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土佐山アカデミーの定点観測 vol.04〜 本当に「デリバリー」が必要なもの

〜東京在住のサポートメンバー髙木健太さんに、都会から見る土佐山や土佐山アカデミーについて書いてもらっています〜

緊急事態宣言が延長した。

日々、最前線で戦い抜いて下さってる医療関係者の方々、インフラを支えてくださっている方々からはもちろん、他にも様々なところから、重いため息が聞こえてくる。

特に飲食店。知人にも何人かいるが、ゴールとルールがどんどん変更されるマラソンを走っているような疲労感が滲み出ている。
レストランとは、英語で「回復」を意味する「restore(レストアー)」からきており、「元気にさせる飲食物」「滋養となる飲食物」を意味するようになり、「回復させる所」を意味する「restaurant」という語が生まれた、という説がある。このままではそのレストラン自体の回復が難しくなってしまいそうだ。

一年前。知恵を凝らしてテイクアウトやデリバリーを始めた勢いは、当たり前になってきたというのもあるだろうけれども、感じづらい。それほどまでに追い詰められている印象がある。

そんな業界の中でも、「幸せの分母を増やす」をモットーに注目を集めているシェフがいる。東京・代々木上原の「sio」というフレンチレストランの鳥羽シェフだ。サッカー選手から教師を経て32歳で料理の世界へ、という経歴ももちろん、その斬新な発想には各種メディアで触れることができる。

自粛が始まった当初は、いち早くデリバリーや持ち帰りメニューの開発に取り組んだのはもちろん、お店のレシピを家庭用にアレンジして公開していた。これは、さまざまなシェフや料理関係者も行っていたが、家庭では難しいものも正直多かったように思う。

しかし、このシェフは違った。ミシュラン1つ星のお店のオーナーシェフにも関わらず、マクドナルドや松屋と言ったチェーン店はもちろん、コンビニの惣菜などをベタ褒めし、それらの簡単な組み合わせでおうち時間を楽しもう、という発信をし続けているのだ。

例えば松屋の牛丼。
これに、高知の名産でもあるミョウガ。それに万能ネギを細かく切って、刻み海苔とともに載せる。ポイントはワサビをたっぷり添えること。これに最後、お茶をかけて「ひつまぶし」の要領で食べる。「幸せの分母を増やす」という太いモットーが根底にあるからだろう。損得を、というよりはとにかく食で幸せな人を増やすため、発想やノウハウの出し惜しみを一切しない。

先日、土佐山アカデミーでもJALの方々との取り組みで、テレビ会議システムを活用したオンラインイベントを企画・開催した。イベントにご応募いただいた方に土佐山から、たけのこ・うど・たらの芽・クレソン生姜・大根・セロリ・のらぼう菜など旬の食材をお届けし、調理したものを共有しながらごはんを一緒に食べる、と言った内容だ。

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この一年で当たり前になった地域と都市、生産者と生活者を結ぶイベントではあるけれど、注目したいのは事後の参加者のコメントだ。

「今日も多摩川の土手で野草の姫筍を採ってきました!!軽く茹ででアクぬきをして、今日はちくわの穴にさして、ちくわ・タケノコ!!
筍はやっぱり春ですね。そして土佐山から送って頂いた筍が懐かしいです」

土佐山の食材だけがデリバリーされたわけではなかった、と思った。自分で手足を動かして食材を手に入れ、調理するという「工夫」を届けられたのではないか?と。そう、本当にデリバリーが必要なのは「工夫という武器」なのだと思う。sioが発信する「工夫」が家の食卓を楽しませ、許し、勇気づけてくれているのはそこにある。

面白がれる状況ではない中で、限られた環境の中で、どうやってその逆境に立ち向かい瞬間を有意義なものにするか?一食を食事として完結させるのではなく、経験としてどう残していくか。モノに加えて、その姿勢までお届けすることができたなら。受け取った人は、ずっとファンでいてくれる。正々堂々、気兼ねなく外に出られるようになったら、必ずそのお店に、その土地に行こう、そう思ってもらえるはずだ。

この取り組みの参加者のコメントからは、そう感じることができた。

一律、お酒が悪者とされ、人々が蛾であるかのような扱いを受けている都心部。(お酒が文化として定着している高知がそうならないことを切に願うばかりです)その中において、町田市のあるバーは純情喫茶、として108種類のクリームソーダを出して話題になっている。

「さくら」「時雨」「悠久」…その辺りはまだ分かる。が、何せ108もあるので「便座カバー」「青き衣を見に纏い金色の野に振り立つ俺ペガサス」など、産みの苦しみと悪ふざけのちょうど良いブレンドが味わえる名前も多々あり、画像を見ているだけでも楽しくなる。ちなみに108という数字は、除夜の鐘のように、108回なり終えたらコロナが収束しますように、という願いがかけられているらしい。

ゴールデンウィーク中、オフィスのようになっているスターバックスで、吉冨さんとオンラインで話していたらこう言っていたた。

「うちでしか飲めないのであれば、例えば飲んだことないお酒を飲んで利酒師の資格をとってみるとかしたらいいのにね。どこにも行けないのなら、47都道府県からおつまみを取り寄せておつまみ全国行脚するとか」「しっぽり、とか、しんみり、というお酒についてネガティブな印象をもたらす言葉を考え直してみるのもいいよね。じっくり飲む、とかさ」

条件反射で面白がる力。工夫する姿勢。これが、土佐山に鍛えられた力なのだろう。こういう考え方のベースをどうやって届けられるか?土佐山アカデミーは、ずっとそんなことを考えている。

オンラインの状況は当分続きそうだ。デリバリーできるもの、はまだまだ工夫できる、いやする必要があるだろう。
「さぁどうする?」土佐山アカデミーが掲げるメッセージは、もともと人の頭の中にある、工夫のエンジンをかける鍵となる言葉だと思っている。土佐山から、どうやって届けられるだろう。僕らはそこから何を受け取り、行動に移すことができるだろう。

そう思っていたところに、面白がるコミュニケーションのオンラインイベントの告知が届いた。
みなさん、ぜひ一緒に、鍵を回して、エンジンをかけましょう。

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【認知心理学者と考えるあそびのコミュニケーション】 
第1回 5/15(土)18:00-20:00
第2回 6/18(金)19:00-21:00
第3回 7/10(土)18:00-20:00
参加費無料


ごきげんでおなじみ 高木健太
土佐山アカデミー東京代表
プランナー/コピーライター/コーチ

日本大学芸術学部卒業後、設計デザイン事務所、飲食業などを経て広告代理店のクリエイティブ・プランナーに。2019年企画屋として独立。身近な人、モノ、コトからごきげんにできるように企画・コミュニケーションの力を使いたいと考えています。「なごやかに、すこやかに」が信条。趣味と生きがいは余興。4歳児の父。

●ごきげんでおなじみ https://gokigen-inc.jp/

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