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[全文無料・断片小説] 今ここに寄せては返すきみの命よ

日本では桜の季節はもう終わったんだよね。

南の国にいると、日本のようなはっきりとした四季はないから、桜の話とか見聞きしても、なんだか遠い異次元の世界のことでも聞いてるような気がしちゃってね。

でも、思うんだ。命って、いつでも震えているんだよね。

それは、全然わるい意味じゃなくて、波が寄せては返すように、月が満ちては欠けるように、命もいつも、膨らんでは縮み、やってきては去っていく、そうやって変化を続けてるって話なんだけど。

とはいえぼくらは、暖かくて柔らかい代わりに、ちっぽけで弱々しくて、脆くて傷つきやすい存在だから、力が足りなくなると、簡単に寂しさに震えることになるってのも、また事実でね。

南の国では、四季はぼんやりしてるけど、お日様の力は強いから、一日のうちの波打ち具合は、かえって極端だったりもする。

そして、その強烈な陽射しに照らされて、心が震える時だってあるんだ。人間は、寒さや寂しさだけに震えるわけじゃないからね。

でも、ほんとうは震えるってことには、いいも悪いもないんだよ。

生きている限り、ぼくたちは震え続ける。悲しさに震えるときもあれば、喜びに打ち震えるときだってある。

そのすべてがぼくたちの命なんだ。

そんなことを、ほこりっぽいネパールのカトマンズで、呪いと寿(ことほ)ぎが交差するレンガの都で、ぼくは考えていたのさ。

#アジア #ネパール #カトマンズ #茫洋流浪 #今ここに

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