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落葉(らくよう)

秋が足早に駆けてゆく
なにをそんなに急ぐのだろう

高い峰々が薄く雪化粧して
薄氷(はくひょう)がパリパリと音を奏でる
唐松の紅葉が落ち水面を黄色く染め
真っ白な霜は足跡の形に溶け
地面を盛り上げて伸びた霜柱は
しゃりしゃりと泣く

かじかんでジンジンとする指先
チリチリと寒さで痛む頬を
白い吐息が撫でていく


そう
これは寒さと澄み切った青空のせい

泣いてなんかいない

モミジも、カラマツも、ナナカマドも
色づいた葉が はらはらと落ちていく

あなたのことが好きだと言った言葉も
はらはらと落ちていく

想いは 落ちないまま北風に揺られ
ゆっくりと凍りつき
ゆうらり ゆうらり

いつかこの想いは溶けるのだろうか

濡れたマスクが頬に張り付く

頬を流れる熱さも
張り付く冷たさも
肌を刺す寒さも
締め付けられるような胸の痛みも

いつか溶けていくのだろうか

いつか消えていくのだろうか

いつか思い出に変わるのだろう

いつか………

霜のついた落ち葉を拾う

「つめた…。」
思わず溢(こぼ)れた言葉も
拾ったはずの落ち葉も

はらはら と

落ちていった

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某イコネからの移行作品です。
少し早い晩秋のお話。

落ち葉の下のどんぐりに気づかずに踏んで足を滑らせてヒヤッとした事がある筆者です。
景色に見惚れて写真を撮るのも、歩く事すら忘れてしまうこともしばしば。シャリシャリと鳴く霜柱、カサカサ笑う落ち葉の絨毯、足跡の形に溶けた霜も、秋の山を楽しませてくれますね。

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