見出し画像

【栄養指導の根本】胃の働きを強くする方法


今回のnoteで学べること
・ヒトの消化の流れ
・日本人は胃が弱い?
・胃が弱いことによる弊害
・胃を強くする栄養や食材


今回は胃を強くする方法を解説していきます。
どんなに良い栄養素を摂取しても、それが消化吸収されなければ意味がありません。
特に日本人は胃が弱い傾向にあるため、胃を強くすることは栄養指導において必須の知識になります。
栄養指導をしている方で正しい指導をしているはずなのに結果が出ていない人は必見の内容になります。

①ヒトの消化の流れ

「ヒトのカラダは食べたものでできている」と言われます。
しかし、正確に言えば「ヒトのカラダは消化吸収されたものでできている」という方が正しいでしょう。
それはどんなに良い食事をしても、それが吸収されなければ意味がないからです。

胃の働きを再確認するために、ヒトの消化の流れを復習していきましょう。

STEP①:口の働き

まず消化の最初の段階は「口」になります。
つまり、食べ物を細かく噛み砕き唾液と混ぜ(=咀嚼)、その後に飲み込む(=嚥下)ことが最初のステップです。

特にヒトは他の動物に比べて胃の滞在時間が少ないため、よく噛んで細かくする必要があります。

また、唾液には殺菌成分やペルオキシダーゼ(抗酸化酵素)、アミラーゼ(デンブン分解酵素)NGF(神経成長因子)、創傷治療成分も含まれていることからも非常に重要な働きをします。

STEP②:食道と胃の働き

食道は蠕動運動によって食べ物を胃に送り込みます。
たまに重力によって胃に運ばれると言っている人も見受けられますが、主は蠕動運動によるものです。
また、食道から胃に達する時間は約5秒で、水になると約1秒になります。

さらに進むと胃にたどり着きます。
胃の詳しい働きについては後述しますが、胃は主に胃酸による殺菌とタンパク質を分解する働きがあります。そのため食べ物をドロドロに粥状にし、一時貯蔵する働きがあります。

STEP③:小腸と大腸の働き

小腸では主に消化と吸収を行います。
もう少し詳しく説明すると、直前にある十二指腸で消化を行い、小腸の前半部の空腸と後半の回腸で栄養を吸収します。

大腸では腸内細菌が食べかすの消化を行います。
また、便や有害物質を排泄します。

胃の働きをもう少し詳しく

今回は胃がテーマになっていますので胃の働きについてもう少し詳しく解説しようと思います。

胃の主な働きは分解、殺菌、貯蔵の3つになります。
特に重要なのが胃液の分泌です。
胃液は3つに分類され胃酸、消化酵素、粘液になります。

胃酸は殺菌作用やミネラルのイオン化があります。
ミネラルのイオン化とは、ミネラルを吸収しやすい形にすることなので、胃酸か分泌が減るとミネラルの吸収率が低下します。

消化酵素はペプシンのことで、タンパク質消化酵素のことです。
そのため、胃酸が減るとタンパク質の消化が弱くなります。

粘液は胃壁を保護をする胃液になります。


②日本人は胃が弱い

欧米人比べて胃酸が少ない

研究では日本人は欧米人に比べて胃酸の分泌が少ない傾向あることが報告されています。(※1)特に加齢とともに低胃酸の割合が増えています。

年齢別、低胃酸の割合

胃酸が少なくなれば、当然、胃の働きが良くなります。
日本人か胃が弱いと言われているのはこの低胃酸が主な原因となります。

逆に「胃酸過多」もありますが、これは名前から誤解されやすいのですが、胃酸と胃粘膜の分泌バランスが崩れた状態のことで、一概に胃酸が大量に出ているとは限りません。

胃が弱いとどうなるの?

胃酸が弱いことの弊害は下記の通りになります。

  • 消化不良を起こしやすい

  • 栄養の吸収が低下する

  • SIBO(小腸内細菌異常増殖症)やガス腹、逆流性食道炎になりやすい

  • 胃酸過多になりやすい(胃の粘膜が弱いと胃酸の割合が高くなるため)

  • ピロリ菌に感染しやすくなる

栄養吸収低下で関係性の深い栄養素はタンパク質、亜鉛、鉄、マグネシウム、カルシウム、ビタミンB12、葉酸などがあります。
特にビタミンB12は加齢ともに吸収率が低下することが有名で、これも低胃酸による影響が大きいです。

低胃酸の症状と合併症

低胃酸の症状や合併症でよくあるものは下記の通りになります。

  • 食後のむかつき、もたれ、胸やけ、膨満感

  • 胃食道逆流症(GERD)

