【気まぐれエッセイ】おとな

子どもの頃に思っていたほど、大人は大人ではない。きっと誰もが年を重ねるごとに、そのことを実感するだろう。

それでも20代のうちはまだいい。だって大多数が、同じようにそう思っているからだ。しかし30歳を過ぎると少しずつ状況が変わってくる。「子どものままの部分もあるけど、振り返ってみると昔よりは大分成長したなぁ」と、ちゃんと実感出来ている“大人”が、周りに現れ始めるのだ。こうなるといよいよ不安になってくる。私はこのままでいいのだろうかと。いや、よくないだろうともう1人の私がはっぱをかけてくる。

シワやタルミ、白髪が気になり始め、人から見える部分は何もかも変わってきているのに、中身だけは10代の頃とさほど変わらない。置いてきぼりをくった子どもの私が、ずっと心の中で叫んでいる気がする。


でも、それじゃあ、本物の大人ってどういう人のことなんだろうって、考えてみた。

それはたぶん、自分で自分を幸せにしてあげられる人のことなんだと思う。もしそのために誰かの力を借りるとしても、その判断を自分でしたり、頼る相手にもちゃんとメリット(とびきりの笑顔も含め)を用意出来たりする人のこと。

何でも自分で出来なきゃいけないわけじゃない。世の中に認められるような大それたことを成さなきゃいけないわけでも、なかったんだよね、きっと。

どんな状況でも自分を幸せでいさせてあげられる心さえ育むことが出来たら、それほど尊いことはない。そしてもしその幸せを、わずかでも誰かに分けてあげることが出来るなら、それはもう本当に立派な大人、なんだと思う。

何物にも何者にも、心の中の幸せを乱されることのない大人に、今度こそなろう。


幸せな時間で人生を埋め尽くしたい私にとって書くことは、不幸を無駄にしない手段の1つ。サポートしていただいたお金は、人に聞かせるほどでもない平凡で幸せなひと時を色付けするために使わせていただきます。そしてあなたのそんなひと時の一部に私の文章を使ってもらえたら、とっても嬉しいです。