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ゼロから学べるフェルミ推定 超実践

トトロのとなりです。
定期的に皆さんが明日から使える情報、雑学をご提供しております。

1. 背景

先日「ゼロから学べるフェルミ推定」という記事を書いたところ、非常に好評でしたので、今回はそちらの第二弾を書かせていただきたいと思います。
まだ、読んでいない方がおられましたら、皆さんが明日から使える情報になっておりますので、是非読んでいただければ幸いです。

ということで、今回は前回ご紹介した素早くざっくり推定する方法から少し発展して、時間をかけながらより精度の高い推定をする方法について、実例を交えてご紹介したいと思います。

2. フェルミ推定 概要

フェルミ推定とはほんのわずかのデータから桁レベルの粗い推定をする手法のことで、前回の記事で"ざっくり"した数字だけを使って素早くおおよその値を推定できることが分かったと思います。
一方、フェルミ推定を実施するときには、まず以下の2つを考える必要があります。

推定に要する時間 or 推定結果の精度

フェルミ推定では、推定結果の精度を上げる方法があります。それは、計算に使用する項目を細かく区切って、論理的に数字を見積もっていいく方法です。例えば、"日本にぬいぐるみはいくつあるか?" を考えるときに、日本人の1人に1個くらいとか2人に1個くらいとかというように人口全体で考えるのではなく、男と女、0-5歳・6-10歳・11-20歳・21-30歳・31-40歳・41-50歳・51-60歳・61歳以上 のように細かく区分けして、それぞれで所有率を見積もって、合計することで全体の個数を推定する方法です。このようにすることで、感覚的に見積もった数字の誤差が少なくなり、結果として推定の精度が上がります。さらに結果の根拠が論理的になります。
一方、デメリットとして推定に要する時間がかかることが挙げられます。そのため、シチュエーションによって速度か精度のどちらが重要かを使い分けて、推定をしていただけばと思います。
※より論理的思考力を高めたい人には、細かく区分けする方法を練習することをオススメします。

3. フェルミ推定 実践

それでは早速、精度の高いフェルミ推定を実践したいと思います。今回は以下の数を実際に推定いたします。

日本に乗用車は何台あるか?

推定の方法は何通りもあり、推定する人によってアプローチの方法が違いますが、今回は以下のように求めてみたいと思います。

日本の乗用車台数 = 日本の世帯数×1世帯あたりの平均所有台数

今回の考え方として、バスや電車などの公共交通機関の整備度合いによって車の必要性は変わってくるため、乗用車の所有数は都会と田舎で結構変わるだろうという予想がつきます。そのため、日本の中でも都会・田舎と区分けします。さらに車は高いモノであることから、所有率、所有台数は世帯年収に比例すると考えられます。そして、世帯年収は世帯主の年齢にある程度比例すると考えられるため、世帯は世帯主の年齢で区分けしたいと思います。

それではまず、日本の世帯数を推定したいと思います。
日本の人口を1億2千万人として、都会と田舎の人口比は1:1と仮定します。
都会とは、仮に東京、神奈川、埼玉、千葉、愛知、大阪、京都、福岡としてみます。世帯あたりの平均人数は田舎の方が多いと考え、都会の平均世帯人数を2人、田舎の平均世帯人数を3人と仮定して、都会、田舎の世帯数を求めると、表1のようになります。

表1. 都会・田舎における人口と世帯数の推定値

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次に、1世帯あたりの乗用車の平均所有台数を推定していきます。
そのために、世帯主の年齢別の世帯割合を考えてみます。都会の方が若年世帯数が多く、田舎は高年齢世帯になるにつれて世帯数が増加する仮定して、年齢別の世帯割合を以下のように仮定します。

世帯主年齢/世帯割合
都会|20代/20%|30代/20%|40代/25%|50代/25%|60代-70代/10%
田舎|20代/10%|30代/15%|40代/20%|50代/25%|60代-70代/30%

これにより都会・田舎それぞれについて世帯主の年齢別の世帯数がわかります。次に、年代別の平均乗用車所有台数を考えてみます。所有率、所有台数は世帯年収に比例すると仮定し、また田舎は都会よりも多くの人が車を所有しており、一人あたりの所有台数も多い仮定します。また、60代以上は外出頻度が低下すると考え、所有率が少し下がると仮定します。

世帯主年齢/平均乗用車所有台数[台]
都会|20代/0.2|30代/0.4|40代/0.8|50代/1.0|60代-70代/0.8
田舎|20代/0.6|30代/1.0|40代/1.6|50代/1.8|60代-70代/1.6

