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#73 アノニマスデザイン

職業柄、毎週欠かさずに見ているTV番組があります。Eテレで毎週木曜の午後10時50分から放送している、「デザイン トークス+(プラス)」です。

前々回に見たときのテーマがとても興味深かったので今回取り上げてみたいと思います。テーマは「アノニマスデザイン」。

「アノニマス」という言葉は、英語でAnonymus=無名の・匿名のという意味。つまりアノニマスデザインとは「無名性のデザイン」のことで、実際そのデザインが昔からあるもので、誰がデザインしたかすでに分からないデザインのことを言います。長い年月を経て、実用性の観点から、無駄な部分が自然淘汰されてきた究極のデザインとも言えます。

この回のゲストはプロダクトデザイナーの深澤直人氏でした。無印良品のデザイナーで有名ですね。グッドデザイン賞の審査委員長もされています。壁にかけるCD再生機やドーナツ型の加湿器、auの携帯電話「INFOBAR」をデザインしたことでも知られています。

深澤氏がアノニマスデザインに取り組むようになったキッカケとして、高浜虚子著『俳句への道』の中のくだり、「俳句はありのままの現象を詠うもの」という一言に出会って、デザイン観が大きく変わったからだと言っていました。デザインとは、そのデザイナーの自我が出るのが当たり前だと考えていたのが、自我を出さず日々の生活からにじみ出てくるデザインこそ、究極なのではないかと思うようになったと。

日本にはアノニマスデザインを表す言葉として、「民芸」という言葉があります。「民藝運動の父」と呼ばれる柳宗悦が定義した言葉で、彼が作った日本民藝美術館の現館長も深澤氏は務められています。いわゆる「民芸」という言葉に、そこまでの意味があったのかと知り驚きました。


一人の才能あるアーティストがその時々に生み出すデザインも素晴らしいですが、長い年月をかけ、たくさんの人の手を経てできたデザインも素晴らしいのだと改めて思いました。そしてそのたくさんの人の手と時間をかけずに、その領域へアプローチを試みる深澤氏は、やはり「極めてきた人」だという印象を持ちました。

今後も興味深いテーマが控えている番組なので、ここでオススメさせていただきます。


追記:
イラストにも描きましたが、生物の姿格好は神が造りし究極のアノニマスデザインと言えるのかもしれません。

モーニングツーで連載している漫画『天地創造デザイン部』はそんなところを狙っているのかもしれません。神様が新しい動物のデザインを外注に頼むという漫画です。こちらもオススメしておきます。


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