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船出から大冒険の予感しかない始まりの日(前)

「それでは次に5年生の担任の発表を行います。」

新年度初日からの怒涛のような年度開始の仕事に追われているうちに、

あっという間に始業式が来てしまった。

異動してきた先生の紹介があり、そのまま新年度の始業式へ、

校長先生も異動してきたばかりなので、子ども達への話も短めに終わり、

担任の発表の時間がやってきた。

通常この担任発表もある始業式の時には、事前に新クラスの発表と、

その振り分けが済んだ状態で体育館に集まっていて、

呼ばれた担任は、受け持ちクラスの子ども達の前に立って、初顔合わせとなる。

1組の主任が呼ばれ、2組の姉さん先生が呼ばれ、3組の僕が呼ばれ、子ども達の前に立つと。

3列になっているはずの列がこんがらがって分からない。

子ども達の半分ほどは、自分たちの列を作って並んでくれているのだが、

残りの半分ほどは、仲のいいもののところに動いて話しかけに行ったり、

だんご塊をつくって、こちらを観察するように、

じろじろとした視線を飛ばしながら、ぶつぶつと何かを話していたり、

それが、真っ直ぐに列を作って座っている間間に、クラスをまたいでいくつもできているので、

3本の列が、絡み合った毛糸玉のような状態になって、

どの子が何組なのか、判断しずらい状態になっていたのだ。

「これは思っていたよりもすごいのう。」

主任の先生はちょっと困った笑顔で僕と、姉さん先生に話しかける。

そしてその後、続けて二人に提案してくれた。

「始業式が終わったら、早速学年会を開こう。3クラス一緒に、学年通信をみんなで共有したい。いいかな?」

僕と姉さん先生は、「よろしくお願いします。」

と二つ返事で応じるのだった。

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クラス編成が決まった後、3人で最初のあいさつを交わしたときに、

主任の先生がいきなり提案してきたことに、僕は驚いた。

「二人は学級通信とかは書きますか?あ、いや、書く、書かないはそれぞれ自由にしてくれていいんだ。ただ、僕は毎日学年通信を書くので、それを子ども達と、毎日よんで共有してくれたら嬉しい。もちろん朝の時間に何かほかのことをしたいというのは、それぞれでやりたいようにやってもらって構わないんだけど、この学年通信は、毎朝新聞に目を通して日本の、世界の出来事について触れてみたり、今子ども達の日常で気を付けてほしい事や、子ども達の学校での様子なんかも紹介していくので、できれば読んでくれたらと思ってます。」

そんなにしてもらって読まないなんてことがあるものか。

僕は、主任のその提案のすごさに、ただただ、ありがとうございます。

と返すのがやっとだった。


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