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折々の歌詞

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2019年5月の記事一覧

折々の歌詞(110)

折々の歌詞(110)

容姿は幼稚で陽気な様でも/酔うと異様に妖艶なヤツ

 布袋寅泰

「バンビーナ」(2000)惜しみなくばらまかれた低俗、粗野な語彙、それらの合成である「暴走ボディー」「ロリータ・ウィンク」「ハートのジッパー」などが原色の色彩を放つおもちゃ箱の世界。油断していると、いかなるフレーズもことば遊びの材料にされる。手がつけられない奔放な想像力。

折々の歌詞(109)

折々の歌詞(109)

何にもないって事 そりゃあ/なんでもアリって事/君の行きたい場所へ何処でも行ける

 hide with Spread Beaver

「ROCKET DIVE」(1998)速さ、軽さ、高さ、広さのイメージが一貫しているが、浅薄ではない。「胸のミサイル」「エンジン」「ロケット」の物質性が、無邪気なファンタジーと調和している。

折々の歌詞(108)

折々の歌詞(108)

何度目の太陽だ 何度目の月だ/伊達や酔狂じゃねぇ/パワー・イン・ザ・ワールド

 エレファントカシマシ

「パワー・イン・ザ・ワールド」(2004)冒頭の詞章、また「ここは一体何処だ?/21世紀の ここは東京だ」、あるいは「山手線の中」、「俺」は自分が存在する時間と空間の座標をはっきりと把握できず、常に「何度も探し辿り着いた」を繰り返すが安住の地は見つからない。探し求める目的地は、結局、「気に入っ

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折々の歌詞(107)

折々の歌詞(107)

どうして 歴史の上に言葉が生まれたのか/太陽 酸素 海 風/もう充分だった筈でしょう

 椎名林檎

「本能」(2000)創世記のスケールで語り起こされた「歴史」がタイトルと響き合い、以降の「生命」、「衝動」、「劣等感」、「真実」などが神話的原罪の暗示となる。ワンフレーズで類型的情緒を脱し、普遍に達した。

折々の歌詞(106)

折々の歌詞(106)

背が伸びるにつれて 伝えたい事も増えてった/宛名の無い手紙も 崩れる程 重なった

 BUMP OF CHICKEN

「天体観測」(2002)漠然たる意気込み、「模糊たる崇高さ」を排した叙事的詠法で
正確で鮮明な視覚的イメージ、比類ない情緒を実現した。絶唱。

折々の歌詞(105)

折々の歌詞(105)

幾千光年の憂鬱が/降りそそぐ

 THE BACK HORN

「幾千光年の孤独」(2001)  谷川俊太郎「二十億光年の孤独」、マルケス「百年の孤独」、「鳥獣戯画」、「絵画に閉じ込めた向日葵」(ゴッホ)、「太陽のたてがみ」(ユング)などさまざまな次元で間テクスト的な読みを要求している。
「顔のないキリスト」「十字架」といった神学的世界観、宇宙の広がりを暗示しながら、いかなる関係も世界、他者とむす

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折々の歌詞(104)

折々の歌詞(104)

小さな僕でも見上げた夜空 雲を突きぬけて 飛び出せるハズ oh yeah!

 SOPHIA

「ミサイル」(2001)「パンツを突き破って 君を突き破って 僕もツキまくって」と
タイトルは明確にファルスの象徴。
日常に寄り添いながら「男達」の屈託を軽快な諧謔で笑い飛ばす。
「デスクのあの娘」は一遍のヒロインにはなりえず、「ミサイルマン」の「自爆」は無軌道未分化な衝動、性欲。

折々の歌詞(103)

折々の歌詞(103)

農業 校長 そして手品/愛と平和と鳩と手品/友情 努力 勝利 手品

 水中、それは苦しい

「農業、校長、そして手品」(2011)タイトルについて、ジョニー大蔵大臣は「僕のお父さんが元教員で、校長も勤めて定年退職したんですけど、今は趣味で手品をやっているんですよ」と説明している。それぞれのフレーズで押韻のように執拗に繰り返される「手品」は異化され、「手」「品」の結合がmagicのことだとは認識で

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