  • 栄養不足

  • 慢性疲労や精神障害

  • リーキーガット症候群(腸漏れ)

  • SIBO(小腸内細菌異常増殖症)

  • アレルギー体質

  • 便秘や下痢

  • 腸内の腐敗、便臭、口臭


③低胃酸の原因と解決法

低胃酸の原因

低胃酸の原因として考えられるものは下記の通りです。

  • タンパク質不足

  • 交感神経が優位

  • ピロリ菌感染

  • 制酸剤などの胃薬の常用

  • 飲酒の習慣

  • 甲状腺機能低下症

  • ストレス過多

  • 亜鉛不足

  • ナイアシン不足

  • ビタミンB1不足

特に多いのがタンパク質不足です。
ペプシン(タンパク質分解酵素)の材料は酵素のなのでタンパク質になります。そのため、タンパク質が不足するとペプシンが不足し、タンパク質がうまく消化できなくなるという負のサイクルに陥ります。

そのため、胃液が少ない方や長年低タンパク質の食事を続けてきた方はEAAなどから徐々にアミノ酸補うと良いです。

胃酸の分泌を促進する食材

  • 梅干し

  • リンゴ酢(5〜10倍に希釈する)

  • 酢の物

  • レモン水

  • パセリ

  • ペパーミントの葉

  • ショウガ

  • キャベツ

  • たんぽぽ根

また胃酸の材料は塩分でもあるので、夏は塩分が不足すると胃酸が減少して食欲不振に陥ります。

胃が弱い人に勧める栄養素や食材

  • ホエイプロテイン20〜30g

  • EAA(ホエイプロテインがうまく消化できない場合)

  • お酢や酢の物

  • 亜鉛15mg程度

  • ビタミンB1

  • グルタミン

  • ショウガ

  • 味噌

  • ベタインHCLサプリ(食後)

  • ナイアシンサプリ

  • 動物性タンパク質


④低胃酸の検査指標

ペプシノーゲン検査

ペプシノーゲンⅠは胃の消化酵素であるペプシンやペプシノーゲンの分泌の度合い、または胃酸の分泌具合を反映します。
また、胃粘膜から分泌される物質で、胃粘膜が萎縮した状態になると低下するため、胃酸の指標になります。

ペプシノーゲンⅠは60〜70が正常で、40以下は低胃酸の可能性があります。
また、ペプシノーゲンⅠ/ペプシノーゲンⅡの比率が5倍以上であることも重要で、5未満の場合は萎縮性胃炎の可能性があります。

MCV(平均赤血球容積)

血液検査項目にあるMCVですが、MCV値が94以下の場合はビタミンB12と葉酸が不足している可能性があります。

そして、上述した通り胃液はビタミンB12と葉酸の吸収を助けるため、これらが不足しているということは低胃酸の可能性があります。
特にビタミンB12は胃の環境に依存した吸収形態をもつため、胃の状態は非常に重要です。

ベーキングパウダー(重曹)確認法

これは自宅でも簡単にできる確認方法になります。

  1. 起床後、飲まず食わずの状態で、コップ1杯の水に重曹(約2g)を溶かす

  2. ゆっくりと飲む(最低100cc)

  3. 5分以上経過してもゲップが出ない場合は低胃酸の可能性があるの

重曹の炭酸水素ナトリウムが塩酸(胃酸)と反応して炭酸ガス(ゲップ) を作り出せば、正常に胃酸が分泌されているとみなすことができます。


本日のまとめ

  • 人のカラダは消化吸収されたものでできている

  • 日本人は欧米人に比べて胃が弱く、胃酸が少ない

  • 低胃酸の主な原因はタンパク質不足である

  • 胃酸の分泌を促進するものは、酸や苦味

  • 低胃酸のチェック方法はペプシノーゲン、MCV(平均赤血球容積)、ベーキングパウダー確認法がある


参考文献

(※1)Morihara M, Aoyagi N, Kaniwa N, Kojima S, Ogata H. Assessment of gastric acidity of Japanese subjects over the last 15 years. Biol Pharm Bull. 2001 Mar;24(3):313-5. doi: 10.1248/bpb.24.313. PMID: 11256493.

ここから先は

0字

Molecular Nutrion(分子栄養学)

¥1,500 / 月 初月無料

実践で使える”周りの人と差がつく知識”を提供することを約束します。 月に4記事以上読む人はマガジン購読の方がお得です。 配信内容🔻 ・基…

僕に学ばせてください。