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実際に出版社に送った出版企画書を特別公開

こんにちは。小説家の川井利彦です。

今回は、実際に出版社に送った出版企画書を特別に公開します。
多くの出版社、大勢の編集者の方に見ていただいたのですが、残念ながら良い返事をもらえませんでした。

ただ私としては、この企画をどうしても本にして、発表したいと考えています。

なので、今回特別にnote上で公開し、より多くの人に知ってもらいたいと思います。

もし興味があるよという方がいましたら、ご一報いただけると幸いです。

宜しくお願いします。

小説家 川井利彦

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■1.出版企画書



◆タイトル
〈小説〉ホームレスから教わる、幸せの法則

◆サブタイトル
あなたが幸せになるための、絶対的な5つの法則がここに!

◆キャッチコピー(帯文)
あなたは自分自身を幸せにすることはできない!?
その理由とは・・・

◆本書の内容
小説(自己啓発系)です。
幸せになるための最も基本的な考え方「利他心」について書かれています。

◆著者名
川井利彦

◆著者プロフィール
小説家として2022年にアメージング出版様から小説「本からの手紙」で
デビュー。

https://www.amazon.co.jp/%E6%9C%AC
%E3%81%8B%E3%82%89%E3%81%AE%E6%89%
8B%E7%B4%99-%E5%B7%9D%E4%BA%95%E5%
88%A9%E5%BD%A6/dp/4910180958/ref=t
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◆企画意図
本のテーマは、『利他心』です。
自己啓発書ではありますが、小説形式、一つの物語として描いていきます。
世界のみならず、日本でも無差別殺傷事件やテロまがいの犯罪が絶えません。
インフラは整備され、食料も腐るほど恵まれた経済大国である日本で、
なぜ悲惨な事件が起こってしまうのか。

だからこそ、『利他心』をより多くの人に知ってもらいたい。
他人のことを考え、想い、そのために行動することが、
これからの日本のため、子供達のために最も必要だと思います。

本書の中で詳しく書きますが、

この『利他心』は「自分の幸せ」と直結しています。
「自分の幸せは他人が運んできてくれる」
「相手を幸せにした分、自分の幸せも増えていく」
これがこの世で幸せになるための唯一無二の方法で、絶対的な法則です。

自分の幸せだけをただただ追い求める『利己心過剰摂取』ではなく、
他人を思いやる『利他心』をもう一度皆さんに知ってほしい。
そうすれば、結果的に自分自身が幸せになってしまう。
そのことを多くの人にわかってほしいのです。

◆企画の背景
食べる物にも寝る場所にも困らないほど経済が発展した日本ですが、
自殺者は毎年三万人を数え、虐待やいじめは無くなる気配がありません。

そんな荒んでしまった現代だからこそ、『利他心』を知ってほしい。
そして他人を思いやることが自分の幸せに直結することを知ってほしい。
そのために今出版する必要があると考えています。

◆読者ターゲット
メインターゲット層としては、30代から上の男女。
職場の人間関係や家族と関係。悩みの大半を占める人間関係において、非常
に良い気づき、アドバイスを得ることができます。つまり多くの読者をター
ゲットにできると考えています。

◆類書
文響社「夢をかなえるゾウ1」水野敏也著 2007年
サンマーク出版「生き方。」稲盛和夫著 2004年


◆類書との差別化
・類書は日頃から本を読んだりセミナーに参加したりと、学ぶ意欲が高い人
向けですが、この企画はそこまで意識が高くない方でもわかりやすく受け入
れやすい内容です。

・日常生活はもちろんビジネスや職場での人間関係など、全ての物事に応用
が利きます。

◆体裁など(案)
今のところ特にありません。

◆原稿完成の予定
三ヶ月で書き上げることができます。



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■2.構成案



序章  ホームレス
第一章 人は、必ず死にます
第二章 人は誰でも、幸せになりたい
第三章 自分で自分のことを、幸せにできない
第四章 幸せは、他人からもたらされる
第五章 他人を幸せにした量と、自分の幸せの量は比例する
最終章 最後の法則

