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猫の看病日記(2001-2002)

今から13年前、2001年11月から2002年2月までの、猫のポチがやってきてから3ヶ月間の病院通いについての回顧録。猫のいる暮らしの始まりの季節。(本文約8,000字)


猫の看病日記(2001~2002)

【イントロダクション】

写真家の斎門富士男氏の愛猫ポチ(三毛猫なので女の子だ)を譲り受けることになった僕は1週間でペット可のマンションを東京郊外に見つけて引っ越し、数日かけて猫を迎える準備(壁に段々になった棚を作り付けたり猫のトイレを買ったり食事用のトレイを用意したり)の後、2001年11月26日に静岡は伊東の斎門邸に車でポチを迎えにいった。

ポチは僕を憶えていたのか(憶えてないと思うが)怯えもせず膝に乗ってきたりする。前足を怪我してるみたいで歩きづらそうだった。連れて帰る途中で熱海辺りで時期外れの花火があがっていた。

初めてうちに入ったポチはうってかわってそわそわ落ち着かなくなり、ケージのなかに入って斎門さんちで慣れ親しんだバスタオルのそばで大きな目を光らせてキョロキョロしている。手の怪我が気になって、家に来て2日目の11月27日に動物病院に連れて行った。

【2001年11月27日】

ポチはたくさんの猫と一緒に飼われてたり、葉山のころは好き勝手に外に出ることもできたはずなので健康状態も調べておいたほうがいいと思っていた。だけども実際病院で見てもらうと手の怪我は思ったよりもかなり悪くて、手の甲から手のひらまで傷が貫通している。肉球のあたりがひどく膿んでいて異臭を放ち、触ろうとすると体を力ませて鳴いたりする。

僕が動物病院に来たのは物心ついてからは初めてだったのだけど、飼い主も積極的に治療に参加しなければならなくて、逃げようとする猫をがっちり捕まえて爪で引っかかれながらも押さえつけたりしないといけない。結局手のひらの膿を摘出するためには僕の手助けなんかではままならなくて、ポチは別の部屋に連れていかれて、麻酔なしで痛い思いをしたのだと思う。

僕は待合室で胸をドキドキさせながら傷の深刻さにショックを隠せなくて煙草を何本も吸った。戻ってきたポチは手に包帯を巻かれ気の抜けたような顔でぐったりしていて、獣医さんも気の休まるようなことは言ってくれなかった。とても深い傷なので完治に時間がかかること、猫同士の喧嘩傷なら伝染病の可能性が高いこと、自宅での消毒など根気のいる治療について。その日からポチは傷を舐めないようにカラーを付けることになった。いわゆるエリザベスカラー。食事以外は絶対外さないこと。1日2回の抗生剤服用、手の傷の消毒、目薬。ついでに首筋にノミ駆除のためのフロントラインという薬をつけてもらった。

診察料 ¥1,500

薬価代 ¥3,720

内訳

飲み薬¥80×14(1週間分)

飲み薬¥200

消毒用塗り薬¥400

点眼薬¥2,000

メディカルテープ ¥500

傷の処置代 ¥1,500

駆虫代 ¥1,200

===========計 ¥8,840

なんだか僕もポチもぐったりして帰ってきた。看病生活の始まり。それでもポチはよくドライフードを食べてくれるので少し安心した。カラーをつけてエリザベス女王のようなポチは心地悪そうで、後ろずさったりしている。

錠剤を飲ませるのは至難の技だった。ポチの小さな口に指を突っ込むのだってはばかられるのに一回「うげっ」と吐き出した相手にもう一回トライするのは酷な話だ。さらに前足の包帯を外し体を押さえつけて、手の傷の膿を綿棒でかき出し、軟膏状の消毒をたっぷり塗ってまたテーピングと包帯である。猫は手の使い方が器用なのできつく巻き付けてもすぐ外してしまう。

ノミは全くいなくなった。首の下、胸のあたりに毛が抜けてかさぶたになっている部分が気になる。この日から2日間身動きの不自由なポチのために寝室ではなくリビングで寝ることにする。

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