FXはチャートパターンの暗記では勝てない?文脈を加味したパターン暗記の重要性とは
FXはチャートパターンの暗記では勝てないとよく言われます。
確かにダブルボトムやダブルトップといったチャートパターンというのは機能する時もあれば機能しない時もあってイマイチ使い方に困るということになりがちです。
そうなると今度はマルチタイムフレーム分析や環境認識といった複雑な要素と向き合わなければならなくなって来るわけです。
マルチタイムフレーム分析や環境認識については、どうしてもアレルギーを起こしてしまう人が多いと思います。
確かにFXにおいて「勝つべくして勝つ」という境地にたどり着くには長期足の値動きを把握して現在値がどういうポジションにあるのか、ということを把握するマルチタイムフレーム分析や環境認識は必要になってきます。
ただ、私が一つ言いたいのは
「相場を理解することは相場の全ての値動きを把握することではない」
ということです。
これは逆に言うと
「分からない値動きに無理やり理由付けして分かった気になってはいけない」
ということでもあります。
つまり、自分には分からない値動きがあることを認識する謙虚さを持つ必要があるということです。
要するにいくら詳細な相場分析をしたとしても、いくら熟練のトレーダーであってもすべての値動きを把握できるわけではありません。
分からない部分を捨てて分かる部分だけを切り取っていくのがFXというゲームなのです。
なので、マルチタイムフレーム分析や環境認識といってもそれほど難しく考えて身構える必要はないということです。
それに、FXはチャートパターンの暗記では勝てないとはいってもある程度のパターン暗記であることには変わりません。
人間は”公式の暗記”に頼ってズルをする生き物
チャートパターンの暗記では勝てないという話の前に、そもそも人間というのは何かの「公式」に頼ってステレオタイプ的に物事を処理しようとする生き物です。
例えば
「男だから理屈っぽい」
「女だから感情的」
こういうステレオタイプな男性像・女性像に当てはめて考えようとする人間って一定数いますよね。
実際には感情的な男性や理屈っぽい女性がいるのですが、仮にそういう人間を見たとしても
「男なのに女みたいに感情的」
「女なのに男みたいに理屈っぽい」
と、”それはあくまでも例外”とみなして
頑なにその公式の正しさを信じ続けます。
人間のこういう思考は、物事を考えるのが面倒な時に横着しようとする時に現れます。
簡単に答えが出る(と思われる)ものに頼って、それ以上深く考えることに自分の脳のリソースを割かないようにするわけです。
私が思うに、チャートパターンの暗記に頼ろうとするのは根本的にはこういうステレオタイプに頼って答えを出そうとする思考回路と同じだと思います。
ただ、私はこういうズルをしてショートカットしようとする性質というのは人間全般にあって避けられない本質的な部分でもあると思います。
チャートパターンに固執すると下位足をひたすら見ることになる
このステレオタイプ思考をチャートパターン暗記の話に当てはめると、チャートパターンの形そのもの”に固執するという問題が出てきてしまいます。
つまり、教科書通りの形をした綺麗なダブルボトムやダブルトップを求め過ぎるのです。
教科書的な知識が先行して頭でっかちになると
「ダブルボトムの定義とは?」
「レンジの定義とは?」
「トレンドの定義とは?」
のような”定義思考”に縛られることになります。
現実的には教科書通りの綺麗なチャートパターンが相場に現れるということはほとんどなく、大抵がいびつな形をしています。
というよりは、5分足や15分足といった細かい下位足チャートを見ているとその中でだけひたすらダブルボトムやダブルトップを探すことになり、1時間足以上の比較的規模の大きいチャートパターンの出現を見逃してしまうというのが正しい表現です。
下位足よりも上位足の流れの方が強いというのはFXを少し勉強すると耳が痛くなるほど聞かされるものですが、これはその通りで下位足よりも上位足の流れを優先して考える必要が常にあります。
ただ、上位足というのは値動きを構成する時間が長い分その中で上下動を繰り返すことで形が歪に見えてダブルボトムやダブルトップの出現に気付きにくく、逆に下位足というのは値動きを構成する時間が短いので教科書通りのチャートパターンが出現しやすいということでもあります。
5分足や15分足のダブルトップやダブルボトムをアテにしてエントリーしてもそれほど勝てないというのは言わずもがなです。
例えばこの15分足チャートのオレンジ色の丸で囲った部分にはダブルボトムやダブルトップがいくつも出現していますが、仮に全部エントリーしたとしてもせいぜいプラマイ0くらいでしょう。
