【気まぐれエッセイ】私、そういう人になるはずじゃなかったのに

「人生の全盛期は?」と聞かれたら、皆さんはいつ頃を思い出すだろうか。そんな時期はないという悲しい答えも、生まれてこの方ずっと全盛期だという羨ましい回答もあるだろうが、大方の人が、ある特定の時期を思い起こすのではないかと思う。

私の場合は、間違いなく幼少期だ。具体的に言うと、誕生から3歳くらいまで(笑)。両親にとって初めての子どもで、両方の祖父母にとっての初孫で、大人たちの愛情を一身に受けて育った私は、当然のように私の人生はずっとそうであると信じていた。

それが単なる思い込みであったことを、私は保育園というごく小さな社会に突きつけられた。4歳になる年に保育園へ通い始めてからというもの、年々望みとはかけ離れた方向へ私は転がり落ちている気がしてならない。つまり ”社会に出るまで” が私の人生でもっとも華やかな時代だったと言える。


先日最終回を迎えた「初めて恋をした日に読む話」というドラマの中で、高梨臨さん演じる百田明奈(牧瀬明奈)が放った言葉が、私は忘れられない。ドラマや原作をご覧になっていない方のために、百田明奈(牧瀬明奈)のキャラクターを簡単に説明しておくと、主人公の中学時代の同級生で、いわゆるスクールカーストの頂点的な、男女両方からモテるイケてる女子。だけど本当に好きな男性(雅志という主人公のいとこ)には振り向いてもらえず、雅志と仲がいい主人公に嫉妬していやがらせをしていた。大人になってからは2度結婚に失敗(牧瀬が旧姓で、百田は二度目の結婚相手の苗字)し、学歴詐称して塾講師をするという本人としては不本意な人生を送っていた(物語が進むごとに変わっていくわけだけど)。そんな彼女が、言ったんだよね。

「私、そういう人になるはずじゃなかったのに」って。

「それぞれの事情があるのはわかるけど、それも踏まえたうえで主人公の邪魔をするキャラは敵」という非常に短絡的なドラマの観方をすることが多い私だけど、彼女のそのセリフだけは他人事と思えなくて、最終的に一番胸に残る言葉となった。

冒頭で述べた通り、私の全盛期は社会に出るまでだったわけだから、別に百田さんほど華やかな学生時代を過ごしたわけではない。だけど人生の早い段階でいい想いをし、年を重ねるごとに期待外れの展開になっていく悔しさや虚しさ、「なんとかして本来の人生を取り戻さなくちゃ」というどうしようもない焦りは、痛いほど分かる。

主題歌の
「いつの間にやら日付は変わって
なんで年って取るんだろう
もう背は伸びないくせに~HAPPY BIRTHDAY/Back number~」という歌詞も、やけにぐっとくるじゃない。


とは言え、これからも人生は続いていくのだ。

「こんなはずじゃなかった」なんて、5年後、10年後の私にまで、言わせたくない。

「もう31歳だ」なんて思っちゃうけど、日本女性の平均寿命87歳から考えたら、まだ半分も生きていない。「まだ31歳」なのだ。十分に、挽回の余地はある。




ネガティブな感情を吐き出した箇所に比べて、ポジティブな考えを綴った箇所がやけに短いことに、「無理矢理だな」と思われた方、それ、正解だよ(笑)

そう、無理矢理なの。

だって、何ひとつ叶えていない状態で、そんな簡単に「まだ31歳」とは言えないでしょう? いくつかの目標を達成していてこその「まだ31歳」なんだと思うの。はじこい(ドラマ)の主人公だって、東大には落ちたものの、それまで積み上げてきた学力は確実にあるわけだしね。


それでも、死なない限り人生は続く。笑っても泣いても、ありがたく命は続いていくのだ。だからあえて、もう一度言おう。



「まだ31歳」なのだ。十分に、挽回の余地はある。




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