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小さな収穫

 探していた作品をついに見つけました。

 きっかけは図書館。墨田区ゆかりの作家の中に幸田文さんがいます。そして墨田区立ひきふね図書館には彼女の手書き原稿が保管されています。以前に図書館が保管している歴史資料を見る機会があり、幸田文さんの手書き原稿もそこで見せてもらいました。しなやかな筆跡でした。

 図書館見学のごく短い時間に原稿の一部分を見ただけです。幸田文さんのどの作品なのか分かりません。ですが、あの筆跡を思い出しながら作品を読んでみたい。タイトルも分からず不確かな記憶を頼りに作品を探していました。見つけるまで2年が経過していました。

 作品は『幸田文全集 別巻』(岩波書店,2003)に収められている『雨見物』でした。1930年の伊豆(下賀茂)の思い出話。いくつかの思い出が語られる中、自らの行動に自己中心的なものを見つけて心を濡らすエピソード。娘と遊んでいるようで、実は娘を暇つぶしのネタにしている自分に気付く話。

 記憶にあるなめらかな筆跡から、彼女は以前から思っていたことを吐露するように書いたのではないかと。作品の最後の一文で、立派に成長した娘の今を述べています。そこに娘への感謝と安堵を感じます。それはつまり、墨田区で伊豆の思い出を書いたことで、癒される何かがあったのだろうと。


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