しかし、このチャートでは気づきにくい大きな形のダブルボトムでは大きく伸びています。
FXは”文脈を加味したパターン暗記”であるということ
FXというのはパターン暗記であることには違いないのですが、それは単にチャートパターンの暗記だけでは足りなくて
「こういう流れの中でこういうパターンが出たらこうする」
という、ある程度の文脈を加味したパターン暗記をする必要があり、単なるチャートパターン暗記では勝てない本質的な理由はここにあります。
例えば、ダブルボトムやダブルトップといった反転チャートパターンであれば”ここぞという節目のポイント”に現れた時にその効果を発揮します。
・前回大きく弾かれたところに再び近づいてきた時
・長期的な節目を少し飛び越えてダマシのような形で出た時
・押し目買いor戻り売りのポイントで出た時
などですね。
これは私自身が実際のトレードにおいて使っているダブルボトム・ダブルトップのパターンそのものです。
逆に言うと、上記の条件に当たらない場所で出たダブルボトムやダブルトップはあまり信頼できないものとしてスルーしてしまいます。
仮にそこから反転したとしても、それは自分のパターン暗記の選択肢になく再現性が低いものとして完全に無視してしまうわけです。
他にも私の”パターン暗記”のエントリーを挙げるとするなら
・押し目買いor戻り売りのポイントで1時間足ピンバーが確定してそれを抜けた時
・日足レベル以上の長期的な節目でピンバーが出た時
・1時間足以上の足で確認できるダブルボトムが出てそのネックライン上でレンジを形成してブレイクした時
といった具合です。
単なるチャートパターンの暗記という短絡的なものではなくある程度相場の流れ、文脈を加味したものではあるものの「パターン暗記」であることには変わりません。
結局FXというのはパターン暗記した選択肢をいくつ持てるかということがカギになってくるゲームです。
その選択肢を多く持つことでエントリーチャンスが増えるわけですが、逆に言うと
「自分が知ってるパターンではないところでは静観する」
という我慢・消去法的な思考が求められます。
ひたすら自分の知ってるパターンだけをやっていれば大きく負けることはそうそうないのですが、現実的には人間というのはその「我慢」が難しいものです。
自分が知っているパターンが出現するまで待つということは、当然そのパターン通りにならずにトレード出来ない日もあるということです。
そういう時に大きく伸びるのを見て、自分の知っているパターンではないのに「待て」が出来ずに飛び乗ってお手付きエントリーして負けてしまうのです。
仮に大きく伸びたとしてもそれは自分の選択肢の中には無く再現性の低いものなのですから、それは仕方のないことと割り切るしかありません。
我慢するにはパターン暗記の選択肢を多く持つこと
自分の選択肢にないパターン以外のところで手を出さずに我慢するために必要なのは精神的な忍耐強さというよりも
「いかに多くの選択肢を持っているか」
ということに尽きます。
例えば、自分の想定していないところで大きく伸びてしまったとしても
「伸びきった後にこうなったらこうする」
という選択肢があれば目の前のチャンスをみすみす逃してしまったとしても”次のチャンスが来ること”を知っているので待つことが出来るということです。
例えば以下のような値動きがあったとします。
上昇トレンドの最中に何かの節目となるライン(紫の水平線)を上抜けたところですね。
こういう時にブレイクで入ってしまう人ってかなり多いと思いますが、こういう長期の節目を抜けたかどうかの判断というのは結構難しく、大抵が失敗に終わるでしょう。
こういうエントリーをしてしまう思考の根本には
「もしこのまま上に行ってしまったらチャンスを逃してしまう!」
という焦りがあります。
つまり「抜けた後でこうなったらこうする」という選択肢を持っていないから抜け期待のエントリーに頼るしかなくなるのです。
私であればこういうブレイクのような形で大きく伸びたとしてもそこですぐ入るということはあまりなく、
①大きく伸びて戻ってきたところを押し目買い・戻り売り
②長期的な節目に到達して抜けた見せかけてダマシに終わったところを逆張り
という選択肢があるので、その大きく伸びた部分を取れなかったとしても次のチャンスに備えることが出来ます。
単なるチャートパターンの暗記ではなく、ある程度文脈を加味したパターン暗記の選択肢をいくつも持つことで「我慢すること」は出来るようになるはずです。
ちなみに「押し目買い」と「ブレイク失敗狙いの逆張り」についてはどちらも別記事にて詳細を書いていますので、そちらも参考にしてみてください。
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