外山恒一&藤村修の時事放談2016.06.02「“しばき隊リンチ事件”を語る」(その2)

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 「その1」から続く〉
 〈全体の構成は「もくじ」参照〉

 2016年6月2日におこなわれ、紙版『人民の敵』第21号に掲載された対談である。

 対談時点ですでに「しばき隊」は「クラック」と改称しており、対談中では正確に「クラック」の語が主に用いられているが、一般には「しばき隊」の名称のほうが浸透しているから、まず「もくじ」などでおおよその内容を把握したい人の存在を念頭に、小見出しなど本文以外の部分には「しばき隊」の語を用いた。

 第2部は原稿用紙換算17枚分、うち冒頭6枚分は無料でも読めます。ただし料金設定(原稿用紙1枚分10円)はその6枚分も含みます。

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 「世に倦む日日」氏のしばき隊批判

藤村 ヨニウムさんの本がマズいのは……だってすでにもう笠井(潔)さんと野間さんの往復書簡という、当事者による一次資料がネット上に存在してるわけじゃん。集英社新書で本にするために集英社のサイトでおこなわれてた公開往復書簡(15年12月〜16年5月。書籍化は7月の予定とのこと……後註.『3・11後の叛乱 反原連・しばき隊・SEALDs』)。これについて一言も言及がないんだよ。

外山 そうなんだ。

藤村 うん。今年に入ってからの出来事への言及もあるから、往復書簡が始まるより前に書かれたってわけでもないと思う。とくに野間さん側からの第1信(笠井氏の側からの第1信への返信。15年12月公開)である「雲の人たち」という文章は、少なくとも公開済だったはず。

外山 あれはいい文章だった。史料的価値も高い。

藤村 しばき隊の運動がどういうふうに始まったのか詳細に書かれてるし、さらに云えば、しばき隊やクラックを批判する立場からも、実に使いでのある文章なんだ。あそこに描かれてたしばき隊のあり方というか、当初しばき隊が目指したあり方と比べて、今のクラック界隈の振るまいは何だ、っていう突っ込みどころ満載なんだもん(笑)。
 いずれにせよ、当事者の代表である野間さんが公式にアナウンスした資料があるんだから、それに一言の言及も分析もないというのはおかしい。さすがに読んでもいないってことはないと思うけれども……。

外山 そこまで怠惰な人ではないでしょう。

藤村 今日はたぶん、例の問題(リンチ事件)を含めて、またクラックやシールズを話題にすることになるだろうと予想して事前に読んできたんだけど、正直つまんなかった。

外山 律儀だなあ、ぼくは何の準備もしてないのに。分かんないことは全部、藤村君に訊くつもりだからさ(笑)。

藤村 清さん(清義明氏。反原連からしばき隊にかけての時期の、野間氏を囲む有力な活動家の1人だったが、原発からヘイトスピーチ、さらには秘密保護法、安保法制などへとなしくずし的にイシューを拡大していくことに疑問を感じて離脱したという。外山の言動にも注目してくれており、3月に清氏が来福した際には、藤村氏を含めて3人で歓談した)も、さっそく感想をネットに上げてたけどね。

外山 ……こないだ「どくんご」(北九州公演)で会った時にも云ったかもしれないけど、近々東京に行って、今回は長めに滞在するつもりなんだ。もう2年近く東京に長期滞在してないし、この機会に会いたい人には会っておこうと思って、遅ればせながら野間さんにも「会いませんか?」って打診してみるつもり。
 で、それとは別に青林堂(云わずと知れた、かつてマンガ誌『ガロ』を発行していた老舗のサブカル出版社だが、千葉麗子氏の今回の本の版元となっていることからも想像されるように、11年にネトウヨ的なオピニオン誌『ジャパニズム』を創刊したことを始め、“嫌韓・嫌中”的な駄本を刊行しまくって、急速にきわめてマズいことになっており、反ヘイトスピーチの界隈では現在、非難の的。……後註.その青林堂からまだ『良いテロリストのための教科書』を刊行する前どころか出版交渉すら始めていない時点でのテープ起こしなので、書き方に“身内に甘いファシスト”としての“配慮”がない)とも接触してみようと思ってるんだよね。ぼくの本を出してもらえないか、って。話がまとまって青林堂からぼくの新刊が出たら、野間さんからはますます罵倒されそうだけど(笑)。

藤村 そうかなあ……いや、まあそうだろうな(笑)。

外山 右も左も“外山恒一抜き”で言論空間を形成してるんだから、文句云われる筋合いないけどね。ぼくの存在は完全に黙殺されたままなんだもん。ぼくとしては、そこらへんのツタヤにも置かれるぐらいの流通力を持ってる出版社ならどこでもいいんだ。青林堂が出してくれると云うなら喜んで何か書きますよ。“右傾化した若者たち”向けに、“敵を知れ”的に左翼とはどういう連中なのかを解説してあげる本(後註.これがつまり『良いテロリストのための教科書』として刊行実現するわけだ)も書きたいし、針谷さんやノイホイさん(菅野完氏)のそれとは違う視点からの“右派のための反原発本”も書いてみたい。


 “リンチ事件”それ自体は大した問題ではない!

藤村 ……ところで今日は、たぶん例の、「“ジュウサン”ベース事件」というのか何と読むのかよく分かってないんだけど、“しばき隊リンチ事件”と呼ばれてるものが、主な話題になるんでしょ?

外山 そんなつもりは特にないよ。話題の1つぐらいにはなると思ってたけど。……ちなみにあれは大阪の地名で、“ジュウソウ”だか“ジュウゾウ”だかって読むんだったと思う。たぶん“ジュウソウ”だね(大阪市淀川区の「十三」のこと)。
 事件が起きた場所が、きっとその十三ってとこにある飲み屋なんでしょう。クラック関西支部の人たちの拠点というか、たまり場みたいな店なんじゃないの? それで連合赤軍事件の“山岳ベース”にかこつけて、「“十三ベース”事件」って呼ばれてるんだろうと想像してる(おおよそそのとおりであるようだが、実際の“事件現場”は十三ではなく大阪市北区の歓楽街・北新地の飲み屋だったらしい。“現場”が十三だったという誤認が当初ネット上で広まって、「十三ベース事件」のネーミングが定着してしまった模様)。

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