外山恒一&藤村修の時事放談2016.06.02「“しばき隊リンチ事件”を語る」(その3)

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 「その2」から続く〉
 〈全体の構成は「もくじ」参照〉

 2016年6月2日におこなわれ、紙版『人民の敵』第21号に掲載された対談である。

 対談時点ですでに「しばき隊」は「クラック」と改称しており、対談中では正確に「クラック」の語が主に用いられているが、一般には「しばき隊」の名称のほうが浸透しているから、まず「もくじ」などでおおよその内容を把握したい人の存在を念頭に、小見出しなど本文以外の部分には「しばき隊」の語を用いた。

 第3部は原稿用紙換算23枚分、うち冒頭7枚分は無料でも読めます。ただし料金設定(原稿用紙1枚分10円)はその7枚分も含みます。

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 自ら墓穴を掘りまくるしばき隊

外山 結局、民事裁判にもなってるのか、なりそうな状況のようだけど、高島弁護士が主水さん側の代理人ってことなのかな?

藤村 それは知らないけど、ともかくクラック側は当初、リンチ事件について「そんな事実はない」と云ってたのが、どんどん証拠を突きつけられるに及んで、「少なくとも李信恵さんは関わってない」になり、「(李信恵さんは)暴力はふるってない」になり、みるみる後退していく。だけど最初の段階で「そんな事実はない」と云ってた以上、もはや何を云ったって信用されないよね。事実があったことが明らかになってしまったからには、云い訳は不可能だと諦めて、すでに表沙汰になってしまった以上の事実関係を、クラック側から率先して明らかにするって姿勢を見せないと、収拾なんかつくわけない。本来なら「知らんがな」で済む話だったのに……

外山 そんなふうに見苦しい嘘を重ねちゃった後では、それじゃ済まなくなっちゃうよね。

藤村 うん。とにかく事後対応がお粗末すぎる。だけど難しいのは……たしかにそもそもクラックに“マトモな対応”を期待する方が最初から無理な話で、もともと政治的なことに関心なんかなくて、ロックのライブに足しげく通って暴れてるだけだったアタマの悪い若者たちを、うまいこと煽って左傾させて、組織化して、大きな運動の主力として形成したのが、しばき隊=クラックの画期性だったんだもん。
 そもそも“反知性主義の左派”なんだよ、しばき隊は。“左の在特会”と形容する人もいるけど、質的にはそれは当たってるんだ。しばき隊に集まってるのは、もともと“議論”なんかできない人たちなんだから。それはネトウヨと議論できないのと一緒でしょ。ネトウヨと議論しようとしたって、「チョーセンジンは国に帰れ」と云われて終わりなのと一緒(笑)。しばき隊の場合だと、「オレたちへの批判はネトウヨを利するものだ」「結局お前はネトウヨ側に加担してるんだ」「ヘサヨとネトウヨの結託キターッ」ってことになって、こんなのネトウヨの“在日認定”と何も変わらないレベルの没理論だよ。
 もっともこのテの“加担の論理”は非常に古くから左翼が常套手段で使ってきたもので、しばき隊の理屈はその劣化版、粗雑なバージョンでしかないけどね(笑)。もちろんしばき隊の人たちは、左翼のそういう歴史も知らないまま、断片的に聞きかじって流用してるんだろうけどさ。

外山 刑事事件としては終わってるし、“一事不再理”(いったん判決が確定した事件について検察側が再び蒸し返すことはできない、という刑事訴訟上の大原則)だから、リンチについてもっとヒドい事実が出てきたとしても刑が追加されたりはしないけど、民事訴訟はまた別なんで、“その後の対応”があまりに不誠実なことに腹を立てた主水さんが、損害賠償を求める裁判を起こすつもりになって、それを引き受けることになったから高島弁護士が重要資料をいっぱい持ってるのかなあ、と想像してるんだけど、どうなんだろうね。

藤村 さあねぇ。しかし野間さんも、主水さんの実名とかの個人情報を晒して罵倒したりしてて……なんでそんなことするかなあ(笑)。

外山 ほんとにバカなのか、バカのフリをしてるだけなのかよく分からないところは、野間さんと安倍ちゃんは似ている(笑)。

藤村 だって今のクラックの中で、野間さんだけは“反知性主義”じゃないはずでしょ?

外山 我々には遠く及ばないにしてもそれなりの理屈はあるはずで(笑)、もう少し計算高く振るまってもいいよね。完璧ではないにせよ、そういうことがまったくできない人でもないだろうに……。

藤村 「やってない」と云い張ってたのに「やっぱりやってた」ってことがバレた以上、本来は「知らんがな」では済まないんだけど、せめて「知らんがな」なら「知らんがな」で最後まで押し切ればいいのに、ポロポロ余計なことを云うんだ。エル金さんを“擁護する”ってほどではないにせよ、“気持ちは分かる”みたいなことを無邪気にツイートしたりさ。ヒラのしばき隊メンバーならまだいいけど、野間さんだけはそれを公に云っちゃダメでしょう。野間さん自らそんなことしたら、他のクルクルパーのメンバーもみんなその方向に行っちゃうよ。
 で、案の定、そういうのが出てきた。まず1つは、「どぅーどぅる」って人だったかな、主水さんがやったことはヘイトクライムだと云い出した。「どぅーどぅる」さん自身が在日の人らしいんだけど、エル金さんも在日で、主水さんは日本人なの。つまり在日であるエル金さんに対して、日本人である主水さんが「レイシストからカネをもらってるだろう」なんて云いがかりをつけるのは“レイシャル・ハラスメント”である、って云い出したわけだよ。
 んなわけねーだろ、と(笑)。そんな理屈が通用するなら、例えば「どぅーどぅる」さんのそういう主張の乱暴さを「在特会とどっちもどっちだ」とかオレが云うことさえ、レイシャル・ハラスメントだってことになっちゃうよ。もちろん、単にまだ公になってないだけで、主水さんがエル金さんにそういう云いがかりをつけたことの背景に、レイシャル・ハラスメントだと判断されても仕方のない何らかの事情があるのかもしれない。だとしたらまず必要な情報公開をした上で、説得力のある仕方で「レイシャル・ハラスメントだ」と主張すべきでしょう。
 ……さらに“決定打”を出してきたのが、やっぱり入江さん(入江亮氏。クラック九州の中心的活動家)なんだよね(笑)。入江さんは主水さんの腫れ上がった顔の写真について、「写真見ましたが、エル金さん、ようあそこまでで我慢しんしゃったですね。俺が同じ立場だったら、我慢出来ずに殺してますね」とかツイートしてる(5月31日)。

外山 うーん……どんどんマズい方向に……(笑)。

藤村 さすがにこれに対しては野間さんがたしなめてたけどさ(笑)。エル金さんは“我慢した”どころか“やり過ぎた”んだ、“美しい物語”にするな、って。


 “正義の暴走”とかって話ではなく単なる“いじめ”問題

藤村 ……どうでもいいけど野間さんって、「美しい物語」って言葉が好きなの?(笑) 外山君が佐藤悟志の件で野間さんへの批判を始めた時も、お互いに庇い合ってる、みたいな意味で「美しい物語だな」とかって揶揄してきたよね。

外山 “美しい物語”を信じて裏切られたとか、何かよっぽど辛い過去があって、“美しい物語”センサーが人一倍発達してるのかな?(笑)

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