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"平行"移動とちょびっと変化:一般相対論/接続

前回,"接続"と呼ばれるものを共変微分の一部として導入したのだった.今日は共変微分とはなんぞやという話をしようと思う.

微分というのはちょびっと動いた間に,対象がどれだけちょびっと変わったかを考えるときに使うものだ.以前にふんわりと解説している.

今日は曲がった世界での微分の話をしようと思う.共変微分とは,曲がった世界でもっともまともな微分なのだ.

平行移動と地球儀

曲がった世界でちょびっと変化を考える前に,平行移動というものを考えてみよう.ベクトル(矢印)ちょびっと平行移動して,そこの矢印と比べれば,微分で使えるちょびっと変化になるはずだ.

平行という言葉は聞いたことがあるだろう.小中高の知識でいえば,平行線とは,交わらない二直線のことだ.しかし,平行線が交わる世界が存在する.それは地球,曲がった世界だ.

メルカトル図法,普段よく目にする世界地図(画像は拾い物を使うのは憚られるので,ちょっと画像検索して見てくれ)は緯線(南北)は緯線同士で,経線(東西)は経線同士で交わらない.メルカトル図法であれば,緯線経線は平行線なのだ.

では今度は地球儀を見て欲しい,イメージでもいい.赤道を含む緯線は緯線同士交わらない.でも経線はどうだろう....北極と南極で全ての経線が"交わって"いる.そう交わっているのだ.では南北方向に伸びる,互いに交わらない線は引けるだろうか.残念ながら引くことはできない.

曲がった世界では今までイメージしていた平行の概念が崩壊する.

曲がった世界で"平行"を考えるには

では今までの平行の概念に変わってもらうしかない.曲がった世界の超特別な世界として曲がっていない,普通にイメージする世界があると思おう.

これから矢印を平行移動することを考えよう.この世界の時空は四次元なのだが,絵がかけないので今日は二次元平面に立ってもらう.基本的に地球上を考えていても良い.もっと簡単なシートから始めよう.

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三次元の我々から見れば,オレンジのシートは曲がっているとわかるが,オレンジのシートの上に住んでいる二次元人は曲がっているとはすぐにはわからない.

では奥行き方向に矢印を"平行"移動させてみよう.

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赤と青は三次元の箱から見て全く同じ向き大きさを持つもの,緑はオレンジシートの奥行き向きで,長さが同じもの.どちらが平行移動だろうか.上のシートの例でいえば赤と緑が平行移動の結果だ.なぜなら青はシートからはみ出している.二次元の世界の矢印が突如その世界から立ち上がることは許されない.

絵だけではイメージしにくいから試して見て欲しい.空き缶と箸を用意して,空き缶を立てて箸を地面と空き缶両方に接するように当てる.それを空き缶に添ってツツツと動かして見て欲しい.

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赤い箸は地面に対して縦に,緑の箸は地面に寝て動かしたものだ.赤の箸の向きは変わっていないように見える.これは"平行移動感"がある.では緑の箸はどうだろう.実はこれも"平行移動"と呼ぶ(ことにする)のだ.向きを変えねば,箸は缶に接しない,突き刺さってしまう.いやいや,まじかよ向き変わってんじゃん!

でも実際どうだろう.我々は地球が丸いことを知っている.では北にまっすぐ進んでくださいと言われて,地面から浮き上がる輩はいるだろうか.カーナビに直進してくださいと言われて車道から浮き上がる車などあろうか.そう,直進(~速度ベクトルの平行移動)は向きが実は変わっている.(気にならないのは地球が人間に比べて馬鹿でかいからである.玉乗りの球なら曲がっているのがわかるはずだ)

もうちょっと物理的な言い方で平行移動というと,基底で分解した成分を変えないのが平行移動だ.基底というのは,缶なら缶の縦と横,シートなら幅と奥行きといった,方向を指定する各点に指定されたものだと思って欲しい.

シートの例なら赤から緑の矢印の平行移動とは,幅方向(基底)の成分は0で,奥行き方向(基底)の成分だけ同じになるように繰り返し移動させたものだ.

曲がった世界では平行移動しているのに,向きが変わっていることがあるのだ.

曲がった世界のちょびっと変化

ではもともとやりたかった,曲がった世界でのもっともらしい微分を考えたい.でももうおしまいだ.曲がった世界の微分とは,ちょびっと平行移動で変わる値とちょびっと変化の比なのだ.

だから,ただの微分ではだめだ.曲がった世界で向きが変わってしまう,その効果を取り入れなければならない.それが"接続"を導入した理由なのだ.

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ベクトルAの共変微分"∇A"は,偏微分"∂A"と接続"ΓA"に別れる.これは人間が計算するとき,赤から青の部分(曲がってないと思うちょびっと変化)を偏微分"∂A"で青から緑の部分(実は曲がっているちょびっと変化)接続"ΓA"を別々に計算しているだけなのだ.

ものすごくざっくりいってしまえば"接続"とはお隣さんとどれだけ曲がっているかを表す量なのだ.





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