川光 俊哉 Toshiya Kawamitsu

第24回太宰治賞 最終候補 『夏の魔法と少年』 / 第6回林芙美子文学賞 最終候補 『…

川光 俊哉 Toshiya Kawamitsu

第24回太宰治賞 最終候補 『夏の魔法と少年』 / 第6回林芙美子文学賞 最終候補 『水族館で鬼ごっこ』 / 脚本 舞台『銀河英雄伝説』シリーズ他 / 二松學舍大学文学部国文学科 講師 / ポストメタルバンドlantanaquamara / Twitter @TKawamitsu

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自己紹介

あらためて 私のやっていることを 自己紹介させてください。   1 脚本家   舞台「銀河英雄伝説」シリーズ他 商業演劇で脚本を担当してきました。 原作から脚色する仕事が多かったためか 構成は得意です。 企画書、プロット、脚本など 執筆のスピードには定評があります。     2 講師・先生   二松學舍大学で脚本の書き方、読み方を教えています。 個人でも創作教室を開講しています。 単なる「添削」ではない、共同制作者としての 有益なアドバイスができるよう心がけています。  

    • アルタイルの詩(笑) (1)

      登場人物 渉 17歳、高校2年生。愛する咲希のためになにかしてやりたいが、なにもできない無力をなげいている。 咲希 16歳、高校2年生。愛する渉を残して逝ってしまうことが気がかりでならない。渉にきらわれようとする。 神崎 42歳、医者。咲希の主治医。妻子があるが、洋子と不倫の関係にある。 洋子 28歳、ナース。神崎の不倫相手。このままではいけないと思っている。 松岡 72歳、入院患者。娘のことで後悔している。 千秋 23歳、松岡の孫。足の悪い松岡を心身ともにささえ

      • モノクロ同盟 (16) 終

        3−4   福永、登場。 福永   先生! ……大森さん。 大森   どうも…… 福永   先生、いま、先生の本、読み終わったんですよ。      おもしろいじゃないですか。やっと、先生も小説の書きかたが分かったんですね。 岩谷   どうも…… 福永   早く感想を伝えたくて!      つづきは、いつ書けるんですか? 岩谷   つづき? 福永   つづき! 岸田   それは…… 三上   ぼくも気になっていました。 大森   つづくんですか? 福永   先生。 皆々  

        • モノクロ同盟 (15)

          3−1   書斎。   岩谷、ひとり。   本棚、机の上、がらんとしている。   チャイムが鳴る。 岩谷   はい。   伊藤、登場。 伊藤   ……ずいぶん…… 岩谷   きれいになったか? 伊藤   ……さみしくなった。 岩谷   引っ越し、するんだ。 伊藤   そう。 岩谷   処分した。 伊藤   本、全部? 岩谷   ほとんどね。 伊藤   命より大切なんだと思ってた。 岩谷   …… 伊藤   わたしがなにを言っても、ああ、とか、そう、とか、てきとうな返

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        マガジン

        • 小説「千人の女の子の夜になっちゃんは死んだ」
          32本
        • 舞台企画/戯曲「アルタイルの詩(笑)」
          7本
        • 戯曲「モノクロ同盟」/詩の書き方
          50本
        • 口語散文集/小説「水族館で鬼ごっこ」
          31本
        • 創作教室
          187本
        • 小説の書き方
          264本

        記事

          モノクロ同盟 (14)

          2−8   岩谷、くろかわ、はいじま、しろい。 岩谷   おまえら…… 三人   はい! 岩谷   なにがしたいんだ? 三人   はい? 岩谷   なにしてたんだ? くろかわ 先生に…… はいじま よろこんで…… しろい  もらうため! 岩谷   …… くろかわ さあ! はいじま どうです! しろい  さあ! 三人   さあ!   沈黙。 岩谷   おれにどうしろというんだ…… 三人   さあ! 岩谷   …… くろかわ 選んで! はいじま 誰? しろい  さあ! 三

          モノクロ同盟 (13)

          2―4   岩谷、篠原、登場。 岩谷   道、覚えた? 篠原   弟子は? 岩谷   知らん。 篠原   いないのか? 岩谷   そういえば、一週間か十日くらい見ていない気がする。 篠原   なにかあったのか? 岩谷   なにも。突然。なにも言わず。 篠原   ……それで? 岩谷   そのうち帰ってくるだろ。 篠原   いや、おまえだ。なんの用かと思って。 岩谷   ……引っ越す。 篠原   急だな。 岩谷   ずっとそうしようと思ってた。 篠原   どうして? 岩谷  

          モノクロ同盟 (12)

          2−1   書斎。   大森、本をはこんでいる、   福永、登場。   大森とぶつかりそうになる。 福永   なんです。 大森   あなたこそ。 福永   玄関があいてたものだから、ふらっと。 大森   へー。 福永   また、本を売るんですか、先生? 大森   そうですね……ありがたい…… 福永   あの。 大森   はい。 福永   決着を、つけませんか。 大森   ほう? 福永   お分かりですね? 大森   しろいちゃん! 2−2   しろい、登場。 しろい

          モノクロ同盟 (11)

