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[全文無料: 小さなお話 004] 愛こそすべて

[約2,000文字、3 - 4分で読めます]

ビートルズの名曲「愛こそはすべて」をご存知でしょうか。

"All you need is love" という英語タイトルを持つこの曲は、
「もし、きみに何の力もなくても、愛さえあれば大丈夫だよ」
と優しく、勇気づけてくれる歌です。

若いころのぼくはどこかひねくれ者で、なんだか社会を斜めに見ていましたから、テレビから流れてくる「愛」というような言葉には何か「うさん臭い響き」を感じていたものです。

けれどもビートルズの歌う「愛」には、世間一般で流通している「お金のため」や「社会の都合のため」に語られる「愛」とは何か違うものを感じていたんだなあと思います。

ぼくがビートルズをよく聴いていたのは、三歳年上の兄貴の影響を受けて、中学から高校にかけてのことでしたから、ビートルズという存在が世界にどんな影響を与えて、何を表現しようとしていたのかなどということは、まったく分からないながらのことでした。

けれども、ロックンロールから始まって様々な実験を続けていった、その多種多様な表現の裏側に、自分の求める何か大切なものがあるのだということに、おぼろな無意識のうちに気づいていたに違いありません。

ですからぼくは「愛」という日本人としてはどうにもバタ臭くて親しみの持てない言葉に対しても、ビートルズの歌の中で聴くときには、いやな気もせずに聴くことができたのです。

あれからもう40年の月日が流れました。

そうして今のぼくは、「愛」という手垢のついた言葉でも、きれいな水で丁寧に洗い、金銀の飾りを磨くときと同じように、丹念に磨きをかけてやりさえすれば、その言葉に潜む永遠の輝きを再び目にすることができるのだと知ることとなりました。

ぼくは二度目の結婚をしてから、もうじき二十年になります。

忘れもしない19年前の、9月20日に初めて会って彼女に一目惚れしたぼくは、それからひと月もしないうちに結婚を申し込み、式もせず、彼女の親に知らせることもせず、職場の先輩夫婦に承認になってもらって婚姻届だけを出し、二人の暮らしを始めました。

今振り返ってみれば、その行動は相手を思いやるという意味での「愛」という気持ちから出たものではなく、「恋」という一時的で身勝手な感情に導かれるままのものだったと思いますし、実際その後の二人の生活は、山あり谷ありで大嵐の連続で、何度かはこれでもうお仕舞いか、と思ったときもあるほどの、本当に大変なものでした。

何度も峠を越えてきた結果、20年近く一緒に暮らし続けているにも関わらず、互いに相手のあり方を十分受け止めることは相変わらずできないままで、つまらないことで喧嘩を続ける毎日ですが、この何年かは、二人とも初期仏教の瞑想を練習していることもあって、ようやく落ち着いた将来を想像できるようなところまでは辿り着きました。

そしてぼくは、「愛」という人間が生きる上でとっても大切な気持ちは、何よりもまず、自分を大事にすることから始まるのだと思うようになりました。

ぼくたちは親や周りの大人から無条件の愛情を受けることで、「自分が自分のまま存在していていいのだ」ということを知ります。

そうして、自分のありのままの生き方を大切にすることができるようになって初めて、周りの人間の生き方も尊重することができるようになり、それがやがて「他者への愛」として育っていくことになります。

相手への自分勝手な要求を「愛」だと勘違いをして、「愛の名」のもとに身近な人々をしばり、自分の周りの弱い人たちを支配しようとする人間もたくさんいます。

でも、そうやって「支配」することによってしか満足できない人たちは、本当は可哀想な人たちなんですよね。

自分が十分に愛されたことがないから、自分を大事にすることができなくて、どうすれば幸せになれるか分からないものだから、人を「支配」することでしか、自分の存在理由を確認できない、まったく可哀想な人たちなんですから。

そういう可哀想な人たちは残念ながら、ビートルズが歌う通り「どうにも救いようのない」人たちなので、無理に救おうとする必要はありません。
("No one you can save that can't be saved." 救いようのない人は、きみにも救うことはできない)

そのときぼくたちに必要なのは、そういう人たちにも分け与えられるだけの「愛」を持つことです。

自分を大事にし、周りの身近な人を大切にすることができれば、どんな悪人にも悪人なりの存在理由があることが分かり、その人たちにも、
・「愛」を分け与えてあげればいいのだ、
ということが分かるようになります。

今朝うちの奥さんは、ジャイプールという大きな街の瞑想センターにボランティアとしてお手伝いをするために、インドのおんぼろバスに揺られながら出発しました。

奥さんが十日間の合宿コースに参加している間、ぼくはしばらくの間一人でじっくり作文でもすることにします。

それぞれに自分の時間を大切にして過ごしたあとで、また新鮮な顔を合わせるときが楽しみです。

みなさんも自分の時間を大切になさってください。
そして、溢れてくる愛の力を周りの人に分け与えてあげてください。

「愛こそすべて」というビートルズの言葉を胸に、今日も力強く生きていきましょう。

てなことでみなさん、ナマステジーっ♬

[2018.11.24 西インド、プシュカルにて]

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