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[全文無料: 小さなお話 007] 化石の人、あるいはkutsuna.orgというシンプル・イズ・ベストなサイトについて

[約3,700文字、5 - 6分で読めます]

みなさんはホームページを見るときにアドレスを直(じか)打ちすることがあるでしょうか?

「アドレスの直打ちって何のこと?」って思う人もあるかもしれません。

たとえば、このnoteというサイトのアドレスはnote.muです。もしみなさんがスマートフォンしか使わず、noteのアプリだけ使っているとしたら、そもそもこのことをご存じないかもしれません。

また、パソコンから見ている人でも、twitterやfacebookなど別のサイトでnoteを知り、それでおもしろいなと思って、お気に入りなどに登録して使っているとすれば、やはりnote.muというアドレスについてはほとんど意識することはないかもしれません。

つまり現代のスマホやパソコンのユーザ・インタフェイス (=UI) に慣れ親しんでしまえば、アドレスなどというものはその存在を意識しなくてもいいような、水や空気のごとき存在ということになります。

ところがこの文章を書いている人物は、電脳界の生きた化石でありまして、UIなる概念が大の苦手な人間なのです。

UIとはスマホなどの「端末と人間がやりとりする方法」に関わる全体的な概念です。たとえば、皆さんにもおなじみのディスプレイとかアイコンとかタップとか、そういったものがすべてUIを構成する要素なわけです。

この言葉は今使っている意味では、昔はただUIと呼ぶのではなく、GUI(グラフィカル・ユーザ・インタフェイス)と呼びました。というのはGUIの登場以前には、CUI(キャラクター・ユーザ・インタフェイス)という文字によるやりとりが、コンピュータの世界ではほとんどすべてだったからです。

若い人は知らないかもしれませんが、携帯電話が普及する前にはポケベルというものが存在しました。これは着信専用の小さな端末で、初め着信音のほかは、送信者の電話番号が表示されるだけの、ほんとうに最小限のCUIしか持たない、けれども固定電話しかなかった時代には実に画期的な移動(モバイル)端末だったのです。

話が横道にそれてしまったので、ここらで少しもとに戻りましょう。

四十年近く前からコンピュータなどのデジタル機器を使っているぼくにとって、それがスマホであっても操作の基本は文字入力です。

noteを見るのにはアンドロイドのスマホでアプリを使いますから、そのときはアドレスを入れようにも入れられないのですが、実はこれが、ぼくにとっては不便でならないのです。

けれどもこの不便さを説明していると、いつまで経っても本題に入れませんから、この文章ではその説明はやめることにします。

とにかくぼくはスマホを使っているときでも、アプリではなくchromeなどのブラウザからnoteを見ることが多いという話です。

そしてそこでアドレスを入力するときに、「n」を一文字入力すると、ソフトが勝手に「note.mu」と出してくれますので、とても快適にページの閲覧ができるという、とまあ、そんなくらいのことが説明したかったのです。

つまりぼくはアドレスなどという、多くの人はすっかり忘れてしまったか、あるいはそもそもその存在すら知らないような太古の遺物に未だにしがみついている、化石のような人間だということなのでした。

  ・  ・  ・

さてこれで、ぼくがブラウザのアドレス欄に「k」の文字を入力するとぱっと表示される「kutsuna.org」という最近お気に入りのサイトの話にようやく入ることができます。(←こんだけのための前振りかい!)

このkutsuna.orgというサイトは、ワードプレスというソフトを使って運用されています。

noteとかアメブロとか、はてなとか何とかなどなどなどという、企業が提供しているブログを使っている方には、これまたなじみのない話だと思いますが、「ブログを作ってお金を稼ぎたい」という人の多くがこのワードプレスというシステムを使っているのです。

といってもkutsuna.orgを運営している方は、お金もうけのためにそのサイトをやっているわけではありません。お金に関してもこのサイトには大変面白い話があるのですが、その話もまたの機会に取っておきましょう。

今回は、kutsuna.orgの極限までに切り詰められた、シンプル・イズ・ベストの禅的デザイン思想についてお話したいのです。

ワードプレスで作られたサイトは、さきほども書いたようにお金を稼ぐために作られたものがほとんどです。

すると、どうなるでしょうか。

noteを好んでお使いの方からしたら、見るに耐えない、ア○ブロよりは幾分かましにしても、なんだか画面ががちゃがちゃした、「これだからお金がからむ話はいやんなっちゃうんだよなー」とつい心の中でつぶやいてしまうような、そんなようなデザインになりがちなのです。

