外山恒一&藤村修の時事放談2016.06.02「“しばき隊リンチ事件”を語る」(その5)

 【外山恒一の「note」コンテンツ一覧】

 「その4」から続く〉
 〈全体の構成は「もくじ」参照〉

 2016年6月2日におこなわれ、紙版『人民の敵』第21号に掲載された対談である。

 対談時点ですでに「しばき隊」は「クラック」と改称しており、対談中では正確に「クラック」の語が主に用いられているが、一般には「しばき隊」の名称のほうが浸透しているから、まず「もくじ」などでおおよその内容を把握したい人の存在を念頭に、小見出しなど本文以外の部分には「しばき隊」の語を用いた。

 第5部は原稿用紙換算21枚分、うち冒頭5枚分は無料でも読めます。ただし料金設定(原稿用紙1枚分10円)はその5枚分も含みます。

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 野間易通と佐藤悟志は同類だ!?

藤村 とにかくそれらの特徴(藤村氏が持参し忘れたメモに、「サブカル原理主義者」の特徴として「①閉鎖的②独善的③排他的④心情主義的⑤対話の不可能性」と書きつけてあったらしい)は、かなりそのままクラックにも当てはまるんだよね(笑)。……結局“クラック論”に戻ってきちゃうな。

外山 どんだけ野間さんが好きなんだっていう(笑)。

藤村 批判しまくりながら、延々と野間さんについて語ってしまうのが悲しいところだ。……しかしこないだ東京に行って針谷さんたちの脱原発デモに参加した後、佐藤(悟志)さんに拉致られて、4時間以上ずっと議論に付き合わされるという恐ろしい目に遭ったんだけど、佐藤さんと議論しても勝てないんだよ。例えばオレは、佐藤さんが在特会と手を組むのは、佐藤さんの本来のスタンスから考えて、やっぱり間違ってるんじゃないか、と云うんだけど、「何を甘いことを云ってるんだ。政治は力だ!」とか云われちゃって(笑)、それに対しては上手い反論を思いつかない。
 どうして反論できないんだろうと考えるてるうちに、佐藤さんと野間さんって、実は同じなんじゃないかという気がしてきた(笑)。何にプライオリティを置くかが違ってるだけで、“反ヘイトスピーチ”を最優先するか、“反北朝鮮”を最優先するか、っていうだけなんじゃないか。
 “反ヘイトスピーチ”を最優先してる野間さんは、北朝鮮の問題についてはかなり悪質な連中ともナアナアになっちゃうし、佐藤さんはヘイトスピーチを繰り返すような連中とナアナアになる。で、オレは野間さんに対して文句は山のようにあるけど、ヘイトスピーチへのカウンターということそれ自体や、野間さんのあり方というものを根本の部分では肯定してるんだよね。しかし野間さんを肯定しちゃうと佐藤さんには勝てないんだということに、ふと気づいた。

外山 野間さんにせよベレー君(佐藤悟志のこと)にせよ、あまりにも短期的スパンで考えすぎだという気がするよ。まだ“我々の陣営”は形成されていないんだということを直視すべきで、性急に個別課題で、本来はとうてい一緒にはやれないような悪質な連中と手を組むっていうのはナシで、総勢数人レベルの孤立した組織として最大限やれることは何かって方向で模索を続けるしかないんじゃなかろうか。ネトウヨみたいな連中や、野間さんで云えば共産党みたいな悪質な党派や、あるいはネトウヨ・レベルの“バカサヨ”と組まずに、独自の勢力をどこまで拡大しうるか、少なくともぼくはそっちの方向でしか考えてない。まるで革マルみたいだけど(笑)、やっぱり水準は維持しなきゃいけないよ。


 笠井潔氏のしばき隊評価への疑問

藤村 笠井さんが野間さんとの往復書簡の中で“結社”について論じてるでしょ。面白いと思った。結社というのは革命が成立するまでの間、つまり革命が“彼方より電撃的に到来する”までの間、いわば“革命パワー”を蓄えておくために存在するんだ、と云うんだよね。これはしばき隊についての分析としてはまったく不適切で、的が外れてるんだが(笑)、思想としては面白いと思う。……「我々団」だって現時点では4人でしょ。

外山 うん、“公然メンバー”は4人。

藤村 あ、失礼しました(笑)。たしかに「あの人は“秘密メンバー”なんじゃないか?」って人も何人か思い当たるもんね。

外山 正直に云うと、1万人はいませんよ。“4人以上、1万人未満”というのが現時点の(後註.2019年8月現在では“3人以上、1万人未満”)「我々団」の党員数に関する公式アナウンスです(笑)。

藤村 とにかく今すぐ革命が到来するなんてことはないんだし……いや、そんなこともないのか。

外山 “電撃的に到来する”んであって、さすがに今日・明日ではないとしても、来週ぐらいになるともう分かりませんよ、というのが千坂理論、笠井理論、というかブランキ理論ですから。

藤村 革命がいつ“到来する”にせよ、それまでは“準備”というか……“準備”という云い方もおかしいのか。難しいな。

外山 “心の準備”だね(笑)。……しかし笠井潔って人は、原理論に関してはすごいし、ぼくは一生その影響からは抜けられないと思うけど、“隠遁”が長すぎたせいか、あるいは千坂さんのように“徹底的な隠遁”ではなくエンタメ小説のシーンを通して中途半端に世間と接触し続けてしまってたせいなのか、運動センスに関してはかなり鈍ってしまってる気がするよ。

藤村 だって野間さんたちは、今まさに“結果”を出したい運動をやってるわけでしょう。いつ“到来”するのか分からないような革命を待ち望みながら、長々とやる気なんか毛頭ないんだよ。笠井さんの云う“結社”とはまったく対極にあるのに、どういうわけか、野間さんが描く初期のしばき隊の秘密結社めいた振るまいが19世紀のブランキストたちに似てるとか云って、ちょっとズレてる印象は否めない。まあ……勘違いだよね(笑)。

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