外山恒一&藤村修の時事放談2019.6.9(その2)

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 〈第1部(無料)からつづく〉

 第2部は原稿用紙換算20枚分、うち冒頭8枚分は無料でも読めます。ただし料金設定(原稿用紙1枚分10円)はその8枚分も含みます。

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  「東京デモクラシー・クルー」、略して…

藤村 今はどうなってるのか知らないけど、オレがまだツイッターを結構よく見てた頃には「トーキョー・デモクラシー・クルー」というのが目立ってて、略して〝トンデモ〟と呼んでやればいいんじゃないかとオレは思ってるんだが……だって〝東京女子大〟は略して〝トンジョ〟なんだから、間違ってないはずだ(笑)。
外山 うん、まあ……たしかに。
藤村 とにかくそのトンデモが(笑)、西部邁が亡くなった時に、ツイッターで〝西部邁と小林よしのりと在特会には何の違いもない〟とか書いてたんで、思わず〝バカかコイツは〟みたいなツイートをしちゃったんだよ。〝ネトウヨにとって共産党も新左翼も反ヘイトも何の違いもないのと同じだな〟って。
外山 まさに〝どっちもどっち〟である、と。
藤村 そしたら案の定、ブロックされてね。だけど別アカウントで引き続きトンデモのツイートは読めるんで、観察してたら、オレをブロックしたすぐ後で、「もし〝本当の保守〟というものがあるとすれば、誤解を恐れずに云うなら、それはCIAやFBIのことだ」とか、信じられんぐらいバカなツイートしてた。なぜFBIとかが〝本当の保守〟の名に値するかといえば、ちゃんとトランプの疑惑を捜査してるからだ、って。たしかトランプに対する捜査って、「問題なし」っていう結論になったんじゃなかった?(笑) そのことをトンデモが今はどんなふうに云ってるのか知らないけどさ。そもそもFBIが、相手が大統領といえども一応は捜査しようとするのは、単にマジメな官僚だからであって、〝本当の保守〟だからではありませんよ。逆に云えば日本の問題は、官僚が〝ただの官僚〟に徹しきれないところで、〝モリカケ問題〟とかもそういうことでしょ。……ともかく〝西部邁も小林よしのりも在特会も全部一緒だ〟というのは、いかにも昔のバカな左翼の云い草じゃん。それこそオレが80年代に嫌悪してたようなクソ左翼どもの云い草で、結局は〝新しい〟つもりのパヨク連中もそっちに先祖返りしちゃってるんだ。

