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折々の歌詞

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2019年6月の記事一覧

折々の歌詞(115)

折々の歌詞(115)

どこでこわれたの oh フレンズ

 レベッカ

「フレンズ」(1985)積み木を「ひとつずつ」丁寧に積みかさねていくように「メモリー」を再構成しながら、「こわれた」で大胆にすべて破壊する。
未練や後悔の陰鬱さ、マゾヒズム、自己憐憫ではなく、悲しみつくし、泣きつくしたカタルシス。

折々の歌詞(114)

折々の歌詞(114)

花が開いて 陽ざしに溶けて/君が笑った うたかたの午後

 THE YELLOW MONKEY

「SO YOUNG」(1999)読むもの、聞くものを、それぞれの「青春」の記憶へいざなう「午後」の描写。
結晶させる最後の決定的な形容詞は
「うたかた」しかありえなかった。
「うたかた」の周囲にちりばめられた「やわらか」「おだやか」な星座が、
「まぼろし」として否定されながら保存されたとき、この詞章は

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折々の歌詞(113)

折々の歌詞(113)

メンソールの煙草を持って 小さな荷物で/楽園に行こう 楽園に行こう 大きな船で

 THE YELLOW MONKEY

「楽園」(1997)冒頭「小さな荷物」「大きな船」のささやかな対比が、全編を、ひいては詩人の「楽園」観を一貫する両義的価値観をさりげなく暗示している。
「苦しみも憎しみも」には「スプーン一杯分の幸せ」が対応する。
「愛と勇気と絶望」、「赤い夕日」「黒い海」、「ひとりきり」「ふた

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折々の歌詞(112)

折々の歌詞(112)

優しいものはとても 怖いから/泣いてしまう 貴方は優しいから

 鬼束ちひろ

「私とワルツを」(2003)稚拙なまでに無造作な表現だが「優しい」の巧妙なたたみかけが
ほとんど涙にむせびながらの、真実のことばを現出させている。
叙情的三段論法。
「優しいものは怖い」、「怖いから泣いてしまう」、「貴方が優しいから泣いてしまう」から導きだされる「貴方は怖い」。

折々の歌詞(111)

折々の歌詞(111)

おととしの事件を/誰も憶えておらんように/オレもまた この風景の中に/消えてゆくのだろうか

 Number Girl

「ZEGEN VS UNDERCOVER」(2000)「殺風景」という熟語を異化、解体し、「殺す風景」というイメージを再構成した。
「見えん 実に見えん 殺風景」で、また当該詞章で、「殺す」主体が風景なのか語り手なのかもはや分からない。