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[全文無料: 小さなお話 0.05] 2004年度滑って転んで脳挫傷受賞の思い出

[約1,100文字、2 - 3分で読めます]

「自爆ですか」

それは雨の日のことでした。

記憶も飛ぶほどに酒に酔っ払って、最寄り駅まで帰り着いたのはいいのですが、駅の出口辺りで滑って転んで人事不省となり、救急車で搬送されたことがあります。

夜中に救急隊員から電話で呼び出されるうちの奥さんが可哀想ですが、そういうアホな男と一緒になってしまったのだから仕方がありません。

入院して二日目くらいに若い院長の診察を受けて、今回の事故の経緯を説明したところ、冒頭の「自爆ですか」という言葉が返ってきたのです。

院長先生の下の名前は「大五郎」という古めかしい響きのもので、ぼくと奥さんとの間では親しみを込めて「大ちゃん」と読んでいました。

街の小さな病院なのですが、脳神経外科で入院施設もあり、多分先代から引き継いだ二代目なのでしょう、気さくでユーモアのある人であると同時に、とてもしっかりと目配りも効いて、大ちゃんは信頼できるお医者さんでした。

生まれて初めての入院で、一週間ほど泊まらせてもらうことになったのですが、若い頃から入院に憧れていたぼくには最高の経験となりました。

脳挫傷というと命に関わりそうな感じがしますが、ぼくの場合硬膜外出血と言って、頭を打ったために、脳の周りで脳を守っている硬膜というものと、頭蓋骨の間で出血が起こりました。

硬膜外に血が溜まることで脳が圧迫されるために痛みが起こるのですが、痛み止めの点滴を打ってもらうことで、痛みを感じることはほとんどない程度だったのです。

そうは言っても脳挫傷ですから、あとから後遺症が残るような深刻な症状が出ないとも限りません。それで様子を見るためもあって、一週間ほどの入院になったわけです。

奥さんに読む本を頼んで持ってきてもらったから暇つぶしには困りませんし、友だちが時折りお見舞いに来てくれるのも新鮮です。

二、三日経ってから、まだ桜の残る近所の公園に散歩に行ったのもいい思い出になりました。

あとから入院してきた若い男性は、ぼくよりももう一回り強く頭を打ったのでしょう、夜じゅう頭の痛みに呻いていたのは可哀想でした。

こちらは昼寝も十分しているので、それで寝られなくて困るということもなく、同じ入院している身なのに、いや、身だからと言うべきでしょうか、隣の男性にとても深く同情している自分に、なんだか不思議な思いを感じたものです。

とまあそんなわけで、人間ちょっとしたことで大怪我をすることもありますから、みなさんもよくよく注意なさってくださいね。

[2018.11.21 西インド、ブンディにて]

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