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ショートショート

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ショートショート小説
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記事一覧

朝子さん|ショートショート

耳裏にひと吹き、左手首にひと吹き。 ついでに左手首は、そのまま腰元をスススと擦って。 ふわ…

君の沼|短編小説

生まれてこの方、あんなに美しいものをみたのはあれが初めてだった。 月の明かりが反射して、…

ALL!!|ショートショート

『フラペチーノ行かんか?』 『行くでござる〜』 連休中日。響子からのお誘いメッセージに奏子…

波のように、泡のように|短編小説

一 海 ジャブ、ジャブ、と波打ち際を歩く。 波が引く度に一歩二歩と歩いて、波が来たら止ま…

UMA同好会|ショートショート

『UMA』って、ご存知だろうか。 Unidentified(正体不明の)Mysterious(謎に満ちた) Animal…

坂の上のさかいめ|ショートショート

ざくざくっとふみしめた下柱の感触は、クッキーに似ている。 それなら冷たくて、土のような、…

今日のご飯は、夢の外│ショートショート

その日、彼が『定食屋ササミ』に行くと、カウンターには背筋の綺麗な青年が座っていた。 「こんなにゆっくり、食事をしたの、久しぶりです。」 青年が言った。 「食べ物を残すのも、久しぶりです。」 笑顔は、はにかんでいて幼さない。 「それなら、良かったです。」 ササミさんが、にっこりと笑う。 気づくと彼は、ササミさんに渡そうと思って先ほどそこらで詰んだ花を、青年に差し出していた。 何故だか、渡したくなったのだ。 けれど、青年は首を横に振った。 「手ぶらで、行きたいんです。」 青年は空

ここは、とある学校|ショートショート

ピンク色の髪の毛を、サラリとなびかせて、水色のランドセルを背負って、今日も遥斗は学校へ行…

彼女の秘密|ショートショート

明け方、梟が窓をこんこんと叩く。 瞬間、私は悟る。 遂に彼女は逝ってしまったんだ。 橙色の…

愛を誓う|ショートショート

彼女を初めてみたのは、学校の屋上だった。 裸足で足をぶらぶらさせて、彼女は青い空を見上げ…

森と真実|ショートショート

ある人は言う。 「あの家には魔女がいる」 ある人は言う。 「普通の家族だよ」 真実は時に、見…

紅子と蒼一|ショートショート

「蒼一と言います。」 随分と洒落た男の子でした。 黒い髪は耳の形に沿って綺麗に切り揃えられ…

分福、茶釜|ショートショート

「私が死んだら、骨を、まるごと盗んでくれないかしら?」 ある日、義祖母から突拍子もない頼…

七夕ランデブー|ショートショート

本日の天気は快晴、絶好の七夕日和。 七夕は、織姫と彦星が年に一度会える日だと、幼い頃に教わった。それも晴れていないと会えない、と。 織姫にも彦星にも思い入れは無い。 それでも何故か、七夕の日は晴れると嬉しい。 少女は夜の空を、眺めていた。 熱を冷ますために、湯上りに部屋の窓を開けたのだ。 ひゅ、と風が吹いて、気持ちが良かった。 少女の小さな部屋は、あっという間に涼しくなる。 そろそろ、と窓を閉めようとしたところで、ふと、キラキラとしたものに気がついた。 それは細い銀色で