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この土地に生きるということ

2012年に移住して7年と少したった。
ずっとこの土地のことが好きで好きでたまらなくて、もう出会ってから30年にもなる。でも、そのうちのどれだけの時間を無駄に過ごしてきたのだろうかと最近後悔している。僕はこの土地の何を見てきたのだろうかと。

雨上がりの夕方。僕は丘の上にいた。いつもなら東を向いて虹を探していただろう。もちろん虹も出ていたし、それを期待していた自分もいる。でも、この日は西を向いていた。その昔、虹の写真は自然現象だから写真的価値はない、というニュアンスのことを言われたことがある。僕の師匠、高橋真澄はその世界をフィルム時代から30年以上続けてきた先駆者だ。彼の写真を見ればわかるだろう。虹の写真はただの現象写真じゃないということが。僕はそんな彼に憧れて、ずっとレインボーハンターを心がけてきた。

虹の写真が当たり前のようになり、多くのカメラマンがそれを追うようになった。虹は狙って撮るもの。その概念が根付いてきたのだろう。となれば、僕の興味は次へと向かう。まだ誰も気づいていない何か。人が見ているものの裏側を探したくなった。

ブラウマンたちとの出会いも大きい。彼らの生き様を見ていると、風景に撮らされていた自分がなんて小さいのかに気付かされるのだ。僕はいま農夫と正面から向き合っている。それはドキュメンタリーとして、ではなくこの地の風景として、だ。

昨日、友人の写真家と遅くまで語った。お互いにどこを目指し、どんな写真家になっていくのかを、酒も飲まずに語り合った。意識を共有できる友がいるのは幸せだ。目指すところは別でも、心の根底はつながっている。

僕には今大きな目標がある。いや、目標ができた。美瑛の写真家という肩書きは自分を大きくしてくれたし、幸せな時間をたくさんくれた。美瑛というイメージに助けられ、なんとかこの7年を乗り越えてきたんだ。だから、僕はこれからその恩返しをしていく。もちろん写真という手段を使って、だ。ブラウマンたちの生き様を追うという表面的なことだけではない。もっと根源的なところを、写真という手段を使って探っていくつもりだ。


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