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不登校先生 (6)

「・・・・・すみません、予約が埋まっていまして。

     一番早くて5月の終わりでしたら診ることができますが・・・」

「・・・・申し訳ありません、完全予約で診ていまして、

            八月半ばまで予約が埋まっています・・・・・」

「・・・・診療の救急病院もありますので、そちらの番号を・・・・・・」

「・・・・・初診の方は、予約が2か月ほど先になりますが・・・・・・」

電話を片っ端からかけ続けて2時間が過ぎた。

まだ、受診できる病院が見つからない。すでに30件以上は電話を入れただろうか。

校長先生への連絡を終わらせて、次に行ったこと。

”受診して今の状態を診断してもらう”

そのための病院を探すことだ。

だが、電話すれど電話すれど、

即日予約無しで初診を診てくれる病院は見つからない。

断られる度に、心の中の絶望感が膨らんで行く中で、

ある事実の背景について、今の自分の状況と重ねて考えていた。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

日本の自殺者数は年間2万人を超える。以前は3万人を超えていた。こんな

に1年間に自ら命を絶つ人がいるのは、他国と比較してもワースト3に入る

ほどに多いという悲しいこの国の事実。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

もしかしたら自殺してしまった人の中には、

今の自分と同じ人も、沢山いたのではないだろうか?

突発的に「死のう」と思ったけど踏みとどまれた。

けれど、そんな心の状態をなんとかしようと、

病院に受診しようと

試みて、試みて、試みるうちに

断られ、断られ、断られ続けて

一度は踏みとどまれた、自ら命を絶つ選択を、

諦めと共に、もう一度、今度は絶望を噛みしめながら

誰にも助けてもらえない悲しみの中で、

自ら命を絶った人が、多くいたのではないだろうか。

瞬間踏みとどまれていても、心は既に砕かれていて、

そんな状況で、必死に、何とかかき集めた正気のかけらで、

藁にもすがる思いで、自分自身の病んだ心を助けてほしいと

声をあげても、その声は届かない。

自分自身を守ってくれた心の中の客観的な自分では、

そんなことを考えながらも、

自分自身を診てもらえるところが全く見つからないまま、

絶望の足音がひたひたと近づいてきている恐怖も

心の中で大きくなっていくのを感じた。

↓次話





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