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【投機の流儀 セレクション】アベノミクス相場始まって以来この数年間で最も逆境に置かれたのは銀行業だ

今年に入ってから買ったものも、エルドアンの発言で通貨が6%戻したところへ債券価格が急騰したからである。②学生時代に憧れたエルネスト・ゲバラの出身地を訪ねて感傷的に買ったアルゼンチン・ペソ建て債券を「問題先送り」した。ペソが極めて安いところで償還になってしまうから、利率44%(ミスプリントでなく44%)の債券に乗り変えて時間を稼ぐことにした。

アベノミクス相場始まって以来この数年間で最も逆境に置かれたのは銀行業だ
まず、筆者が自分のやってきたことを開示する。
拙著「大学教授が書いた、株で4倍儲ける本」という柔らかい本に、証券会社の顧客勘定元帳を開示して述べた実例である。(2006年刊)。
長期投資のつもりで買ったつもりの三菱東京銀行株と三井住友銀行が半年で2290万円の投資が6090万円になった。つまり2290万円の投資が半年で正味3800万円の利益を上げた。前掲書の107頁に開示している。
もう少々持続すれば、もっと大きな利益を上げられたが悔いはなかった。売った株は自分の株ではないからだ。筆者は経験したことはないが兜町では昔から「売った株と別れた女のことは忘れろ」という格言がある。

小泉・竹中のハードランディング政策の最中であった。当時、銀行株を買うなんて皆に笑われたと思う。現に、2003年春、買った当時、三菱銀行のエリート課長(今は執行役員)が筆者の親しい甥であるが、三菱銀行株を買ったと話したら。仰天して嘲笑した。
「野も山も、人も我も弱気なら、たわけになりてコメを買うべし」の格言通りだ。「人」は仰天して嘲笑したし、「我」自身も半信半疑だった。弱気の自分を克服して買えというのだから、偉そうなことを言って恐縮だが、自己超越の哲学が要る。

井上靖は小説「あすなろ物語」の中で、鮎太という少年に、大学生が「克己」というものを教えた場面を描いている。筆者は大学時代に読んで感動した。映画「ショーシャンクの空に」では主人公アンディ・デュフレーンに「克己と希望」を持たせた。それかもしれない、が、違う。後述する。

アベノミクス相場始まって以来この数年間で最も逆境に置かれたのは銀行業だ。
本稿では以前から、こう言い続けてきた。扱う主商品が安くなる一方だからだ。したがって、銀行株が一番先に大底圏内を付けるのではないかとも言ってきた。
長い目で見れば、そこが狙い目になるかもしれないとも言ってきた。地方銀行は半分以上が赤字になるとも言ってきた。ところが、実際には70%以上が赤字になった。

地銀の上位10行が業務提携を発表した。10日には日経平均株価が反落する中で千葉銀行だけが大幅高をした。しかし、銀行再編の思惑による買いはそれまでであった。今回のような提携だけでは収益の悪化スピードに追いつかないと見られているのであろう。

まだまだ収益悪化は続くし、銀行株の大底圏は先のことであろう。しかし「まだはもうなり」という格言が昔からある。数年の内にはそれが来るかもしれない。銘柄別には既に大底を示現してしまっているものもあるかもしれない。例えば、スルガ銀行の373円などは不祥事件終焉後も再びつかない。永遠の大底になったのかもわからない。

野村証券入社以来、58年3カ月、株式相場と関わってきた筆者だから、僭越ながら言う。皆がダメだと思い、自分もそう思った時が大底なのだ。自分が将来の希望を以て見たときは未だ大底ではない。「あすなろ物語」の鮎太少年の「克己」には大底はない。