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■3.見本原稿



序章 ホームレス 

古村勇人(三二)にとって、仕事は憂鬱なものでしかない。
保険の営業マンとして働いているが、一向に取れない契約と上司からの執拗
な圧力に嫌気が差していた。
今は不況の煽りを受けて、皆財布の紐が固い。それが月に何万円もかかる保
険商品となればなおさらだ。しかもほとんどの客がすでに何かしらの保険商
品に入っており、勇人の会社が扱う商品に入ってもらうためには、いちいち
今入っている商品を説明して、このままでは将来万が一のことがあった時に
、こういう面で困るから、こっちの保険商品に変えた方が良いと、懇切丁寧
に一から説明してやっているのに、「将来のことなんか、わからないし」や
「家族に相談してみないと」「給料が減って、こんな金額払えない」など、
あれこれ理由をつけては、渋い顔をして帰って行く。

ならばと、独身で二十代の無保険者に当たってみたが、「まだ必要ないでし
ょ」「昇進したら考えるよ」「遊ぶ金がいるから」などなど、いい加減なこ
とを言って、好きなだけコーヒーを飲んで去って行く。コーヒー代は全て勇
人持ちだ。

八月も半ばを過ぎ、未だに一件の契約もとれていないのは、営業部の中で勇
人だけだった。

入社して二年。これまでは、友人や親せきに頭を下げ、半ば強引に契約して
もらってきたが、その田んぼはほとんど狩りつくしてしまった。
今は新規顧客を開拓するため、企業に営業をかけたり人脈を広げるため無料
セミナーに参加してみたが、思ったような結果にはつながっていない。

営業に行った企業から、無下に断られ意気消沈した勇人が辿り着いたのは、
都内にある小さな公園だった。平日の昼間ということもあり、子供を連れた
母親しかいなかった。古びた滑り台のすぐそばにあるベンチに腰を下ろした
勇人は、ため息をつくと、肩を落とした。

このまま会社に戻っても、上司からまた嫌味を言われ、肩身が狭い思いをす
るだけだ。契約の一つでも取れていればよかったが、見込み顧客さえ、今の
勇人にはいない。

「もう辞めようかな…」

誰かに聞かせるわけでもない、口からポロっと出ただけの独り言が、勇人の
気分をさらに暗くした。終身雇用が崩壊し、転職活動が当たり前になりつつ
ある中、二年で退職することなど、別に珍しいことでもない。それはわかっ
ているが、どうしてもその一歩を踏み出すことができない。

まだ何かやり残したことがある。もっと自分にはできることがあるのではな
いか。

胸の中に、モヤモヤした居心地の悪い感情が、漂っている。かと言って、何
か打開策があるのかと聞かれると、頭を抱えてしまう。

鬱々とした気分を抱えたまま、ベンチの背もたれにもたれかかると、突然後
ろから声をかけられた。

「そこは俺の場所だ。どいてくれ」

驚いて振り返ると、季節外れの長袖を着たホームレスが立っていた。ボサボ
サの髪には、白髪が多く、日焼けした顔はシミだらけで、肌荒れもひどい。
もう何日も風呂に入っていないのだろう。酸っぱい汗の匂いに鼻がもげそう
だ。

「聞こえてるか?さっさとどきな」

蔑むような眼差しを向けられた勇人は、無性に腹が立った。公共施設である
公園のベンチは、誰がいつ使おうと自由だ。それを一個人が占有しようとす
ること自体間違っている。しかも、隣を見ればベンチがいくつも並んでいる
ではないか。

「ここがあんたの場所だなんて証拠でもあるのかよ」

キッと目尻を釣り上げた勇人がホームレスを睨んだ。

「毎日この時間は、ここで昼寝するのが俺の日課だ」
「他にもあるだろ!あっち行けよ!」

怒気を強めた勇人が、ハエを払うように手を振った瞬間、ホームレスに肩を
ぐいっと押された。思いがけない行動に、バランスを崩した勇人は、そのま
まベンチから落ち、尻もちをついた。

