外山恒一&藤村修の時事放談2016.06.02「“しばき隊リンチ事件”を語る」(その6)

 【外山恒一の「note」コンテンツ一覧】

 「その5」から続く〉
 〈全体の構成は「もくじ」参照〉

 2016年6月2日におこなわれ、紙版『人民の敵』第21号に掲載された対談である。

 対談時点ですでに「しばき隊」は「クラック」と改称しており、対談中では正確に「クラック」の語が主に用いられているが、一般には「しばき隊」の名称のほうが浸透しているから、まず「もくじ」などでおおよその内容を把握したい人の存在を念頭に、小見出しなど本文以外の部分には「しばき隊」の語を用いた。

 第6部は原稿用紙換算20枚分、うち冒頭5枚分は無料でも読めます。ただし料金設定(原稿用紙1枚分10円)はその5枚分も含みます。

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 議会主義者どもは全員自民党に入れ

藤村 しかし民進党って結構最悪で、だって「維新の党」って要は新自由主義者じゃん。

外山 うん。

藤村 もちろん新自由主義にもいくばくかの理はあるとは思うよ。日本的な利権共同体の構造を打破すべきだという主張は分かるけど、少なくとも“弱者の味方”ではない。いっそアナルコ・キャピタリズム(笠井潔『国家民営化論』95年・光文社文庫を参照)でも掲げてくれりゃ、まだ支持できるけど、絶対にそこまではいかないもん。どうせ既成の利権共同体を再編してオレたちもそこに入れてくれっていう方向に回収されるでしょう。

外山 結局、2大政党制も政権交代も諦めて、みんな自民党に入って自民党の中で派閥争いをする、というのが現実的な唯一の選択だと思うよ(笑)。自民党を以前の多元的な政党に戻す方向でさ。“選挙に行こう!”とか云ってる議会主義者どもはみんなそうすべきだ。

藤村 少なくとも今の状況を変える展望がないんであれば、それが一番いい。

外山 民進党の党首選で党解散を訴えるか(笑)。

藤村 それもいいかも(笑)。

外山 「解散して、みんなで自民党に戻りましょう。大差ないじゃないですか」って(笑)。

藤村 ほんとに大差ないもん。もはや労働組合なんて労働者の敵でしかない。大きな組合の幹部に対して、昔から揶揄的に“労働貴族”なんてことが云われてたけど、今や本当にそうで、労働組合に所属してるってだけでもう特権階級なんだからさ。労働組合が存在する企業に就職してる時点で特権階級だよ。「組合特権を許さない市民の会」か何かを……(笑)。

外山 “フリーター労組”ってのは、そういう側面もあったはずなんだけどね。

藤村 そうだよな。労働組合そのものを敵視する必要はないけど、例えば電力会社の労組のように、原発再稼働を容認・推進するような労働運動には徹底的に敵対する組合運動をやる意味はあるでしょう。

外山 うん、やりましょう。藤村君との間でずっと懸案になってる、“右から考える左翼運動”の一環として(笑)。


 『良いテロリストのための教科書』誕生秘話

外山 ……今度の参院選にも何らかの形で介入しようと思ってたんだけど、ちょっとタイミングが悪くてね。6月中に始まっちゃうでしょ。東京に長期滞在して、今後の運動展開のためにやろうと思ってることがいろいろあってさ。青林堂とも出版交渉しなきゃいけないし(笑)。今後の独自の運動展開につながるような模索の方が、本来どーでもいい選挙に介入して一時的な注目を集めるより百億倍重要なんで。

藤村 青林堂か……。しかしそもそもネトウヨって本を読むんだろうか。チバレイの本ぐらいならネトウヨにも読めるだろうけど、外山君の本は難しすぎない?

外山 いや、べつに本当にネトウヨに読んでもらう必要はないんだ。外山恒一が本来は“文筆の人”で、本を書いてるんだという認識が広がり、一定数の固定読者を獲得できればそれでいい。青林堂に目をつけたのも単に、そこらへんのツタヤにも配本できる程度の販売力があって、かつぼくの本を出してくれる可能性のある出版社ってことにすぎないんだし。

藤村 たしかに青林堂ならあちこちに置かれる。

外山 知名度だけはあるし、今でも“謎の人物”であることから抜けきれていないんで、逆に店頭で目に入れば「おっ?」となる可能性は高い。そのことに気づいてくれる出版社がないから本を出せないだけで。

藤村 青林堂の本だから主要な購買層はネトウヨだろうって発想が間違ってるのか。オレも、産経グループの扶桑社が日本会議を批判する本を出すなんて、とか驚いてる人たちと同じレベルになってはいかんな(笑)。……しかしネットで見てると結構いるんだよね、扶桑社からノイホイさんの本が出たことに驚いてる人って。

外山 『週刊SPA!』なんて、日本を代表する左翼雑誌じゃないですか(笑)。

藤村 鴻上尚史の連載もあるし……。

外山 それはオウム事件の頃からそうなんだ。実は『週刊プレイボーイ』こそ“日本を代表する左翼雑誌”だと当時は思ってたし、実際そうだったけど、『SPA!』もそれに次いで健闘してた。……『プレイボーイ』なんか完全に“オウム寄り”だったもんね(笑)。“オウム寄り”は云いすぎだけど、あの当時ほとんど大小すべてのメディアを席巻してたオウム批判の記事なんか1つも載ってなくて、ひたすら別件逮捕・微罪逮捕を連発する警察を批判してた(笑)。要はもともと“反警察”が編集方針の柱の1つだったんだな、『週刊プレイボーイ』は。交通取締りへの批判をはじめとする“反警察”的な記事が、たぶん今でも2、3号に1回は必ず載ってると思うよ。

藤村 うん、そうだよね(笑)。

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