          1−32   岩谷、ひとり。   しばらく黙々とパソコンをたたく。   やがて、息をついて、いすにもたれる。   目を閉じて、寝る。 1−33   しろい、登場。 しろい  先生! 天才!   寝ていることに気づき、しずかにする。   いったん去って、毛布を持ってくる。岩谷にかけてやる。   くろかわ、はいじま、帰ってくる。   「しー」と、しろい。 くろかわ 読んだの? しろい  うん。 はいじま おもしろかった? しろい  最高。 はいじま やっぱり、先生……

          モノクロ同盟 (10)

          1―28   くろかわ、はいじま、登場。 く・は  お待たせしました! 篠原   どうも……コーヒー? ……こぶ茶? 紅茶? 麦茶? なにこれ? はいじま 正解! 篠原   ……? はいじま 全部、ブレンドしました。 岩谷   カフェオレか? くろかわ いい色でしょう? 岩谷   そうだな。 くろかわ 茶色! 岩谷   コーヒーと牛乳? くろかわ 茶色! 岩谷   茶色? くろかわ 茶色! 岩谷   絵の具? くろかわ 絵の具! 岩谷   …… くろかわ …… 岩谷   

          モノクロ同盟 (9)

          1−24   岩谷、篠原、登場。 岩谷   ……また、来たのか。 伊藤   忘れもの。 岩谷   そうか。 伊藤   お客さん? 篠原   どうも……篠原です。 岩谷   大学のときの友人だよ。来るのは、はじめてなんでね。 篠原   こちらは? 岩谷   むかし、つきあってた女。合鍵を置きにきたんだってさ。 篠原   ああ……やっぱり、小説を書いたり、読んだり、批評したり…… 岩谷   いや。ただのキャバ嬢。 伊藤   ちょっと。 岩谷   やめたのか? 伊藤   やって

          【お知らせ】 舞台『インディアン』 出演

          ひさしぶりのお知らせになります。俳優として出演します。 昨年5月に舞台の作・演出があって以来、心身の不調のため、ほとんど無為に生きていました。 大学生に脚本を、小学生に国語を教えていました。 ウィトゲンシュタインのことを思い、なんとか希望をつなぎました。 誘われても返事することなく、不義理を重ね、いつのまにか孤立してしまいました。申し訳ございませんでした。 これが復帰のきっかけになればと思います。 まだわたくしのことを気にかけていただける方がいらっしゃれば、ご来場くださるとは

          【お知らせ】 舞台『インディアン』 出演

          モノクロ同盟 (8)

          1−21   しろい、原稿を手に、登場。   はいじまも、登場 しろい  呼んだ? 岩谷   呼んでない。 しろい  なんだ……(あくび) 岩谷   (時計を見る)留守番してて。 はいじま はい。 岩谷   すぐにもどる。 1−22   岩谷、パソコンを閉じて、去る。   はいじま、しろい。   しろいは眠くなって、机で寝る。   くろかわ、登場。 くろかわ 先生、本をまとめました! はいじま …… くろかわ 先生は? はいじま おでかけ。 くろかわ おまえは? は

          口語散文集 8

           口裂け女でもはかないような、まっ赤な、南天より濃く深く、どす黒いくらいの赤のハイヒールで、喪服のスーツで、歩は前髪のすきまから机の角を見つめてた。警察が到着するまでのあいだ、駅員さんはなんで電車をとめようとしたのか、少しでも聞きだそうとしてたけど、光の速さが、空の殻が、線路全部の重さが、虹の傷跡が、姉妹の関係で、なんて、歩の言っていることはひとつも理解できなかったので、あきらめた、なんにもない時間が三分ほど流れた。歩は小卒なので、聖徳太子を漢字で書くこともできない。だから、

          口語散文集 7

           愛ちゃんはかなしい子で、人に愛されたことがないから、人を愛することもできなくて、それは依存か、大切にされたいという絶望的なねがいになってしまうかで、どんなに大切だと伝えようとしても届くことはなかった。お父さんとお母さんはいそがしくて、家族そろって食事する時間もなかなかないから、年長さんのとき、愛ちゃんの郵便屋さんをはじめたのに、そのポストには一通も手紙が来なかった。キリスト教の中学校に入学して、卒業までに英検二級をとったけど、それくらいどんなことでもがんばって、バレエも主役

          口語散文集 6

           右目の視界のすみで、マイワシはうずになって、ちいさく、まるくなった、理科準備室の入口の横の地球儀に似ていた。先頭がひとまわり、赤道をなぞってほどけると、あなたの頭のうしろを横切って、またつながって、三六〇度のスクリーンになった。銀色の背中、腹に、うろこの一枚一枚にわたしたちの顔がうつっている、それが回転している、鼻から鼻までの最短距離、視線の角度さえ乱反射していると思うと、さっきのジンジャーエールが胃のなかで沸騰するようで、内臓が少しふくらんで、気持ち悪い。陸にあげられた深

          【通信講座】 小説「闘う中学生」 講評

          平易で簡潔な文体に好感を持てないでもないが ただ表現が稚拙なだけだった。 登場人物の行動理念が一貫せず、主題がなんなのかも読みとれない。 主人公「竜彦」に共感することなどできず、ヒロイン「姫香」にもまったく魅力を感じない。 『天気の子』の影響で「拳銃」を出したくなったのだろうが、引用元と同じようになんの必然性もない。 『オフィーリア』の描写にだけ、多少の個性を感じられそうだったが、なんの象徴なのか作者もよく分かっていなかったのだと思う。 影響を受けていても、パロディーでもオ

          【通信講座】 小説「闘う中学生」 講評