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なんでやねん! (その1)

ギャグ系に頑張るとつげき東北です。
昔書いたやつです。
その2はこちら

ねーちゃん、なんでやねん

 私には4才年上のねーちゃんがいる。初めの「なんでやねん!」は、幼き頃のねーちゃんに対してである。
 小学校低学年のころのねーちゃんは、はっきり言ってウソつきであった。それも、単にちょっとした弾みでウソをつくタイプの「守り型ウソつき」ではない。攻めてくるのである。例えば次のように。
弟(幼稚園児の私)「ねーちゃん、スズメは近づいたらすぐ逃げるのに、ハトはなかなか逃げへんねぇ」
姉「そうや。あたりまえやん」
 なにが当たり前やねん。
姉「ハトにはな、2種類いるねんで」
弟「ほんま?」
姉「ハトでも、近づいてもなかなか逃げへんハトと、すぐ逃げるハトがおるやろ」
弟「うん」
姉「遅いほうをノロマバト、早いほうを急(きゅう)バトって言うねんで」
 めっちゃウソやんけ! 「ノロマバト」は許すけど、「急バト」てなんやねん。幼心に、「これひょっとしてウソちゃうん?」とか思ったわ。
 
 このように、何もないところからウソを体系化してくるのである。言ってみれば、「前に出るタイプのウソつき」なのである。これは凶悪である。ねーちゃんのウソに引っかかった経験をあげれば、枚挙にいとまがない。例えば、私が近所の空き地でテントウムシを見つけたときのこと。普通の「ナナホシテントウ(赤字に、黒い斑点七つ)」ではなく、子供の間で「幻」と言われていた「カメノコテントウ(カメの甲羅に似ている)」である。喜び勇んで持って帰ったら、ねーちゃんの登場である。
姉「そのテントウムシは毒を持ってるからあぶない。捨てなさい」
 だまされて捨ててもうたで! しかも、後でねーちゃんの虫かご見たら、カメノコテントウ入っとるで! 昨日までそんなんおらへんかったで。
 あまりにも悔しかったので母親に泣きついた。
弟「お母さん、ねーちゃんが僕のテントウムシ取った」
母「ほんまやの? ねーちゃん」
姉「ううん。道にいた」
 おらんわ!!!!!
弟「ぼくのやつ~」
 幼い私は泣き出し、さすがのねーちゃんも苦しくなってきた。
 ここで「ねーちゃんが見つけた」と言い張るなら、凡庸な人間である。しかし、姉は極めて優秀な人間だから、言うことが違う。
姉「わかったわかった。このテントウムシ、とつにあげるわ。ねーちゃんは我慢する」
母「なんや、やっぱりとつがウソついてたん。ねーちゃんはエライね」
 待てや! おかん、だまされたらあかんで。このねーちゃん、黒いで。 カメノコテントウ毒持ってるって話はどこいってん!
 
 ねーちゃんのウソは、まだまだこれだけではない。
姉「クリスマス以外でも、寝るときに靴下置いといたらサンタさんがくる」
 めっちゃ期待して、毎日靴下置きまくったわ。サンタどころか、おかんに「靴下脱ぎっぱなしにしたらあかんやろ」て、怒られただけやで!
 
姉「アリは甘くておいしい」
 酸っぱいだけやったで……ほんまに食ってもうたやんけ!
姉「ハチに刺されそうになったら、死んだフリをすれば刺されない」
 中2ぐらいまで信じとったわ! 何回も刺されたで!
姉「うわぁ、もう四月やのに雪が降ってきたよ~」
 降ってへんで~!
 
 ……何か精神的苦痛が残りそうなのでこの辺りでやめておくが、今思い出しても、この時期はまさに修羅であったと痛感する。とは言え、今となっては懐かしい思い出でもある。現在のねーちゃんは、優しくて頭の切れる、私の尊敬する人物である。
 あ、そうそう、ねーちゃん。確かにウソつきは直ったけど、たまに出る信じ難いほどのオヤジセリフだけは、やめて欲しい。最近の電話で言った言葉。
姉「(略)車まで買うたら、バッチグーやで」
 明らかなことだが、今時バッチグーなどという言葉を使う人間は、得てしてバッチグーではない。

バカ田舎公立高校のなんでやねん

 私の通っていた高校は、県下でも有数(?)のすばらしい「非」進学校であった。どの程度の進学率であるかは、高校の入学式にいってみればわかる。私は入学式の当日にいきなり
「お前いま、ガン飛ばしたやろ」
と凄まれたのである。
 なんでお前ら、いきなり知らんヤツに闘いを挑むねん。
 このように脳味噌まで筋肉で出来ていそうな様子だから、ここが進学校であるはずがないのである。女子生徒のスカートが極端に短いのは当たり前、男子生徒の派閥抗争の中心人物がモヒカンであるなど、まるでマンガのような状態であった。友達などは暴走族のチームを結成して、チームのシールを私にくれたほどだ。シールには「砂墓天」と書かれている。どうやら「サボテン」と読むらしい。このシールごっつ恥ずかしいで!!! どこに張ればええねん!
 
 このような学校でも、大学入試が近づくとそれなりに雰囲気が変わるものだが、変わるのは雰囲気だけで、残念ながら頭の中身は変わっていない。
「東北、学生って英語でなんて言うん?」
 おい! もっとがんばって行こうや(泣)。 中学校で習ったで!

 とは言え、これくらいのことで驚いていてはいけない。
 
 例えば数学。証明問題に使う用語というのは自然に身に付くもので、「故に」「ここで」「明らかに」などが主流なのだが、ある知人の答案を見たところ、日常語がふんだんに使用されているのである。
「~と考えたが、失敗である」て書くな! ミスったことを明確に伝えてどうすんねん。てゆーか、はよ答え導けや!
その後に続く「さて」もやめろ! なんで気分転換してんねん! どこへ行ってまうねん!
 計算どころか積分記号 ∫ まで間違えている。「∮」 何やら少し高度でゴージャスな積分である。
 無論、最後の最後まで間違いは続く。私の答案では「よって明らかに 与式 <0 である」が結論だが、彼の答案では「よって朗らかに 与式<0 である」となっている。結論だけ強引につじつまを合わせるのはともかく、なに朗(ほが)らかに証明してんねん! さわやかでも偏差値変わらんで! 模試採点者の爆笑する姿が目に浮かぶわ。 解っていない者はとことんわかっていない。国語からやりなおしなのである……。
 
 物理をやらせても同じようなものである。力学で、物体が受ける物理力を図示する問題が出たのだが、以下が私と友人の答案である。 


 物体潰れるわ! 力加えすぎやで! 正体不明の未知のエネルギーかかっとるやん。
 
 ムリに幽霊やオバケを持ち出さずとも、私の学校は色々な意味で「怖い」場所だったのである。

新しいワープロソフト、なんでやねん

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