「この野郎!」

頭に来た勇人は立ち上がりホームレスの胸倉を掴んだ。こちらの不穏な雰囲
気を察した母子が逃げるように公園から出て行った。

「ふざけんな!」

勇人が顔面に向かって拳を突き出すと、ホームレスは無駄のない動作で軽々
かわすと、胸倉を掴んでいる左腕を、締め上げた。

「痛い!痛い!」

情けない悲鳴をあげた勇人は、左腕をかばいながら後ずさった。するとホー
ムレスは何事もなかったかのように、ベンチに寝転んだ。痛みにこらえなが
ら苦々しい表情を浮かべた勇人は「社会のゴミが!」と暴言を浴びせるとフ
ラフラとした足取りで公園を後にした。

次の日。自宅を出た勇人は、会社から支給されたエンブレムが無くなってい
ることに気がついた。それは社員であることを証明する大切な物で、成績も
悪い上に、エンブレムも無くしたとなれば、上司からどんな小言を言われる
かわからない。

「昨日の公園か…」

おそらくホームレスとやりあった時に、落としてしまったのだろう。勇人は
、会社に客のところに行くからとウソの連絡をし、急ぎ昨日の小さな公園へ
と向かった。

誰もいない公園に着くと、ホームレスから追いやられたベンチの周囲を、目
を皿のようにして探してみたが、エンブレムは見つからなかった。

「なんで…」

勇人が途方に暮れていると「そこは俺の場所だ。どいてくれ」デジャブかと
錯覚してしまうほど、同じ口調、同じトーンで声をかけられた。振り返ると
、昨日とは違う長袖シャツを着たホームレスが立っていた。

「なんだ?昨日の兄ちゃんか。そんなにこのベンチが気に入ったのか」と下
卑た笑みを浮かべた。

ムッとした表情の勇人が「そんなわけないだろ」と言い残し、公園を後にし
ようとした時「兄ちゃん!」と呼び止められた。

「兄ちゃん。A保険に勤めてるんだろ?」

驚いた勇人が振り返ると「昨日これを落としたぞ」と手のひらを広げた。そ
こには勇人が探していたエンブレムが光っていた。

「どこでそれを?」
「ここに落ちてた」とホームレスが顎をしゃくった。

「返してくれ!」と勇人が手を差し出すと、ホームレスは呆れた顔で言った

「最近のA保険のやつは、ロクに礼も言えないのか」

恥ずかしさで頬を赤くした勇人は、「あ、ありがとう…ございます」と呟い
た。

それを聞いたホームレスはニカッと笑うと、エンブレムを投げ返した。

「それにしても、A保険か」

懐かしそうに目を細めたホームレスは、どうやら勇人の会社のことを知って
るようだった。

「昔、保険の契約でもしてたの?」
「いや。おたくの社長と知り合いでな。よく一緒にゴルフに行ってたんだ」

社長と知り合い?こんな汚いホームレスが?
俄かには信じられないと、眉間に皺を寄せている勇人に「信じてないな」と
ホームレスが顔を近づけた。

「今はこんななりをしているが、昔は大勢社員を抱える大企業の社長として
、バリバリ働いてたんだぞ」

そう言うと、薄汚れたズボンのポケットから、しわくちゃになった一枚の紙
を取り出した。よく見ると、それは写真だった。

「見てみろ!これが私だ」

どこかのパーティー会場で撮られたと思われる写真には、タキシードを着た
男性や華やかなドレス姿の女性達が大勢写っていた。そして大勢の人々に囲
まれた中心に恰幅のいい、髪をオールバックにし白いタキシードに身を包ん
だ男性が鎮座していた。ホームレスはその男性を指でさした。

