愛猫ポチの5回目の命日

昨日町田康さんのバンド「汝、我が民に非ズ」のライブを観にいって、期せずして太宰治の話をMCでされて、神妙に聞き入った。太宰は4回の自殺未遂、そして5度目でその思いを果たしたのだそうだ。そんな話をされたのは翌日の今日が桜桃忌だったからだろうか。夏が来れば思い出すのは、僕にとってあの夏から、はるかな尾瀬ではなくポチとの苦しく長い1週間のことになった。梅雨の重たい空気、それとは対照的な鮮やかな紫陽花、6月はこれからもきっとずっとそういう季節だ。

2014年、五年前の6月19日のお昼に「もうなんでも、可能性のあること、やれることを全部やってください」と先生に泣きついてポチを動物病院に預け、その足で深大寺に当病平癒の護摩炊きをしてもらった。帰り道で三鷹通りを車で走っていて今日が桜桃忌だということに気づき、ほとんど衝動的に太宰のお墓に立ち寄ったことを忘れない。自死を選んだ太宰に手を合わせながら、僕は多分「猫に九生あり」という諺と同様に、その太宰のしぶとさみたいなものに願をかけたんだと思う。

僕のiPhoneには今でも5年前の6月の記録写真がすべて残っていて今日も朝からそれを眺めながら、「しんどかったねえポチ」と壁に貼った写真に話しかけるとやっぱりじわっとくるものがある。ポチ実はなぜか今日に限ってあんまり騒がず今はベットの下で寝ている。5年前も今日みたいな雨の降らない過ごしやすい日だった。



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