見出し画像

音楽のパスティーシュ

DTMをやっていると、上達のために「コピー」を勧めている方をよく見かける。たしかに、耳コピであれスコアを見ながら打ち込む作業であれ、コピーはとても勉強になると思う。ただ、私の場合はひとつ問題があって、他人がやっていることをそのまま真似るのが嫌いなのだ。小学校低学年のころ習字を習ったが、お手本をなぞるのが大嫌いでやめてしまった。

だから、年齢を重ねて音楽の時間も限られる今、ほかの人の作った曲の「コピー」に時間を使う気にはなれない。でも「パスティーシュ」は大好きだ。

私がパスティーシュという単語を知ったのは、清水義範さんの作品から。清水さんの場合は文体の模倣だが、音楽のパスティーシュもある。日本のこの分野の第一人者も、清水さんだ。義範さんではなくミチコさんだが。

たとえば、清水ミチコさんがユーミンを真似る時は、ほかのものまねタレントが声、顔、歌唱法を真似るところ、歌詞やコード進行といった作風まで真似して曲を作ってしまう。聴いていると、爆笑しつつ、とても尊敬してしまう。

私の場合、「自分の音楽を人に届けたい」「音楽で有名になりたい」「音楽で生計を立てたい」というモチベーションは昔も今も0に近い。でも、音楽づくりは趣味として飽きずに続けているし、ここ2年はTwitterで深夜の2時間DTMにもよく参加している。楽しめている理由のひとつが「パスティーシュ」なのかもしれない、と最近気づいた。

好きなミュージシャンの曲をリファレンスにして、それに近づけた雰囲気を纏った曲を作るのは面白い。私の場合はRuss Freeman、Pat Metheny Group、T-Squareといった人たちを目標にすることが多い。「リファレンスにして作る」という言い方もできるけど、もう少し対象への尊敬や愛情が入っている。

また、出された「お題」に従って、作ったことのないジャンルを「それっぽく」鳴らす方法を知るのも楽しい。2時間DTMにはそういう機会がたくさんあり、できた曲の良し悪しはともかく、作っていて飽きない。

もちろん、実際にはうまく似せられないことも多いし、そのための知識も技術も不足している。でも、少しでも似た音が出た時は意外なほど満足感がある。作風を広げつつ、その過程で自分の変わらない部分、頑固なクセや個性も見えてくる。

自分がDTMで何を楽しんでいるのか、少しはっきりした気がした。
パスティーシュ、楽しい。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?