「これが?本当に!?」

勇人が驚いて声をあげると、ホームレスは笑い声をあげた。

「信じられないと思うが、正真正銘これが昔の私だ」

写真をよく見ると、人々の後ろ壁に『MM社 創立五十周年パーティー』と
書かれた看板が掲げられている。MM社と言えば、日本を代表する大手上場
企業の一つだ。

そんな大企業の社長がどうしてホームレスに…。

勇人が訝しんでいると、「ところで兄ちゃん」と声をかけてきた。

「あんた保険の営業マンだろ。しかも成績の上がらないダメダメ営業マンだ


顔面がカァーと熱くなる。

「どうしてそんなことを…」
「兄ちゃんの立ち姿や雰囲気を見たらわかる。こいつは全く売れてねえって
な」

言い返したいところだが、図星である勇人は、沈黙するしかなかった。

「全く情けねえ。いいだろ!俺が売れる営業マンの極意を特別に教えてやる


そう言ったホームレス、いや元社長が、顎を上げ胸を張った。

「私も昔は、営業マンとして働いていた経験がある。これも何かの縁だ。そ
の時見つけたとっておきの方法を伝授してやる」
「えっ?いや…ハア?」

困惑する勇人を気にかける様子もなく、元社長は話をどんどん先に進めてし
まう。

「いいか。この世には絶対的な法則がある。それを理解し行動すれば、必ず
成績も上がる。トップの成績を獲るのだって夢じゃない」

目を白黒させている勇人を尻目に、「ついてこい!」と元社長は踵を返し、
公園の出口に向かった。
全くと言っていいほど、理解が追いついていない勇人だったが、不思議と逆
らう気持ちにもなれず、気がつくと元社長の後をついて行っていた。

