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イノベーション&ブランディングで生み出した「いちごの庭プロジェクト」

2021年8月26日に第5回ブランディング事例共有会の2人目の発表者を紹介します。
発表者はシュンビン株式会社 代表取締役 津村元英さんです。
津村さんは、ブランド・マネージャー認定協会のトレーナーでもあります。

シュンビンは京都市伏見区において「中小企業の企画部を代行し、顧客の売上を上げる」ことをミッションに掲げるブランディング企業。ブランド戦略の立案や新規事業のコンサルティング~Webなどのデザイン・運用、空間建築デザイン、古民家再生、施工まで幅広い事業を手掛ける。

今でこそ幅広い業務を請け負うシュンビンだが、創業時の本業は「一升瓶の回収洗浄」。しかし、時代の移り変わりにと共にニーズが減少しいつしか廃業の危機に。そこで2001年、生き残るための戦略として、現在の業態につながる「瓶のデザインや企画の代行」まで手掛けるようになった。「自らも苦労が身に染みているので、顧客の悩みにも寄りそえるのが強み」と、プレゼンターの小林代表と津村氏は語る。

京都の観光いちご農園「おさぜん農園」の取り組み

本件のクライアントは京都府八幡市において、関西最大級の観光いちご農園を経営する株式会社おさぜん農園。
当初の相談内容は「観光農園における物販商品のデザインを統一したい」というものだったが、シュンビンでは「単にデザインを一新するのではなく、企業アイデンティティを固めてからデザインをリニューアルしてはいかがでしょうか?」と提案。それを受けて、クライアントの社長と幹部社員、シュンビンメンバーの10数人がチームとなり、15時間という比較短時間で8ステップのブランディングがスタートした。そこで、異業種参入もあるほど活況の観光いちご農園業におけるクライアントの強みを整理したところ、次の3つが浮かび上がった。

①農家としての歴史と実績
…クライアントは江戸時代から続く伝統ある農家

②いちごの品質が良い
…加工したスイーツなどを売る競合も多いが、クライアントは加工しない素のいちご一筋

③参加メンバーが若い
…クライアントは社長も社員も比較的年齢が若く、SNSやデザインに対するリテラシー、モチベーション、チャレンジ精神も強い

また、一方で次のような悩みと疑問もあった
悩み → いちご専業でいいのか? いちご狩りは12月~5月までしかできないため、半年は売り上げがゼロ

なぜ“いちご”なのか? → いちごを食べる人はみんな笑顔になる。その笑顔が見たい

このような現状を整理したうえで、次のようなブランド・アイデンティティ、ブランドプロミス、ブランド要素をアウトプット。そこから、スタッフのユニフォームやWebサイト、商品デザイン、売店のデザインといったブランド要素を作成し、ブランド力を強化した。

●ブランド・アイデンティティ=特別な笑顔を提供するいちご農家
●ブランドプロミス=いちごのあらゆる可能性を追究しよう!
●ロゴデザイン=3つの赤い丸でいちごと広がる会話をイメージ

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コロナ禍に伴う売上減を受けて、第2フェーズへ

このようにブランド要素を整備したものの、世はコロナ禍真っただ中。ステイホームの影響で売上は2021年の4~5月期で昨年対比5分の1まで減少。「物販を強化したとしても、このままではまずい」となり、新規事業の立ち上げを模索。アイデア出しからスタートした。
そこから生まれたのが、好きな場所でいちご狩りを楽しめる、これまでにないいちご狩り「いちごの庭プロジェクト」。
ここからブランディングの第2フェーズ(事業ブランディング)がスタートした。再び第1フェーズと同じメンバーが集まって、8ステップを遂行。そこで議論になったのが、「BtoBか?BtoCか?」という問題。おさぜん農園はこれまで消費者を対象としたBtoCビジネスの経験しかなかったので不安があったものの、シュンビンではより可能性の感じられるBtoBをプッシュ。BtoBの業態での運用が決定すると同時に、おさぜん農園単独ではなく、他の農家と共有できるプロジェクトにすることも決まった。先に定めたブランド・アイデンティティやブランドプロミスを達成するためには、単独ではなく同業他社と一緒に行う方が正しいと考えた。
また、ペルソナとブランド・アイデンティティを次のように定義した。

●ペルソナ=俳優の岡田准一さん。
39歳。ホテルの企画マネージャーで、成果を求められている。

●ブランド・アイデンティティ=いちご体験をデザインする

●提供したい価値=特別感、驚き、美しさ

●ロゴマーク:フェンスをモチーフにした

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あべのハルカス屋上で開催。売上も19年比で2倍に

このようにステップバイステップで構築していった「いちごの庭プロジェクト」だったが、初動は低調だったものの、最終的にはあべのハルカス屋上での開催が決定。屋上にビニールテントを張り、いちご摘みができるようにした。施工前にデザインを見せられるのがシュンビンの強みでもある。
マスコミにも大きく取り上げられるなど、あべのハルカスもオープン以来の反響があり、土日だけでなく平日も予約で満席。途中、新型コロナウイルスの拡大に伴う緊急事態宣言によりあべのハルカス自体が閉じてしまったものの、2019年との比較で21年は売上2倍まで伸長した。

今回のブランディングでよかった点
1.ブランディングが2つできた(コーポレート、プロジェクト)
2.ブランド・アイデンティティに基づき、一貫した展開ができた
3.検討会で信頼関係が深まった


津村さん。発表ありがとうございました。
いちご農園のコーポレートブランディングを皮切りに、1年後は新規事業ブランディングへと取り組んでいく内容でした。新たなビジネスモデルの導入は、対象が個人から法人に変更することに加え、まだ成果が出ない初期には、コンセプトを変えたくなるような出来事もありました。
「本当にブランディングで成果を出せるのか?」と疑いたくなる時期でも、自分を信じ続け乗り越え、コロナ前より売上2倍以上という成果へと繋がるまでとなりました。

※この内容は、第5回ブランディング事例共有会の発表の一部をまとめたものです。ブランディング事例共有会では、チャレンジし、試行錯誤し、奮闘している実践事例の発表より、このプロセスから受け取る気づきやアイデアはもとより、元気と勇気をもらえます。

ブランディング事例共有会のアーカイブ映像は、会員制コンテンツサイト「Me:iku」にて公開しています。

【登録無料】ブランディングコンテンツが満載!
https://www.brand-mgr.org/meiku_lp/


また、久しぶりにブランディング事例共有会を開催します。
次回の第6回の開催が決定しました。
4月28日(木) 15時~にて開催ですので、お知り合いの方をお誘い合わせの上、ご参加ください。※参加費無料

■第6回 ブランディング事例共有会 ※参加費無料
https://form.k3r.jp/brand_manager/kyoyukai06

ぜひ、ご参加ください。お目にかかれれば、うれしいです!


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