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折々の歌詞

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2019年1月の記事一覧

折々の歌詞(41)

折々の歌詞(41)

悲しみ回路の暴走で 蒸涙反応SOS/感情解析不能でただ、歪んで−−−−−。

 Plastic Tree

「内臓マイク」(2006) 「蒸涙反応」の造語が清新な響きで深々と胸に刺さる。「現実 こわがり いたがり 幻覚 つながり 歯ぎしり」の混沌と「心に穴が空いた」空虚を同時に抱える。

折々の歌詞(40)

折々の歌詞(40)

冬がココロを磨いていくよ/瞼閉じるたび 追いかけてく

 Plastic Tree

「雪蛍」(2004)春が待ち遠しい寒い日に噛み締めたい一節。「雪蛍」はアブラムシの一種で冬の季語だが現実の「雪蛍」の姿かたちを調べては野暮である。「東京の冬」に「寒がりな君」の面影がかすかな光へと結晶した。

折々の歌詞(39)

折々の歌詞(39)

善と悪とが何で、モラルが何で、/考え 死のうと思った日々にも/終わりが来て/朝まで友と飲んで

  巨乳まんだら王国

割礼カレー(2004)脚韻のように「で」「て」のリズムが跳ね踊っている。その律動に身を委ねているうちに「終わりが来て」に行き当たり、いつの間にか救われてしまう。

折々の歌詞(38)

折々の歌詞(38)

天秤にかけたのは誰?算盤で弾くのは誰?/ハーメルンの笛吹きは誰?狼少年はいったい誰?

 ムック

「リブラ」(2008)深い苦悩を孕む四連続「誰?」が緊張を高める。結論の「そんなのどうでもいいほど今、君を愛しているよ」は安易。同様の「風」反復も効果的だが、「花」「ビル」の使い方は類型。

折々の歌詞(37)

折々の歌詞(37)

"I'm dying." /- "Is it blissful?"/"It's like a dream."/ - "I want to dream."

 Deafheaven

Dream House(2013)その夢は恩寵。「ぼくはこれから夢を見るんだよ」(筒井康隆「虚構船団」)

折々の歌詞(36)

折々の歌詞(36)

束縛したいけど 君はきっと嫌がるから/せめて心だけそっと 縄で縛りたい

 蜉蝣

縄(2001)掉尾「せつない」が説明的で引用文も理屈。「縄」の語感で生きた。To bind another to Its delight(Blake“The Clod and the Pebble”)

折々の歌詞(35)

折々の歌詞(35)

まぶたに浮かんだ君の背後に 薄紅の花が咲いていた

 Pierrot

「ラストレター」(1999)澁澤龍彦は桜を「幻妖なるフローラ」と言っている。坂口安吾「桜の森の満開の下」のように、桜は向こう見ずに明るいだけの花ではなかったはずだ。現在、死のイメージを「別れ」に転換してお茶を濁すことが多い。

折々の歌詞(34)

折々の歌詞(34)

This kid back in school, subdued and shy.

 Bring Me the Horizon

Don't Go(2010)筆者の願いは「アダムス・ファミリー」のウェンズデー、「エミリー・ザ・ストレンジ」のエミリーのような存在が肯定されることだ。

折々の歌詞(33)

折々の歌詞(33)

短し命舞う/最後に見た記憶/笑う君…殺め

 DIR EN GREY

「残-ZAN-」 (1999)「短き」でないのに注意。「命短し」の倒置で、「命短し、(その短い命が)舞う」の意味。「殺め」を小粋に感じた筆者は高校生当時からずっと使う機会を探していた。2016年ようやく舞台で実現。

折々の歌詞(32)

折々の歌詞(32)

歪み曲がり曲がる世界で 毛穴から咲き出すコスモスが

 MERRY

「狂騒カーニバル」(2006)lantanaquamara「鳳凰木」(2016)の「髪にからまる カーネーション」以下の節は、この鮮烈な詞章から「お蔭を蒙っ」ている(大西巨人「詞の由来吟味」)。タイトルはやや粗雑。

折々の歌詞(31)

折々の歌詞(31)

人は闇の中で 光を求め/光の中で闇を求め
今いる場所が光か闇か/わからないなら クワガタ以下

 PENICILLIN

「hyper kids~東海大学物語~」(2006)座右の銘にしたい。学生時代に余程「クワガタ」の印象が強かったのか、「男のロマン」(1997)においては点景ではなく主題に。

折々の歌詞(30)

折々の歌詞(30)

同じ言葉なのに 優しさが見えない/季節が変わる場面

 PENICILLIN

マザー・グース(1997)その「言葉」は愛を伝える「言葉」だっただろう。恋人たちの気持ちが途切れてしまったとき、「さよなら きっと忘れてあげる」という「言葉」に「優しさ」を込めた。泣き疲れた恋人への子守唄。

折々の歌詞(29)

折々の歌詞(29)

あの路地裏で 僕が掲げた つぎはぎだらけの「さようなら」

 ムック

「路地裏、僕と君へ」(2004)「マエストロ」のように長い手足で舞い踊る逹瑯は筆者の憧れ。「ずっと遮光していた空は 今 空になった」で「空」をソラ、カラと読ませるレトリックは面白いが、「是空」のクウ=skyは誤解。

折々の歌詞(28)

折々の歌詞(28)

今の僕に必要なこと すべて無くして途方に暮れること/誰にも救いを求めず 自分圧し殺してしまうこと

 ムック

「我、在ルベキ場所」(2003)タイトルの「我」をワレではなくワガと読んでいたが、正しかった。内面の観照が「必要」だと分かる「僕」は、それを自閉だとも感じる。気高く孤立せよ。