この後、教えてもらった法則によって、人生が激変してしまうとは、この時
勇人は知る由もなかった。



第五章 「他人を幸せにした量と、自分の幸せの量は比例する」

古村勇人はいつも通り、営業回りの合間を縫って、ホームレス兼元社長が待
つ公園に向かった。
平日の昼下がり。誰もいない小さな公園に足を踏み入れると、いつもベンチ
に元社長が横たわっていた。春のうららかな陽光の中だと、薄汚れた身なり
もそれなりに立派に見えるから不思議だ。
勇人が近づくと、気配に気がついたのか元社長が目を開けた。
「ん?もうそんな時間か?」
眠たそうな目をこすりながら、あくびを噛み殺す。
「相変わらずしょぼくれた顔してるな。今日も駄目だったのか?」
ムッとした表情を浮かべた勇人が、無言でベンチに座ろうとすると、元社長
は身体を起こし場所を空けた。
「昨日も話してやったのに、まだ駄目か。ちゃんと俺の話を聞いてたか?」
「聞いてたよ!」
隣りに座った勇人が唇を尖らせる。
「だったら言ってみろ」
「だから―」勇人が大きく息を吐いた。
「人は必ず死ぬのに、幸せになりたい。でも自分のことを、幸せにすること
はできない。そして幸せは、他人によってもたらされる。だろ?」
「そこまでスラスラ言えるのに、どうして契約がとれない?」
「知らないよ」
子供のように不貞腐れた勇人は、ため息をついた。
「まあ心配するな。今日の話を聞けば、ボンクラなお前でも、あっという間
に営業でトップに立てる」
元社長が鼻の穴を膨らませて、勇人の肩を叩いた。
昨日の話では、今日話す内容が幸せになるための法則の、最も重要な部分だ
と言っていた。
「そうだ。これから話す内容が『幸せの法則』の中で、肝心要のところだ。
いいか。よく聞け」
元社長が背筋を伸ばした。
「昨日話したように、自分の幸せは、他人によってもたらされる。ここまで
はわかったな。そしてこの法則が成り立つのであれば、次にこれが成立する
。それが『他人を幸せにした量と、自分の幸せは比例する』だ」
「どういうこと?」勇人は首を傾げた。
「つまり、周りの人間、自分と関わってくれる人間、他人を幸せにすればす
るほど、自分の幸せの総量が増えていくということだ。これが『幸せの法則
』の根幹であり、極論を言うとこれさえ理解してしまえば、他はおまけみた
いなもんで、忘れてしまっても構わない」
今までの時間と労力を否定するような発言に、勇人は目を丸くした。
「お前がこの法則を本当の意味で理解した時、俺が今言ったことがわかるよ
うになる」
勇人は自分が見下されたようで、あまりいい気分はしなかった。
昨日の話までは、何とかなく理解できた。しかし他人を幸せにすればするほ
ど、自分の幸せの量が増えていくというのは、どういうことだろうか。
「前にも言ったように、この法則は日常生活にも、ビジネスにも役立てるこ
とができる。俺が会社をあそこまで大きくできたのも、この法則に気がつい
たからだ。だからこの法則を知ったお前も、仕事で必ず成功できる」
そうは言われても、未だに保険の契約は一件も取れていない。イマイチ納得
感がない勇人は、眉間に皺を寄せた。
「何だその顔は?まだ理解できていないみたいだな。しょうがない。だった
ら一つ具体例を話してやろう。松下幸之助を知ってるか?」
「パナソニックを作った人でしょ。名前くらいなら聞いたことある」
「彼もこの法則を体現した人物の一人だ」
まるで自分が教えてやったと言わんばかりに、元社長は胸を張った。
「松下幸之助が作った商品の中に、二股ソケットというものがある。知って
るか?」
勇人は首を横に振った。
「大正時代に発売されたこの商品は、爆発的な売上を記録した。当時は今み
たいに家の中にコンセントがなく、電気と言ったら部屋を照らす電灯くらい
しかなかった。だから他の電化製品を使おうと思ったら、わざわざ電球を外
してコードを差すしかなかった。これがどういうことかわかるか?」
勇人は、顎に手をやった。
「面倒くさい…」
「それもある。他には?」
「電灯が使えないから、部屋が暗くなる」
「そうだ!」
元社長が膝を打った。
「電化製品を使うたびに、電灯が使えなくなる。例えばアイロンがけを想像
してみろ。昼間なら日差しがあって、かろうじてできるかもしれないが、夜
だったら真っ暗な部屋の中で、アイロンがけをしなければならない。そんな
こと危なくて、とてもじゃないができない。ここに気がついた松下幸之助は
、二股ソケットを開発した。二股に分かれているソケットなら、電球をつけ
たまま、アイロンがけのコードを差すことができる」
「あーそういうこと!」合点がいった勇人が大きく頷いた。
「確かにその商品なら売れるかも―」
勇人がそう言った途端、元社長に後頭部を叩かれた。
「お前は肝心なことがわかっていない!いいか―」
後頭部を手で抑えながら、紅潮した元社長の横顔を見つめた。
「ここで肝心なことは、この商品が売れたことじゃない。松下幸之助が二股
ソケットを思いついた過程が重要なんだ。彼は一つしかないソケットを見て
、多くの人が困ってる、不便さを感じていると思った。そこでどうしたらこ
の人達の悩みを解決して、幸せにできるのか。考えに考えて開発したのが、
二股ソケットだ。松下幸之助は最初から売ろうと思って、二股ソケットを作
ったんじゃない。人々を幸せにしたいと考えた末に商品が生まれ、結果とし
て人々が幸せになったから、それが売れただけだ」
勇人はハッとして、息を止めた。
「この考えをひたむきに貫いた結果、松下幸之助の作った会社は、やがて日
本を代表する大企業にまで成長した。わかるか?他人を幸せにした量と、自
分の幸せの量は比例するというのはこういうことだ。お前の成績が一向に上
がらないのは、契約を取ることばかりに気をとられ、お客を幸せにしていな
い、その結果だ」
雷に打たれたような衝撃に、全身を貫かれた勇人は、身動き一つ取ることが
できなかった。

<続>

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