これらのデータより、都会と田舎の乗用車台数が表2のように求められます。

表2. 都会・田舎における世帯主割合と平均乗用車所有台数の推定値

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以上により日本にある乗用車の台数は以下と推定できます。

日本の乗用車台数 = 日本の世帯数×1世帯あたりの平均所有台数
= 都会
の世帯数×1世帯あたりの平均所有台数 + 田舎の世帯数×1世帯あたりの平均所有台数
= 3,000 万世帯 × 0.65 台 + 2,000 万世帯 × 1.46 台
= 4,870 万台

よって、以下が結論です。

日本に乗用車は4,870 万台ある

4. フェルミ推定結果の現実性検証

さて、ここからは今回の結果が現実の数値とどれだけ近いかを検証してみたいと思います。自動車検査登録情報協会(財)によれば、2015年の登録自家用車台数は6,028万台でした。概ね推定できていますね。良かった。

今回の推定結果が実際の数字よりも少ない推定値になってしまったのは、計算過程で使用した数値のどれかを低く見積もり過ぎたことが原因かもしれませんね。

そこで、原因を探るために推定値と実績値を比較してみることにします。平成27年度の総務省統計局の都道府県別の世帯人数データをみると都会(東京、神奈川、埼玉、千葉、愛知、大阪、京都、福岡)と田舎の人口・世帯数は表3のようになるみたいです。

表3. 都会・田舎における人口と世帯数の実績値

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参考データ:総務省統計局 都道府県,世帯人員別一般世帯数と世帯の種類別世帯人員(平成27年)(https://www.stat.go.jp/data/nihon/02.html)

この数値と推定値にはどの程度差あったかを分かりやすくするためにグラフ化してみました。(図1、図2)

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図1. 都会・田舎における人口 推定値 vs. 実績値


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図2. 都会・田舎における世帯数 推定値 vs. 実績値

なるほど。今回乗用車の数の推定値が低くでてしまったのは、乗用車所有台数が多い田舎の世帯数を700万世帯も低く見積もってしまったことにありそうですね。これは田舎の世帯あたりの平均人数を3人と予想しておりましたが、実際は2.4人であったことが世帯数の過小見積もりにつながってしまった原因のようです。

さらに実際の都会と田舎の乗用車の数をみていきたいと思います。平成27年度の自動車検査登録情報協会(財)の都道府県別の乗用車数データをみると都会と田舎の乗用車の数は表4のようになるみたいです。

表4. 都会・田舎における乗用車の実績値

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参考データ:一般財団法人 自動車検査登録情報協会 都道府県別・車種別自動車保有台数(平成27年)(https://www.airia.or.jp/publish/statistics/index.htmld)

この数値と推定値にはどの程度差あったかを分かりやすくするためにグラフ化してみました。(図3、図4)

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図3. 都会・田舎における1世帯あたりの平均所有台数 推定値 vs. 実績値

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図4. 都会・田舎における乗用車台数 推定値 vs. 実績値

こうしてみると、都会の1世帯あたりの平均所有台数も少し低く見積もり過ぎていたことが分かります。推定では1世帯あたり0.6台くらいかなと考えていましたが、実際は0.8台だそうです。この差も結構大きく最終的な台数を低くさせた要因となっています。

結果、都会も田舎も両方ともの乗用車の数が実際の数よりもわずかに低かったことがわかりました。しかし、これは悲観的になることでもなんでもなく、フェルミ推定ではこのあたりは誤差の範囲となります。
それよりも、本質としてはフェルミ推定を使用することで、最初は見当もつかなかった日本にある乗用車の数(約6,000万台)を約5,000万台と推定できたことが大きな成果となります。

そして、今回はたまたま実際の統計データが存在しましたが、フェルミ推定の対象となる数字は、正解のデータがないものが主体となります。
もっというとそれこそがフェルミ推定の真価が問われるところとなりますので、推定結果に自信と説得力が生まれるように、日々日常の数を推定してみて正解のデータがある場合は今回のようにチェックしてみるといいと思います。

5. おわりに

以上が、論理的かつ精度の高いフェルミ推定のやり方になります。これを日々実践するかしないかで、世の中の数に対する感覚が大きく変わってくると思います。

ぜひ皆さんも身近な数を推定してみるクセをつけてみて下さい。

最後に今回のフェルミ推定から得た学びを一言でいうと

どんな数でもよく考えればなんとなく分かる

みなさん、今日も良い一日を。

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