いつものモーニング

いつものモーニング

コーヒーが好き。

学生の頃、バイト先に尊敬している先輩がいて、よくごはんに連れて行ってもらっていた。その方もコーヒーが好きで、私が「コーヒーが好きなんです」と話すと、いろんな喫茶店に連れて行ってくれた。

学生の頃の私は、コーヒーが好きとは言っても、グリコのカフェオーレとか小岩井コーヒーとか、コンビニで買える範囲のカフェオレをコーヒーと思っていたくらい。
背伸びして友達と入ったスタバでは、友達と一緒でないと入れないし、「えらい高いコーヒーやな」って感想が出るくらいの知識だった。


そんな私を先輩が、自家焙煎のお店に連れて行ってくれた。

1枚板のカウンターとテーブル席が3席くらいで、60代後半くらいの小柄で物静かな渋いマスターがひとりでされているお店だった。

店内は間接照明でお昼なのに薄暗く、たぶんジャズだと思うようなピアノおの洒落た音楽が流れていて、よく行くマックやミスドなんかと違い、学生の私はやはり緊張した。私が喋ると品位を落とすと幼いながらも察知し、返事は終始小声になった。
ただ、不思議なことにその世界観が少し心地よくもあった。


私たちがカウンターに座っていると、マスターが目の前でネルドリップで抽出したばかりのコーヒーを出してくれた。

丁寧に丁寧に淹れられたコーヒーを、先輩は当然のようにブラックでたしなむ。(え…!先輩、ブラックやん…!)

今までカフェオレがコーヒーと思っていた私には、かなりの衝撃で、かっこよくて、何もわからんけど、なんか砂糖やらガムシロップやらを加えてしまうことが失礼に感じた。

飲めるかわからんのにその日、生まれて初めてブラックで飲んだ。


そしたら美味しかった。
苦かったけど、苦味を感じながらも最後まで飲めた。
それくらい美味しかった。

コーヒーってこんな味やったんや。
今まで飲んでたのは、いろんな味が混ざってるやつやったんやなと気づいて、ちょっと恥ずかしくなった。


それから私はコーヒーが本格的に好きになって、いろんなカフェに飲みに行ったり、その中の何店かで働きもしたりした。
サイフォンチャンピオンのお店に直談判しに行って働かせてもらったり、本で見つけた自家焙煎で有名なお店に就職しようと試みたり、エスプレッソを知ってから本場のエスプレッソを知りたくて遂にはイタリアにも行った。最高だった。

エスプレッソマシンをお家に置くのはできなかったけど、朝はモカで淹れたコーヒーとトースト。
トーストはバターをたっぷり溶かして、仕上げに黒胡椒をかけるのが美味しい。今は友達からのイタリア土産でnutellaがあるので、チョコたっぷりのトースト。

毎朝ほとんど変わらないモーニングやけど、コーヒーが好きやなってぼんやり思える、私の大好きな時間。


Coffee Advent Calendar 2018 14日めの記事です。
・この記事は、ひトリ芸大生へ掲載した記事を加筆・修正したものです。

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