[全文無料: 小さなお話 0.06] たしかに、なんとかなる

[約1,500文字、2 - 3分で読めます]

人生なんてものは、どうにかなるものです。

あるとき、うちの奥さんに、今後自分の収入がなくなることになっても大丈夫だろうか、と聞かれたことがあります。

働くのが嫌いなぼくは、そのとき週に二日しか働いていませんでしたので、ちょっと困ったなと思いましたが、「なんとかなるよ」と答えました。

うちの奥さんがその言葉を、「なんとかするよ」という意味にとらえていたのが分かったのは、それから数年が経ったあとのことでした。

というのも、ぼくは特に仕事を増やすこともなく、結果として収入のなくなった彼女の貯金が目減りすることになってしまい、数年のちになってそのことで相当ぶーぶーと言われる羽目になったからです。

こんな話を書くと、ほんとに自分はダメな人間だなと思うのですが、実のところ今のぼくは、自分が「ダメ人間」であることに誇りすら持っています。

人間界には一定数の「ダメ人間」というものが必ずいて、この人たちは普通に働いて、普通に社会に適応して生きることができないのです。

たとえば、芥川、太宰、三島といった人たちもこうした「ダメ人間」の好例です。彼らは文学者としては有能だったにも関わらず、社会に適応することができなかったために、自ら死を選ぶ以外になかった可哀想な人たちです。

そうした人たちに比べると、ぼくのような無能な「ダメ人間」は気楽なものです。

自分のような「ダメ人間」でも生きていていいのだ、という一点において世界を信じることさえできれば、稼げようが稼げまいが、社会のためになろうがなるまいが、どのようにでも生きていくことができるし、その状況を受け入れていく限り、幸せを手放さずにすむからです。

ダメでもともと、もともとダメなんだと開き直ってしまえば、「人生たしかに、なんとかなる」ということなのです。

もちろんぼくはただの凡人ですから、悟りを開いたおしゃかさまのように、日々心安らいで生きているわけではありません。

つまらないことで奥さんと喧嘩しては、この世のままならさに悪態をつく毎日ではあります。

それでも、「あーしなきゃいかん」とか「こーでなきゃあかん」とか、そういう世間的な先入観はずいぶん捨て去ってきましたので、世間並みの生活水準などなくても、自分なりの心の幸せというものを忘れずに生きていく方法は、なんとなく分かってきた気がするのです。

みなさんがもしも、周りにあれこれ言われたり、世間体が気になっていろいろ我慢したりしていたとして、そしてそのことがひょっとして苦しくてたまらなくなっているのだとしたら、一度そういう世間の常識というものを、ぽーんと放り出してしまったらいいかもしれません。

放り出したからと言って、すぐに楽になれるわけでもないのですが、とりあえず一旦そうやって常識を手放してみて、いざとなれば、そういう重荷を全部捨て去ることだってできるんだと、空想のレベルで思考実験をしてみることができれば、ふっと肩の荷が降りたりするものなんですよ。

人間生きていく以上、あれこれ悩みもつきものですが、とにかく人生なんとかなると考えて、肩から力を抜いて生きる習慣をつけると、ほんとに案外楽に生きられるようになるんです。

というわけでみなさん、「たしかに、なんとかなる」ということを、どうかご自分の人生で確かめてみてください。

その開き直りが、きっとあなたの人生を楽にしてくれますから。

[2018.11.25 西インド、プシュカルにて]

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