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記事一覧

詩 394

詩 394

  漏度

さあ 起きなさい 犬を埋め
最後の賭けに 髪 洗い
降水確率 聞こえない
出会う 風なら 気づかない

栄養 欠けた 線分図
本当に もう あたえたい
レンズ したたり 光 うけ
姫神礼讃 愛を うけ

清潔な水 ひそむ 音
自販機 くすぐる 傘の先
貝 鈴 かざる 塔の上には

くしをかざして 窓 みんな
神聖甲虫 頭 うち
花 物語 来る 物語

詩 393

詩 393

  蓮華人形

きっと 空中 吠え 低く
高く らんちゅう ありふれた
ねがい 言う前 通話中
一輪 咲いた かおりなら

逃げる資格はなくて 鍵
短い 長い 入らない
気づいていない 既視感に
もっと 早足 葉を ゆらし

もっと いっしょに そこに いて
かよわく 一滴 流れ 落ち
ブランコからでも 人形 見つけ

温度 マイナス 成長に
よごれ つきもの はじめから
たしかに 知っていたけれ

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詩 392

詩 392

  キツツキの哲学

ガラスの破片 丘を越え
子供のことば みっつ 燃え
こがね 植え 本 完璧に
それでは みなさん 誓いましょう

存在の連鎖 大いなる
一角獣の背にのって
教会のもとにたたずむ
砂色の は は 砂色の

アラマントスと 円柱が 
ため息 彼ら 深紅の実
マイムマイムは もう 秋 告げる

だまれ 雹の日 その日だけ
最終定理が 青白く
波止場で 泣いて 笑いころげて

詩 391

詩 391

   蓮歩感覚

あわい色 染め 花の色
線路 あざやか ペイズリー
自転車 ころんで 迷彩の
王は 笑って 救うから

万年筆の欺瞞など
とっくに気づいて 飴の窓
夢に まで 出て 金の橋

ものがたり 蜜 みんな 0
雨の味して 交差点
ゴシック体は 広がって

白いトランク 注文 多い
いつつの誓い 石板に
海に あこがれ えがくほど
遠すぎる まだ 雲 遠すぎる

詩 390

詩 390

   水の声(黒の魚)

青のカプセル 処方され
幕がとじても 見つからず
ピエタの背中に 見つからず
本のなかには 飛行船

火花 ちる ちる 教室の
花瓶の底でも あなた 泣く
音楽 はじまり あなた 泣く
記憶のなかで 歩むから

かなしい 姫君 塔の上
月夜 助けてほしいのです
工場 髪 ゆい さばきの日には

網に とらえた 万年筆
白昼 刺してほしいのです
夢を 盗んでほしいのです

Les jours d'écume (36)

Les jours d'écume (36)

自動販売機は水槽で、ソーダと金魚を百円で買える。きっと世界の終わりまで立っていて、世界が終わっても立っていて、らんちゅうだけが泳いでいる。

詩 389

詩 389

   浮遊(シャガール)

ほのかな あかるみ 誰のため
一粒 ください タブレット
ちょうちょの伝言 すべて うそ
スケッチブックは 交差点

ヒバリのような 意志を 持て
地下鉄 こわす 力 持て
ビニール傘は 咲きみだれ
やがて スズラン 声 あわせ

花瓶は 透明 クリスタル
しおりと花火 手をつなぎ
背表紙 笑う どこでもないから

われた音なら ペンダント
ゆけ ゆけ 木馬 灯台へ

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詩 388

詩 388

  おぼろ蛾

軌跡 はなれて 本当の
結論 すべて 絵のなかで
赤い液体 試験管
おぼろ おぼろの 蛾のおどり

灯籠は 落ち ピアノ 落ち
青くて あまい 風船は
願いもせずに 花ざかり
おぼろ おぼろの ヒサメアリ

しののめ 避けて つかまえる
ハッカキャンディー 本の虫
おぼろ おぼろの 灯台鬼 ゆけ

おぼれろ かわき 無意味 虹
また 飢え 深く 歩みゆけ
おぼろ おぼろの イブキチ

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詩 387

詩 387

  プレゼント

デッキブラシとヒガンバナ
シロツメクサのかんむりを
あなたに贈れば 不機嫌に
無知の領域 ぶちこわす

とどまることなく 濡羽色
ひとつ ひとつに 月あかり
羽根が ふる ふる 誰のため
また 濡羽色 この 気持ち

うろこの種族 胚珠 消し
現在 自由 明日のため
交錯する意味 ここにある 意味

観察すれば なんだ 春
学べば レイシ ほおばれる
何色と聞く 赤とこたえる

詩 387

詩 387

  らんちゅう

空欄 埋めた らんちゅうと
グラジオラスは 青 芽ぶき
咲くことに決め 種も 風
金の風 吹く 空も 空

あなたに 贈る らんちゅうに
コスモス ちょうちょ 枝 いぶき
明日のため 散り 種 むすび
銀のすず 鳴る 真夏の日

意味を 探して あなた 見て
思想実験 大失敗
らんちゅう 溶けて うす紅の水

橋の上から あなた 見て
トンネル つづく 草 かおる
生死は 不明 

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Les jours d'écume (35)

Les jours d'écume (35)

水族館で、マンタに手がとどけば、ねがいがかなう、
お祭りで、らんちゅうをすくえば
月まで泳いでいける、という、うわさ。

詩 386

詩 386

  正体不明論

顕微鏡でも 分からない
少なくとも うそ 理由 凪
あたたかい 花 理解せず
足音するとき 浸透し

うちこわす 脈 望遠鏡
リズム 凍てつく 手をにぎり
無傷 双心 生きかえり
からから 声は 庭に 落ち

あなたのことは 分からない
誰にも見えない 青白く
誰も知らない 編みあげて 雨

ただ ただ うたう 信じれば
不滅の条件 世界論
晴れて くらくら 眉も ひらひら

詩 385

詩 385

  不眠の夏

横たわる 橋 漂白の
欲望 いつか 切りだして
溶けだし 溶けあい ある悲劇
座標 隠蔽 歩みつつ

三日月の位置 見うしない
ただの空洞 また 欲望
暗い 浮上し 浮きあがる
さらわれていく あの乙女座

不眠の夏は まだ つづく
金の風には 銀の鈴
棲息するなら 秘密基地だけ

ここから きっと 分岐点
ただようままか 存在か
追いつき つかれ とりもどし 貝

詩 384

詩 384

  病院坂

無力な風鈴 透明な
呼吸は すべて 連鎖して
まどろむ 奇跡 実験室
白日 嬌声 断末魔

あなたとくだけちる 出会い
証拠はなくて においだけ
捨てて レプリカ 研究室
神さま 病気の屋根の上

心は通じ 浸透し
おそれたことは あの 命令
無惨な理科室 月光 あつめ

白夜の しらべ クロールで
原色を いま 切り裂いて
無題の方法 ちらばる 白紙