外山恒一&藤村修の時事放談2015.11.26「しばき隊“闇のキャンディーズ”事件を語る」(その2)

 【外山恒一の「note」コンテンツ一覧】

 「その1」から続く〉
 〈全体の構成は「もくじ」参照〉

 2015年11月26日におこなわれ、紙版『人民の敵』第15号に掲載された対談である。

 対談時点ですでに「しばき隊」は「クラック」と改称しており、対談中では正確に「クラック」の語が主に用いられているが、一般には「しばき隊」の名称のほうが浸透しているから、まず「もくじ」などでおおよその内容を把握したい人の存在を念頭に、小見出しなど本文以外の部分には「しばき隊」の語を用いた。

 第2部は原稿用紙換算17枚分、うち冒頭5枚分は無料でも読めます。ただし料金設定(原稿用紙1枚分10円)はその5枚分も含みます。

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 高島弁護士側の問題点

外山 で、藤村君が、今回の件は実はクラック側の勝利ではないか、っていうのはどういうこと?

藤村 そもそもクラック側が何を問題にしたいのか、ってことだよ。とりあえず“はすみリスト”の是非の問題で云えば……まあ実際にはいろいろ他の問題も絡んでることが、さっき改めて調べたら分かってきたから、簡単に“クラック側の勝利”とも云えないのかな、という気もするけど、クラックとしては高島弁護士に「やっぱり“はすみリスト”には何の問題もない」と云わせることができれば勝利でしょ? で、今回、高島弁護士は“はすみリスト”の公開と同じようなことを自分からやっちゃったんだよ。ネット上で匿名で自分を攻撃してきた人の正体を暴いて、ツイッターで「コイツは新潟日報の坂本だ」と書いたんだもん。

外山 なるほど。

藤村 高島弁護士は、もし書くとしても、もっと遠回しに書くこともできたはずなんだ。「マスコミに勤めてる人がそんなことを書くのはいかがなものか」とか、「そちらはもう雪ですね」とか、“オマエの正体は分かってるんだぞ”ってことは、実名暴きみたいなことをしなくても伝えられたでしょう。その上で新潟日報に電話するなり何なりすればいい。ネット上で積極的に相手の実名を晒さなくても……。

外山 直接抗議して、場合によってはその坂本さんの側から、「“闇のキャンディーズ”は私です。すみませんでした」とネット上で謝罪することを和解の条件にする、ってこともできたかもね。

藤村 フェイスブックでもともと公開されてる個人情報をリスト化するよりも、高島弁護士はさらに一歩踏み込んだことを今回やってる。これでもう高島さんには“はすみリスト”を批判することなんかできないよ。

外山 しかし高島さんの場合は直接の被害者だからなあ。自分を不当に攻撃してきた人に対処したにすぎないでしょ?

藤村 いや、“被害”といってもネット上で罵倒されただけじゃん。ヘイトスピーチの場合は、ヘイトスピーチの存在そのものがヘイトの対象とされた人たちにとっては直接の脅威なんだからさ。えーと……自分でも何を云いたいのかよく分からなくなってきたぞ(笑)。

外山 ともかく事実経過はおおよそ理解した。


 しばき隊は高島弁護士に勝利していた

藤村 クラック側がもし高島弁護士に見解を変えさせることを目的としていたならば、高島弁護士にとにかく罵声を浴びせまくるというのも1つの戦略としてあり得る。そして実際に浴びせてみた結果、高島弁護士はそれに対抗して“はすみリスト”の公開よりもエゲツないことをやってしまったわけだ。もはや高島弁護士に“はすみリスト”を批判する資格はないよね? つまりクラック側の勝利じゃん。ぼくが云いたいのはそういうことですよ。

外山 だけどクラック側はそのことに気づいてないんじゃないか、ってことでもあるんでしょ?

藤村 うん、まったく気づいてない。勝利してるのに、そのことがちっとも分かってない(笑)。

外山 ぼくのツイッターに流れてきた乏しい情報からも、どうも今回の一件はクラック側に不利なものとして作用して、事態が推移してるように見えるんだが……。

藤村 実際そうなってると思うよ。おそらくクラック側も、戦略的に高島弁護士に罵声を浴びせてたわけではないんだね。単に条件反射的な振る舞いとして罵声を浴びせてたにすぎないんでしょう。そこらへんが問題だよ。

外山 “闇のキャンディーズ”というのは、カウンター勢の中でもそれなりに存在感のあった人なの?

藤村 いや、よく知らない(笑)。たぶんそうでもないんじゃないかな。

外山 “はすみリスト”のイラストってあれでしょ、シリア難民がヨーロッパにワーッと押し寄せて大混乱になり始めた時にアップされたんでしょ?

藤村 そうそう。

外山 “闇のキャンディーズ”って人は今回、ネトウヨと完全に同じような振る舞いをしてたわけだよね?

藤村 それは彼に限らず、カウンター側はだいたいそうじゃん(笑)。

外山 もともと“しばき隊”の戦略が、ネトウヨ以上にネトウヨ的な作風でネトウヨに対抗するってことだもんな。ところがそういうカウンター側のネトウヨ的な振る舞いに対して、今度は高島弁護士がネトウヨ的に攻撃して……。

藤村 いや、高島弁護士は、新左翼にも多少の共感を持ってるような普通の左翼系弁護士だよ。

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