“選挙に行こう!”運動を叩き潰すための作戦会議・その1

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 〈全体の構成は「もくじ」参照〉

 2015年12月16日におこなわれた東野大地&西南大M氏との座談である(紙版『人民の敵』第17号に掲載された)。したがって基本的には古い話題ばかりであることは最初にお断りしておく。しかし、“古くなっても面白い!”があらゆる外山コンテンツの自慢である。

 本文中にもあるように、同11月の大阪ダブル選に際して外山ら「九州ファシスト党〈我々団〉」は“ニセ選挙運動”を展開したが、その活動中に“選挙に行こう!”系の若者グループと遭遇し、とくにそのグループが配布していたビラの内容に激怒している、という状況が座談の前提にある。
 つまり、その若者たちの愚劣な運動を“ブッ潰してやる!”という作戦会議めいた話が、この座談の基調となっている。実際にはこの闘争は(単に外山らがすっかり忘れていて)少なくとも現時点ではまだおこなわれていないのだが、読めば分かるとおり、実際にやっていれば、この若者グループの運動は完全に潰されていたことは間違いない。
 その“作戦”をめぐる会話の隅々にまで、外山の“ドブネズミ系”の生き残りとしての発想法が反映していると思う。ドブネズミ系の“面白主義”をナメてると痛い目に遭うぞ、という話でもあるし、“面白い”と“実効性がある”を両立させるドブネズミ系の方法論に関する恰好のテキストともなっていよう。
 東野大地は我々団の党員、途中から参加してくる「M」君は、当時「西南学院大学アナキズム研究会」の“議長”で、外山が2014年夏以来、年2回のペースで開催している「教養強化合宿」の第1期生でもある。

 以下本文。
 第1部は原稿用紙換算18枚分、うち冒頭5枚分は無料でも読める。ただし料金設定(原稿用紙1枚分10円)はその5枚分も含む。

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  “我々”を激怒させた謎の“意識高い系”学生団体

外山 我々団が「真の民主主義」運動を開始するにあたって、「選挙制度改革案」なんてものを書いてみたんだが……。それなりの支持は得られると思うんだ。

東野 得られるのか?(笑)

外山 だってこれを読めば、無邪気に「選挙に行こう!」とか云ってる奴らより我々の方がよっぽど真面目に選挙について考えてることは明らかじゃないか。
 「期日前投票の廃止」を要求するのが我々以外にたぶん存在しない現状がそもそも異常だよ。それはほとんど、選挙について本当に真面目に考えてるのは実は、選挙に反対してる我々だけだということすら意味してる(笑)。「政令指定都市の市議選での選挙区割の廃止」もたぶん我々が初めて提起してるんじゃないか? こんなの真面目に考えてれば当然の話なのにさ。我々の最終要求である「学力試験による制限選挙制」にまで賛同してもらえるかどうかはともかく、その手前の個別改革要求には、ほぼ反論不可能なぐらい当然の要求ばかりだと思うよ。
 ……この「軍隊を持つなと憲法に書いてあるのに軍隊が持てるんだから、普通選挙法をやりなさいと憲法に書いてあっても制限選挙はやれるだろう」ってロジック(「本来なら憲法改正が必要だが、軍備を持てないはずの現憲法下に軍隊が存在しているぐらいだから、“投票免許”取得試験の公平中立性の保障などによって、事実上の制限選挙を“普通選挙”と強弁する詭弁はより容易であるはずである」)は、我ながら気に入ってる(笑)。

東野 自分で“詭弁”って云っちゃってるし(笑)。

外山 憲法改正の必要ナシ。“解釈改憲”で充分だ!(笑)
 ……「アイボート」(ivote。学生による「選挙に行こう!」運動グループ。15年11月の大阪ダブル選で“ニセ選挙運動”方式の投票ボイコット運動を展開する過程で遭遇し、我々団の打倒対象と認識された。紙版『人民の敵』第15号参照)については調べてくれた?

東野 調べてはみましたが、あまり大した情報は出てこなかった。

外山 福岡でも“投票割引”(投票に行ったという証拠写真を提示するとアイボートが提携したいくつかの飲食店で割引サービスを受けられるという、民主主義を愚弄するケシカラン策謀)をやってる?

東野 たぶんまだやってないんじゃないかな。そもそも福岡支部は結成されて間もないんです。15年3月だか4月だかに結成されてる。

外山 こないだの統一地方選に合わせて直前に結成されたってことか。

東野 で、福岡支部がこれまでやってきたのは、“政治家を呼んで交流会”的な……。

外山 ほー。

東野 何と云ったか、「アイボート・バー」とか「アイボート・ランチ」とか称してました。

外山 アイボートそのものが立ち上がったのがいつ頃なの?

東野 08年か09年だったと思います(ウィキペディアによれば「20代の投票率向上を目的に」08年4月設立)。現在の代表は6代目らしい。

外山 実際に“学生団体”なの?

東野 そのようですね。

外山 関西支部が橋下徹と交流会をやって天狗になってた、みたいな話をどこかで聞いたな。

東野 保坂展人とも交流会をやってるみたいです。

外山 つまり特定の政治的傾向はない感じ?

東野 とくに感じられませんね。

外山 例えば「サスプル」(「特定秘密保護法に反対する学生有志の会」。安保法制反対運動を展開した「シールズ」の前身)の界隈で以前おこなわれてた、中立を装いながら事実上は共産党の得票を増やそうとするような運動とは雰囲気が違うんだ?

東野 そんな“黒さ”はない、もっと素朴な感じでしょう。印象としては、「ボクイチ」っていう、「ぼくらの一歩が日本を変える」だったか「政治を変える」だったか(NPO法人「僕らの一歩が日本を変える。」)、あれに近いと思う。

外山 何だっけ、それ。

東野 青木大和って人がやってた。

外山 ああ、青木大和! ……誰だっけ?(笑)

東野 ぼくもよく知らないんですけど、ボクイチというのは、その人がやってた“運動”というのか何というのか……。

外山 やっぱり“若者もちゃんと選挙に行こう!”的な?

東野 いや……。

外山 あるいは“政治に興味を持とう”的な“啓発”運動?

東野 うん、そっちですね。いわゆる“意識高い系”の学生団体。

外山 “意識高い系”って、なんで政治に興味を持ちたがるんだろう(笑)。

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