  野間易通と東浩紀あるいは加藤典洋

藤村 オレが野間さんについて、この人はもうダメだと思ったのは、彼はもともと「オレこそ保守だ」とか「オレこそ真の愛国者だ」とか云ってたのに、「保守はみんなクズだ」とか「ネトウヨこそ〝本当の保守〟だ」とか云い出して、つまりトンデモの連中と同じスタンスにどんどん移行していったからなんだよね。オレ自身は〝本当の保守〟なんて考え方は嫌いで、〝保守〟とか〝左翼〟とかっていうのは、思想的な〝傾向〟を云う言葉であって、もちろんオレは保守なんだけど、それは〝保守こそ正しい〟とか思ってるからではなく、オレの考え方にはそういう〝傾向〟があるんで、〝保守〟に分類されても文句は云えないなあ、というだけのことだよ。あるいは〝フェミニズム〟というものがあって、フェミニズムにも、良いフェミニズムもあればクソなフェミニズムもあるし、まあ9割方はクソフェミだとは思うが……(笑)。
 話を戻すと、オレは〝本当の保守〟とかはどーでもいいし、あるいは保守という立場を党派的に擁護しようという気もまったくないんだが、野間さんが「ネトウヨこそ〝本当の保守〟だ」とか云い出しちゃったのを見て、あ、この人は少なくとも〝思想〟というものがまったく分からない人なんだなあと思いましたよ。笠井潔と一緒に共著(『3・11後の叛乱』集英社新書・16年)を出したけど、たぶん笠井潔の本なんか野間さんは今でも1冊も読んでないでしょう(笑)。
外山 そもそも読んで理解できるとも思えん。
藤村 こないだ加藤典洋が亡くなったでしょ。……オレが思うに、仮に野間さんにナニガシカ〝思想〟らしきものがあるとして、それをきちんと純化させていけば、たぶん東浩紀とかが一番近いということになるんだ。野間さんたちは自分ではいろいろ偉そうなことを云ってるけど、要は〝消費者運動〟だよね。消費者メンタリティの塊なんだもん。だって、〝政治家は使役せよ〟とか、野間さん界隈はよく云うじゃん。でも〝決めるのは我々だ〟とかさ。そんなの典型的に〝消費者〟の考え方だよ。その〝我々〟とやらは、最終的に何も責任を問われない立場にいるわけだ。〝国民主権〟ってそういうことだよね。〝秘密選挙〟で、我々は投票する時に投票用紙に自分の名前を書かなくていいんだし、つまり有権者は決して責任を問われたりしない。その立場に甘んじてるわけで、そんなもん〝消費者運動〟でしょう。もちろん初期の、つまり〝狭義のしばき隊〟は違いました。あれはまさに直接行動であって、決して消費者運動ではない。だけどあれ以外は全部、彼らのやってることは消費者運動です。で、オレは〝消費者運動だから悪い〟と云ってるわけではないんだ。そのことをちゃんと自覚して、肯定すればいい。〝消費者〟であることを肯定してるのが東浩紀なんだから、一緒になっちゃえばいいんだよ。
 あと、オレが加藤典洋から学んだ最大のことは、〝天下国家〟とか〝世界認識がどうこう〟とか、そういう発想や志向をまったく持たない人間が、〝世界〟について考えるにはどうすればいいのか、というような問題の立て方というか、姿勢だよね。オレが云う〝『オルガン』右派〟(外山と藤村氏の間で多用されている用語。80年代後半に『オルガン』という思想誌に結集していた、総じて全共闘体験を持つ幾人かの論客たちのうち、竹田青嗣・加藤典洋・橋爪大三郎らを〝右派〟、笠井潔・小阪修平らを〝左派〟と呼んでいる)というのは、そういう人たちで、〝世界〟は一体どうなっているのか、みたいな話をいったんカッコに入れて、〝自分のいる場所〟からモノを考える。まあそれ自体は『オルガン』左派も同じかもしれないけど、じゃあどこが違うかと云うと、その〝自分〟というのが『オルガン』右派の場合は〝どこにでもいる普通の人〟であるのに対して、『オルガン』左派は、世間の大多数の〝普通の人〟たちの感覚にはどうしても違和感を持ってしまうようなタイプの〝自分〟ということだと思う。で、これまたやっぱり竹田青嗣や加藤典洋とかの『オルガン』右派の人たちというのが、野間さん的なものに立場的にすごく近いはずなんだ。だから加藤典洋が亡くなった時に、誰かパヨクの人で加藤典洋のことをツイートしてる人がいないかなあと思って、ちょっとチェックしてみたんだけど、オレが知りうる限り、トンデモも含めて誰もいませんでした(笑)。
外山 たぶん加藤典洋の名前も知らないでしょう(笑)。
藤村 まあね。でも少なくとも野間さんは知ってるはずだよ。だって『3・11後の叛乱』が出た時、ツイッターで最初に絶賛したのは、オレが見てた限りでは加藤典洋だったもん。

  謎の“少年革命家”について

外山 ……しかし何だかんだで相変わらず〝しばき隊の話〟ばっかりしてるなあ。どこが〝時事放談〟だ、と(笑)。
藤村 そう云えばそうだね。じゃあちょっと話題を変えて、〝少年革命家ゆたぼん〟って知ってる?

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