“助成金まみれアート業界”を叩き潰すための作戦会議(2017.3.24)・その1

 【外山恒一の「note」コンテンツ一覧】

 「なごやトリエンナーレ」(「あいち」に非ず)の背後で暗躍する超ヤバい集団としてガゼン注目を集めている(はずの)九州ファシスト党“芸術部門”=『メインストリーム』編集部の2人つまりスタッフS嬢こと山本桜子および東野大地との短い座談会である(他に外山主催の「“現役学生限定”教養強化合宿」の6期生でもある、福岡の西南学院大アナキズム研究会の“副議長”で、現在はすでに卒業し東京で「早稲田アナキズム研究会」を主宰しているH氏も参加)。2017年3月24日におこなわれ、紙版『人民の敵』第30号に掲載された。
 読めば分かるとおり、冒頭部分は、この6日前におこなわれた森元斎『アナキズム入門』の読書会の“後日談”的なものとなっているが、話題はやがて、それこそ「なごやトリエンナーレ」の話とも関連してくる“街おこしアート”批判、助成金まみれの現代美術シーンへの批判へと移行していく。
 最後のほうで延々と続けられる、“アート業界の犬”をめぐる徹頭徹尾くだらない作戦会議の読み応えときたらもう……こんな面白い読物は他にないと断言できる。

 第1部は原稿用紙15枚分、うち冒頭5枚分は無料でも読める。ただし料金設定(原稿用紙1枚分10円)にはその5枚分も含む。
 なお、全体の構成は「もくじ」参照。

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 森元斎氏から突然の電話が!?

外山 さっき森元斎(紙版『人民の敵』第29号に掲載──後註.「note」でもこのコンテンツと同時公開──の、ほぼ酷評的な“検閲”座談会のテキストとなった『アナキズム入門』ちくま新書・17年3月の著者)から電話がかかってきましたよ。

東野 えっ!? どう云ってました?

外山 まずは「読んでいただいたようで、ありがとうございます」的に非常に礼儀正しく切り出されて、で、「ていねいに読んでいただいて嬉しさ半分と、しかし酷評されてるようでムカツキ半分、というのが正直なところです」って(笑)。森君には読書会の掲載号も一応ちゃんと送ったから、「そろそろ届く頃だと思うんで、現物を読んでその“ムカツキ”が3割ぐらいに減るか、7割ぐらいに増えるか、まあとにかく読んでみてください」と応じて……そういう“礼儀作法の応酬”に続いて森君が“ここは誤解しないでほしい”的にすぐさま話し始めたのが、「実は矢部史郎とはすでに訣別した」という内容。

東野 へーっ!

外山 矢部みたいなスターリニストと昵懇であると見なされるのは、“アナキスト”にとって本来は致命的なスキャンダルであるはずだからね(笑)。ようやく気づいたということなのか、コトサラに“矢部との訣別”を強調してたよ。詳しい話は聞いてないけど、とにかく“何か”あったみたいだった。昨年の11月ぐらいに福岡の森君の家でちょっとした集まりをやった時に矢部が乗り込んできて、そこでまた“ヘゲモニー簒奪”的なしょーもない謀略を打ったようで、森君、「矢部史郎の顔を見たらボコボコにしてやりたいぐらいですよ」って、かなりアタマにきてる様子でした(後註.のち『文學界』2018年12月号の森氏の連載「革命に至る極貧生活」第2回で、自ら詳しく書いている)。
 で、来月(4月)に森君が福岡でやる、栗原康(79年生まれの政治学者。『大杉栄伝 永遠のアナキズム』夜光社・13年や『村に火をつけ、白痴になれ 伊藤野枝伝』16年・岩波書店などの著作がある自称“アナキスト”でありながら依然として矢部派の一員でもあるようだ。『現代暴力論』角川新書・15年を、森氏の『アナキズム入門』に続けて“検閲”読書会のテキストとした──後註.この『現代暴力論』読書会もすでに公開済み)との対談イベントにも、ぼくと東野君と2人、“ご招待”の扱いにしてくれましたよ。「2人は入場無料にしてくれ」と会場スタッフに伝えておきます、って。

東野 マジっすか!?

外山 いい人だね(笑)。さすが「優しくなりたい」と(『アナキズム入門』末尾で)連呼していただけのことはある(笑)。……そのイベントのちょうど翌日から、ぼくらが千坂恭二を福岡に呼ぶことになってるんで、「会ってみたら?」とは伝えといた。「ぼくなんか怒られるんでしょ? 怒られに行くのはイヤだなあ」って云ってたけど(笑)、まあ「考えてみます」って。

東野 千坂さんはもう1日早く来れないんですか?

外山 いや、それはこっちが森君に気を遣ったんだ。4月後半に千坂さんを呼ぶことにした後で森君たちのイベントの件を知ったんで、1つには、そこで「かの伝説のアナキスト・千坂恭二、来る!」って宣伝をしたいなと思って、千坂さんを福岡に呼ぶのはイベントの直後ぐらいにしようというのと、もう1つには、だからといってイベント当日に福岡入りしてもらうことにすると、千坂さん、「粉砕したろうやんけ」とか云い出しかねないなと思って(笑)、わざと1日ズラした。

東野 “粉砕”に行くなら行くで、それもまた面白いんじゃないですか?

外山 まさに大杉栄の“演説会もらい”(大正時代の代表的なアナキスト・大杉がしょっちゅうやってたという、穏健派の社会主義者の集会に押しかけ、客席から盛んに野次を浴びせて登壇者を立ち往生させ、最終的には演壇に上がって集会を乗っ取る、という戦術)そのものだし、とくに栗原康は、そういうのも含めて大杉を“素晴らしい!”と云ってるわけで、そういう事態も甘受しなきゃいけないはずだと思うけど……たぶん耐えられないと思うんだよな。
 森君もだけど、彼らはアナキストを自称してるわりには、主体として脆弱というか、メンタルが弱い印象を受けるじゃん。実際、千坂さんは、もともと自分が登壇者として呼ばれてるイベントでも、他にも登壇者はいるのに1人でベラベラ喋り始めてその場を制圧してしまうでしょ。普段からそうなんだから、最初から敵意を持って乗り込んでいった場合はますますそうなると思うんだよね。それはちょっと森君たちが可哀想だな、と(笑)。
 それに来場者の大部分もそういう“集会荒らし”みたいな振る舞いには反感を持つタイプの人たちだと思うんで、大阪に帰っちゃう千坂さんはいいけど、福岡で活動を続けなきゃいけない我々としては、対立するにしてももっと手順を考えないと、そんなふうにいきなり“核兵器使用”みたいなことをやっちゃマズいと思うんだ(笑)。ぼくもかつては“演説会もらい”をさんざん実践したし(後註.「かつて」の例・その1その2、および比較的最近の比較的穏健な例)、その上で、やるんならもっと計算高くやらなきゃと思うようになった。


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