【「動画」の要約報告】
〈前編〉

〇愛称「街角景気」は「弱保合だ」。〇景気持続中での利下げ反復は後年ロクなことは起きない。例・80年代の日本(平成バブルへの道)、90年台の米(ITバブルへの道)、〇当面はサンドウィッチ相場だ。〇トランプの思う通りにはNY相場は動かない可能性あり。(江戸時代に徳川吉宗将軍でさえ大阪コメ相場を制せられなかった)。○景気調整に入ってからの消費増税は傷を深くする,〇米中摩擦は長引く。
〈後編〉
①筆者自身の報告:昨年のリラ暴落の「有事」に買ったトルコリラ建て債券を一部分、利食い売りした。昨年8月の急落時に「引かれ玉」の手当として乗り換えたものを利食った。約25%の利益を得て半分を手じまった。

【今週号の目次】
第1部 当面の市況

(1)NY株、史上最高値を示現、2万7000ドル
(2)週末は所謂「幻のSQ値」
(3)牽引役不在・物色の短期化・PERの高いグロース株に集中・その背景は?
(4)①「国策」となっている高株価政策、②NY株高、③一方で企業業績はピークを過ぎた、④長期景気は終焉を迎える、この4要素は巴となって深押しはないが上値抵抗線も高くはない――こういう期間の過ごし方こそ重要だ
(5)円高に働く力に対抗できない日銀の存在感は薄まった
(6)FRBにECBも日銀も付き合わざるを得ない
(7)米利下げ期待で原油高・NY株高、日本株はサンドウィッチ相場
(8)REIT指数がリーマンショック以前の大天井以来11年ぶりの高値を付けた。「大底圏内を買って持続し6年で2倍にする」ということは何も株式に限らない。
(9)利回りでもないし騰落レシオでもない
(10)PBR割安銘柄の上昇が目立った
(11)市場の目から言えばこうなる
第2部 中長期の見方
(1)米中摩擦は長期化し深刻化する。米国のホンネ:米国は経済・軍事共に背後から追撃される恐怖を今のうちに経済面から叩いておきたいのだ
(2)一方、中国内部の実情:「8964のトラウマ」
(3)「振り上げた拳を降ろすに降ろせなくなったトランプ大統領」
(4)トランプの命運と、リアリスト安倍晋三の真価の「見せ場」を作るには?
(5)トランプがイランに敢て喧嘩を売った狙いは何か
(6)官製の下値支持線と外部要因、「見せ場」→「正念場」→「修羅場」→「土壇場」??
(7)この現象は「工業国日本」の象徴か
(8)年初の予想を顧みる
第3部 銀行株は数年内に大化けするという見方とトルコリラの話
(1)アベノミクス相場始まって以来この数年間で最も逆境に置かれたのは銀行業だ
(2)再びトルコリラについて:ここで筆者の摂った行動を報告する。
第4部 「『金融庁の報告書』はいいきっかけになった」
第5部 補足:「奇妙なハト派と化すトランプ大統領」

【お知らせ】
「投機の流儀 セレクション」のアーカイブは、電子書籍の紹介サイト「デンショバ」にてご覧になれます。
デンショバ
http://denshoba.com/writer/ya/yamazakikazukuni/touki/

【プロフィール】
山崎和邦(やまざき・かずくに)
1937年シンガポール生まれ。慶應義塾大学経済学部卒。野村證券入社後、1974年に同社支店長。退社後、三井ホーム九州支店長に、1990年、常務取締役・兼・三井ホームエンジニアリング社長。2001年、同社を退社し、産業能率大学講師、2004年武蔵野学院大学教授。現在同大学大学院教授、同大学名誉教授。大学院教授は世を忍ぶ仮の姿。実態は現職の投資家。投資歴57年、前半は野村証券で投資家の資金を運用、後半は自己資金で金融資産を構築、晩年は現役投資家で且つ「研究者」として大学院で実用経済学を講義。
趣味は狩猟(長野県下伊那郡で1シーズンに鹿、猪を3~5頭)、ゴルフ(オフィシャルHDCP12)、居合(古流4段、全日本剣道連盟3段)。一番の趣味は何と言っても金融市場で金融資産を増やすこと。
著書『投機学入門』『投資詐欺』(講談社)など多数。

ツイッター https://twitter.com/toukinoryugi

【著書】
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