栗原康『現代暴力論』“検閲”読書会(2017.3.26、4.2)その6

 【外山恒一の「note」コンテンツ一覧】

 「その5」から続く〉
 〈全体の構成は「もくじ」参照〉

 2017年3月26日と4月2日の2回に分けておこなわれた、栗原康の『現代暴力論 「あばれる力」を取り戻す』(角川新書・2015年)を熟読する読書会のテープ起こしである。
 栗原康の『現代暴力論』の現物を入手して、途中ことわり書きが挟まるように、例えば「第一章・黙読タイム」などのところでまず当該の章を自分でも黙読してから読み進む、というのが一番タメになる読み方である。

 第6部は原稿用紙19枚分、うち冒頭6枚分は無料でも読める。ただし料金設定にはその6枚分も含む。

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 (ここから日を改めて後半部の読書会)
 (読書会のメンツは少し入れ替わっている)


 この人はなぜすぐフラレてしまうのか?

外山 先週参加してなかった藤村君も、コピーするより安く済むだろうってことで急遽さきほど本屋に1冊買いに走って、この読書会だけで、この2週間に少なくとも7、8冊は福岡で売れたことになります。“検閲モード”読書会のテープ起こしは、“あとがき”とかで名前が出てる担当編集者にも送りつけてるんですよ。内容は往々にして“酷評”なんだけど、売り上げには貢献してるわけで、編集者的には困った読書会でしょうね(笑)。

藤村修 ま、遠慮なく悪口を云っていきましょう(笑)。

外山 先週いた人が3人ぐらいいないけど(“前篇”=「その5」までに登場する「B女史」、「D嬢」、薙野信喜氏。ただしB女史の参加表明のメールを外山が見落としていたことが後日判明)……愛想を尽かしたのかな?(笑) ともかく先週の続きで、さっそく「第四章」を読みますか。

 (「第四章 恋愛という暴力」黙読タイム)

外山 えーと……いかがですか?

東野 先週やった「第三章」までで、さんざん“自己啓発本”呼ばわりしてきたけど、この章はまさにそれですね。

A女史 頑張ってね、としか云いようがない(笑)。

藤村 “自由恋愛”論がいかに人を不幸にするか、という話だ(笑)。もちろん著者自身の結論は、主観的にはまったく逆なんでしょうけど、しかしどう読んでも“自由恋愛”論によって、大杉栄の3人の妻や愛人は不幸になってるし、もちろん大杉に伊藤野枝を取られた辻潤も不幸になってる。

外山 大杉自身も刺されてるしね(笑)。それにしても章の冒頭からいきなり“自分語り”が始まって……。

藤村 2通りに解釈できる。1つは、この人が云い寄ってフラれたと書いてるこの相手の「女子」というのがクズである可能性。もう1つは、この著者のほうがクズだからフラれたっていう可能性ももちろんある。

東野 “きっとこういう理由でフラれたのだろう”って、この人自身の解釈を書いてるでしょ。この解釈ははたして妥当なんでしょうか?

外山 こんなことをグダグダ云うような奴だからフラれた、と見るべきです(笑)。

A女史 この人はなんかもう……ダメだ!(笑)

藤村 帯に自分の写真を載せてるぐらいだから、ルックスには自信があるんだろうし、実際たしかにイケメンだと思うけど……。

A女史 えーっ、そうですか!?

外山 そこは肯定しとこうよ(笑)。

藤村 カッコいい部類でしょう。少なくとも今の東浩紀よりはカッコいいよね(笑)。

A女史 何とお答えしていいものか分かりません。

藤村 20年前の東浩紀のほうがカッコいいけど、今の東浩紀よりは百倍ぐらいカッコいい。

外山 そりゃあ今の東浩紀に比べれば誰だって……って、冒頭から何を論じる読書会だ(笑)。

藤村 でも自信があるから帯にまで写真をでっかくあしらってるんでしょ?

東野 編集者の判断領域じゃないのかな?

外山 うん、そう思う。

藤村 ということは、編集者はやっぱりこの人をイケメンだと思ってるってことだよね。

外山 それはたぶんそうなんでしょう。

A女史 “イケメン”論議はやめよう(笑)。


 “修羅の国”から来た検閲官は“仁義”に厳しい

A女史 しかし、先週の時点では、この人の“アナキズム論”の内容はともかく、人としては“いい人”なのかもしれないと思ってたんだけど……撤回します(笑)。

外山 云わんとするところは分かる。たしかに悪質だよね。

A女史 悪質ですよ。

藤村 どういうつもりで書いてるんだろう? 好意的に見れば、自分の失恋話で自嘲的に“オレはこんなにダメな人間だ”的なことをことさらにアピールしてるだけのようにも読めるけど、単にそういうアピールを意図的にしてるだけなのか……それとも実際やっぱりこういうダメな人なのか。

A女史 だって自分をフッた女の人への腹いせをこういう公開の場でやってるわけで、その程度の仁義も切りきらんクズ男ってことです。

外山 さすが“修羅の国”(福岡県内の、福岡都市圏以外の無法地帯)から通ってきてるAさんは“仁義”に厳しい(笑)。……しかしこの人は、自分が貧乏でカネも将来性もないからフラれたかのように(167〜168ページ、「わたしは文章でも、大学の授業でも、友人間のつどいでも、『はたらかないで、たらふく食べたい』ということを公言している。……反労働というか、はたらかないと口にだしていってみることが、この息苦しい資本主義からぬけだすひとつの肝だとおもっているし、そうやって生きたほうがほんとうにたのしいだろうとおもっている。じっさい、いまわたしは年収一〇〇万円にもみたないのだが……いがいと、たのしくやっているのだ。でも、たぶん相手の女のコからすれば、それがゆるせなかったのではないかとおもう。……カネがないだけならまだしも、カネがないのにそれでいいんだといって、イケシャアシャアとたのしそうに生きていることがゆるせないのだ。このやろう、調子にのりやがって、気持ちわるいのだ。……よりによってわたしのようなクズというか、かせごうともしない人間から好きだといわれたわけである。おそらく、そういうふうにクズから口説けるとおもわれてしまったこと自体が、かの女にとって屈辱だったのだろう」などと)書いてるけど、貧乏でも将来性がなくてもモテてる人なんかいくらでもいるよね。たぶんこの人がフラれたのも、別の理由からだと思う(笑)。

A女史 分かりきってますよ。

外山 自分がフラれた理由をこんなふうに“社会のせい”にするような奴だからこそ、フラれたんだろうという疑いが濃厚だ(笑)。

A女史 ほんと、鬱陶しい。

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