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ここに住みたいと魂が共鳴する場所

10日前のこと。居てもたっても居られず、鳥取行きの始発バスに飛び乗った。目指すは、Rock beauty 岩美。
海辺の山辺の宿(このNoteのタイトルでもある架空の場)を作る場所はここなのではないか、との唐突ながら確信に満ちた思いとともに。

岩美出身の作家・尾崎翠さんについて書いた次の日のこと。
そのコラムはこちらなので、よかったら合わせて読んでくださったら嬉しい。「五官と第六感を超えた感覚・第七官 尾崎翠に出会う」
https://note.mu/toshikokamada/n/n866d6c0f096b

その小旅行から戻り、あの日の心の昂まりを、今日こうして言葉にできるまでに10日かかった。
あの場所と私が、共鳴しあってイメージばかりが浮かんでは消え、浮かんでは消え、うまく言葉にすることができなかったからだ。


鳥取駅から東へ、鳥取砂丘を横に見ながら海岸線へ入り、心に描き続けていた山陰海岸のホンモノが目の前に広がった。
ここだ。やはりここだ。
この海の色、この空の色、この砂の色、この地形、この木々。
いくつかの入り江や峠をこえて、兵庫県との県境近い、東浜の浜辺に着いた。

「私、ここに住むに違いない。」心の中で独り言。

JR東浜駅は無人駅だが、高級特急瑞風が停車し、この絶景を前に食事をするためのレストランができている。
それだけが、新しい建物。それ以外は、50年前とほとんど変わらないかのような浜の佇まい。

週末の午後だが、人気のない浜沿いを集落を感じながら歩いて行く。
思い描いていた映像と同じ色彩に、波の音と風のベクトルが重なり、空間となる。
なぜこんなに高揚するのか、不思議な力がみなぎってくる。
自分がいるべきところにいるというような。

こういう時は、面白いように出会いがある。
次から次へと助けてくれる方に出会う。縁。

帰り道、念願の尾崎翠記念ギャラリーも訪ね、岩井温泉にも立ち寄った。

生まれ育った実家から車で30分のこの浜に、還暦近くなって住みたいと思うなんて、想像したことがなかったが、まるで鮭が母川に戻ってくるようだなと思っている。鮭は、生まれた川の匂いを嗅ぎ分けるらしいが、私の何かの知覚がここを感知したのだろう。

海辺の山辺の宿というタイトルで、どこへ着地するのかわからないまま、ぼんやりと書き始めて9ヶ月。
急に、海辺の山辺の宿が、実際に三次元に現れる感じがしてきた。


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