な事にいつも同じ時間に同じ人が道を歩いていく。日曜日になると必ず目の前を通過する赤いフェラーリ。そいつも決まって3時に出現れる。

 この町には生活パターンの決まった、一定のバイオリズムで生きている奴ばかりが暮らしている。

 

 ある男はバカでかいアメ車にガキをぞろぞろ乗せてホームセンターに行く。幸せな家庭の手本や見本みたいなことをしているが、ひとつも幸せとは思えない表情は決まってサングラスをかけている。

 ガキはアイスが食べたいジュースが飲みたいと泣き喚き、母親はそれを無視して第2の人生の趣味に没頭する。父親は日曜日はパパをやっています、というふうな感じで子供なんかには決して興味はない。文句あるか!汗水垂らして働いて、俺が家族を養ってるんだよ!!だから日曜日だけは、たまに父親やってます。

 ばれてんだぜ。

 私は悲しくなってきて、ジョンの事を考えていた。

 彼は子育てをする為に仕事をその間しなかった。

 ずっと子供のそばにいて子育てをした。父親だった。

 

 我々には不可能な事なのだろうか?

 父親になったという自覚、その意識レベルの違いだけの話しだと私は思う。

 あばよっ


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以下、あとがきです。

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