けれどもワードプレス自体は、デザインの自由度が極めて高い、とても便利なソフトなのです。多くのサイトがうるさいデザインになってしまうのは、閲覧者の心理を利用して、少しでも多くのページを閲覧していただいて、快適な滞在時間を提供することによって、できるだけビジネスの成果につなげたいという「人間心理の深い欲求」が作り出す結果にすぎないのです。

さて、われらがkutsuna.orgのデザインは果たしてどんなものなのでしょうか。

スマホで見たときの画面が驚異的です。

(実はこの文章を書くために初めてスマホ用の画面を見ました。ぼくはいつもスマホからでもパソコン用の画面しか見ていないもので(笑)。そして心から感心したのです!)

トップにはサイトのタイトルが小さめに表示され、その下に最新の記事タイトルと短い本文が、白い背景に黒い文字で表示されるだけです。

記事の長さはほんの数スクロール分ですし、右上にメニューボタンがあるのを見逃してしまったら、はじめて見た人は「このサイトなんだろう?」とだけ思って、すぐに閉じてしまうかもしれないような素っ気ない作りです。

現在世界中に存在する星の数ほどのサイトの中に、これに匹敵するシンプルなサイトは、ほとんど存在しないのではないでしょうか。

禅的感性の極みであり、世界に誇れる日本のサイトデザインだと言ってもかまわないでしょう。

(多分このデザインの大本は、どなたか外国の方が作ったものかとも思いますが)

さて、この素敵なサイトを運営しているのが、最近のぼくの文章中にこれでもかというほど登場していただいているKさん ( アドレスは http://note.mu/kutsunayuichiro ) なのです。

Kさんはシンプルで暖かみがあり実に魅力的な文章を書くかたですが、画家を志した経験もあり、ビジュアルのセンスにも底知れぬものを感じます。

最近は http://alis.to/users/kutsunay という別サイトに習作の画像も掲載しはじめていらっしゃるので、美術に関心のある方は覗いてみると楽しかろうと思います。

ところで、Kさんのワードプレスで作ったサイトを見ていて、一つ疑問に思っていることがあります。

ワードプレスでサイトを作るのは、noteでアカウントを作って記事を書くように簡単にできることではありません。

お金を稼ぎたい人は、自分で頑張って、あるいは業者に頼んで、ワードプレスのサイトを作ってしまえばいいのですが、Kさんはどうしてらっしゃるのでしょうか?

一旦設定さえしてしまえば、あとはnoteに記事を書くのとほとんど変わらないのですが、かなり複雑な最初の設定をどうやってなさったのか、もともとコンピュータのソフト屋のぼくは不思議に思ったのです。

それで可能性を三つ考えました。

一つは「業者に頼んだ」というものです。しかしこれは多分ないでしょう。Kさんの文章をnoteで楽しんでいる方ならご存知のように、彼は普段から質素な生活を心がけており、そういうことに無駄なお金をかけることはないはずだからです。

では、自分で独学で勉強して一からサイトを作ったのでしょうか? これもどうも違う気がします。彼は文系的な人ですが、何ごとも器用にこなす才能を持っているので、絶対ないとは言い切れないのですが、サイトの作り方を勉強する時間があったら、好きな文章を書くのに使うはずだと思うのです。

そこで、三つ目の可能性が有力になります。誰かインターネットに詳しい友だちに作ってもらったというものです。

これもまたKさんの文章を楽しんでいる方には周知の事実ですが、彼の交友関係は七つの海のごとく広大です。某有名脳科学者とお知り合いだったり、ぼくには細かくは分かりませんが、やはり美術界の名の知れた人とお知り合いだったり、とにかく彼の文章に切り取られるいろいろな人物像を見ているだけでも、まだ書かれる機会のない様々な交友の広がりがその背後にあることが想像されます。

「こんなシンプルなサイトが作れないかなと考えてるんだけど」ある日、飲み屋の席で、そうしたお友だちの一人に、そうKさんが話します。
「ああ、それなら簡単だよ。ぼくが作ってあげようか?」友だちは気安く答えてくれます。

そんな場面があって、あの世界に誇れる、今年度とし兵衛グッド・デザイン賞ウェブサイト部門大賞受賞作のサイトができあがったに違いないと、一人インドの安宿で深く納得しているわたしなのでした。

[2018.12.15 西インド、プシュカルにて]

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