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超保守的・縦割り組織でのも上手くいったインターナルブランディング

6月24日(木) に第4回ブランディング事例共有会を開催しました。発表者を紹介します。発表者はブランドコミュニケーションデザインの平野朋子さんです。

日本三大桜のひとつ「淡墨桜」や富有柿、ホタルなどで知られる岐阜県南西部にある本巣市ではかねてよりマスコットキャラクター(ゆるキャラ)「もとまる」などを通して市の魅力をアピールしてきたが、より強力なブランドを形成するべくブランドコンセプトから同市の価値を形成していくために(一財)ブランド・マネージャー認定協会のエキスパートトレーナーでもある平野氏に依頼し、長期にわたるインターナルブランディングに着手した。

多様なメンバーによる「勉強会」としてスタート

本プロジェクトは2018年、本巣市役所内の「勉強会」というかたちでスタート。参加メンバーには、市役所における部署や年齢(主に20代~40代)、男性・女性、障害の有無などを問わず、「ブランディングに意欲的」であることを条件に意図的に多様性のあるメンバーを募った。その背景には将来的な横展開を見据えた平野氏と市川氏(市役所勤務)の狙いがあった。
ブランド・マネージャー認定協会が定める型である「ブランド構築の8ステップ」に則ってスタートした勉強会と定例会は月1回行われ、ステップ4(「独自性の発見」)までが1年目で完了した。

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プロジェクトが2年目を迎えた2019年、市役所内のメンバーだけでは行き詰まりを感じたことから、本巣市在住の主婦の方や「幸福の国ランキング1位」であるフィンランドの専門家など外部のメンバーを招いて意見を聴取。そこで得られた知見をもとに、ブランド・アイデンティティを再作成。1年目で終えていた3C分析までステップバックして8ステップを再度行った。
ブランディングは20人のメンバーを3つのチームに分けて行ったが、3つのチームがそれぞれ作り上げたブランド・アイデンティティを1つに統合するのに苦労した。
人数は20人いたので、3チームにわかれて取り組んだ。たいへんだったのは3チームのそれぞれできあがったBIを1つに統合するのがなかなか大変だったがなんとか8ステップを完遂。市長にプレゼンしたが、その時点ではまだブランディング専門部署を立ち上げることへのGOサインはもらえなかった。

住人視点に立ち返り、ブランド・アイデンティティが完成

そして3年目の2020年、それまで勉強会だったものがプロジェクトへ。
当初は、外部から移住者を募るという方向性で、「20代・30代の子育て女性」などペルソナを細かく設定してきたが、改めてすでに本巣市で暮す市民の視点を入れていくと、年齢や性別にとらわれることなく「本巣の強みを生かしたら、こういう価値観の人がずっと喜びを持ちながら暮らし続けられるんじゃないか?」という視点が強く入ってきた。そこから、性別、年齢にとらわれることなく多様な価値観を持った人々に本巣で暮してほしいう考えになった。
そこでこれまで2年間、役所内メンバー中心に行っていたものを“市民共同”という形へモデルチェンジ。影響力をありそうな市民のブランドアンバサダーとして巻き込んで、ブランド・アイデンティティの策定まで行い、2021年3月に市役所のホームページ上でリリースした。
コピーの開発に際しては、「自給自足」を文字って「自給持続」という言葉を作ったり、韻を踏むなど役所についてまわるお堅いイメージを払しょくするよう心掛けた。以下が完成したブランド・アイデンティティやキャッチコピー。

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▼策定したブランド・アイデンティティ
暮らしを自給し、暮らすよろこびが持続するまち

▼BIを伝搬させるためのキャッチコピーとサブコピー
「よろこびぞくぞく、自給自足」
「自らの手で暮しをつくり、
生きるよろこび、暮すよろこびが続くまち、本巣。」

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平野氏が考える本インターナルブランディングの成功要因は3つ

①勉強会からスタートさせた
②3年かけてステップバイステップで進めていった
③市民を含め徐々に人を巻き込んでいった

3年という期間は民間企業の感覚だと遅く感じるかもしれないが、役所という組織の性質上、必要にして避けられない時間だった。そこで最初は市役所内の勉強会からスタートさせて、徐々にそれを外に広げて、市民を巻き込んで進めていった。この方法がよかったのではないかと思う。
ブランディングにおいては、内部浸透と合意形成が大きなハードルとして立ちはだかるケースが多いと思うが、本件のように足元を固めつつ多くの人を巻き込んでいくことはそのハードルを突破する鍵になるのではないか。

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成功のカギは、人を巻き込む「ゆるさとフラットな関係性」

さまざまな人と仕事をする際に、フラットな関係性がとても重要。市役所の中でもそうだが、対市民にとっても同じ視点で話す。また、お互いをニックネームで呼び合うようなゆるさがあると、人を巻き込みやすい。このことを今回の取り組みで実感した。
4年目となる今年になって、2年目にはスルーされたブランド戦略を実行しやすい体制へついに移行。
また、ブランディングを進めていく中で、当初は「いかに人を呼び込むか?」というシティセールス的な発想で数値目標にばかり目が行っていたが、ぐっと視点が内側へ変化した。真の意味で持続可能なまちづくりを考えたときにすでに本巣市に関わりのある人だった。これに気づけたことが大きなターニングポイントだった。
市民目線でブランド・アイデンティティに着地できたというのも非常によかった。ブランド・アイデンティティが定まったことにより、たとえば広報誌の誌面で合ったり、SNSの発信する際のコンテンツにブランディングの要素を取り入れるなどにも一貫性が生まれつつある。

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平野さん(ももん)。発表ありがとうございました。
持続可能なまちづくりに向けて、保守的な縦割りの行政組織で、粘り強く取り組まれたプロセスには、地域ブランディングのノウハウがたっぷり詰まっていました。ブランド・アイデンティティ「よろこび、ぞくぞく 自給持続」は、3年間関わってきた皆さまの想いの結晶ですね。


※この内容は、第4回ブランディング事例共有会の発表の一部をまとめたものです。ブランディング事例共有会では、チャレンジし、試行錯誤し、奮闘している実践事例の発表より、このプロセスから受け取る気づきやアイデアはもとより、元気と勇気をもらえます。


ブランディング事例共有会のアーカイブ映像は、
会員制コンテンツサイト「Me:iku」にて公開しています。

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